第156話『機械姉妹VS背中合わせの少女』
あ、どこかで見たことがあると思ったらハナビさんの姉妹!
思い出したぞ!
かつて逃走劇中に助けてもらった彼女たちだ。
一瞬だけ仮面を外して姉妹達は笑いかける。
「みんな、挨拶して。」
「覚えてますか?アタクシは七女のヒバナ。
今の苗字は吉田です。
最近誰かさんに夫をボコられたから、仕返しにきました!」
「五女、スミです。大変お久しぶりです。」
「よ、四女のレンガなのよ……ふひひ……。」
「久しぶり!オレは三女のアカリだよ!」
「ヒトメちゃん、そしてニチさんは特にお久しぶりです。
あたしは蒲公英七姉妹次女、テルです。」
落ち着いた様子で次女のテルさんは一歩前に出て仮面をかぶる。
その様子を見て恋敵は呆れたように、笑う。
「本当によく洗脳されますね、あなた達。
私が初めてあなた達に出会った時も、洗脳されていましたね。」
昔も洗脳?何の話?
私が訳のわからないままテルさんがおそらく微笑んでいる。
「懐かしいですね。」
「あの時はいつも大変でした。
テルちゃん、今度は私達を討伐しに来たんですね。」
「ええ。」
「ボクが最初に会ったんだよ!」
「ケムリお姉様はいいから黙ってください!
いつもいいところで口をはさむ!」
なんだか、情けない姉に対してきちんとした妹が支えている感じなんだな。
仮面越しで表情イマイチわかんないけど……。
「覚えてますよ、モンブ...いえ、ケムリちゃん。
あなたが私とサイム君とのある意味、最初の敵でした。
あの場所にあなたがいなかったら、創造主であるアルさんは目覚めませんでした。
私もきっとサイム君に告白していなかったでしょう。」
なんだ?ハナビさんのお姉さんとこいつの関係は?
さっきも洗脳されたとか言っていたけど、元は敵?
「そう、そして今もちゃんと敵になってあげるよ。
あの時何もできなかった、ニチさんがどこまでやれるのかを確かめにね。」
んん~~今、聞き捨てならない言葉を言ったなぁ~!
あの時何もできなかったってなになに~?
恋敵の弱みになりそうなことを言ってくれるじゃない!
ちょっといじってやりたいなぁ。
「ええ、あの時サイム君に隠れて何もできなかった私とは違います。」
駄目だ、サイムの自慢話が始まりそうだ。
私の彼氏なのに。
「ボクらだって負けない!
図体だけが大きくなったんじゃないよ!
成長したんだ!今回は勝つ!6人がかりであなた達を倒す!」
「仕方がないですね!」
「叩きのめすよ!」
お互いが戦闘へ覚悟を決める。
「ボクの本名は2561号!
またの名を大和 煙!
福音の名のもとにボクと姉妹で君たちを、切り刻む!」
長女のケムリさんがそう意気込むと同時に次女のテルさんから順に。
「解体いたします。」
「引っ張って押しつぶす!」
「ふひひ、ビリビリと焦がしてやるのよ。」
「貫く。」
「焼き尽くす!」
私と恋敵はその気合いに対してこう答えよう。
「「来い!!」」
◆◆◆
蒲公英姉妹の6人は円を囲むように私達を取り囲む。
「敵の情報は?」
私はほとんど知らなくて、もっとも因縁深いのは背中合わせにしている後ろの恋敵だ。
「簡潔に言います。
長女は水中戦が得意な斧使い、腕が伸びます。
次女は六つの腕で攻撃して、空を飛べます。
三女が磁力使い、体がバラバラになります。
四女は尻尾からレーザー光線を撃ってきます、身軽で頭がいいです。
五女がケンタウロスのような体で硬くて素早く、突進してきます。
最後にハナビちゃんの妹、七女が太陽をエネルギーとして使い、空を飛び最も攻撃力が高く超高温の熱を操っていきます。」
なるほどなるほど……?
んんんん~~?
さっきの本名といい、この人ら?って……。
「あの、この人達は本当に純粋な人間?
あからさまに兵器じみた力持ってない?」
「ただの人間なわけないでしょ?
人権はありますが人種的に言えば『機械人』。
ロボットです。」
あーなるほどなるほど~それで納得……。
「えええ!?ロボットなの!!?ハナビさんも!?」
「なんで、今まで知らなかったんですか!?」
「知らないじゃん!!え!?それでどうやって子供産んだの!?
ヨゾラちゃんは!?」
「知りませんよ!!こっちが聞きたいです!!」
だからこいつ、ハナビさんとヨゾラちゃんを見た時、異様に驚いたっていうか子供ができたことを、執拗に聴いて来たのか!
と、驚いていると横から巨大な馬脚が私達へ突進してくる!
さっき言っていた五女スミさんか!
なかなかの突進力がある!
「ぶっ飛ばしてやる!」
これくれいなら受け止めてやる!
「後ろから光線が来ます!」
よし!受け止める暇はない!
このケンタウロス型の身体を受け止めていると、四女さんの光線にやられるのか!
避けようと2人で頷き、ジャンプをする!
「空へようこそ、お待ちしていました。」
だがジャンプした先に左にハンマー、右にドリルが私達へ迫っている!
次女のテルさんが足からロケットを吹き出し、すでに空中に飛んでいたのだ。
ドリルを体をくねらせて避け、ハンマーを受け流す!
――ただでさえ6人もいてみることが多いのに、全員がバラエティにとんでいる能力をもっている。
――この人ら、厄介すぎる!
――いや正確にはロボットだけども!
ついでに言うと下の方からも七女のヒバナさんが何かエネルギーを吸収している感じの、キィィィンっていう音が響き渡っている。
この空中という不利なフィールド。
もし気を抜けば黒焦げだろう。
しかし、金魚モードはすでに解禁されている。
一番重要なのは、倒す順番。
ちょっと間違えたら、けがを負うだろう。
誰から倒すのかが肝心だ。
「誰から倒すべきなの?」
仕方なしに隣のクソ泥棒猫女に尋ねる。
「まずは目の前の次女から!30秒で全員を倒すよ!」
「楽勝!」
金魚モードを発動する。
「ならば!六転打滅!」
六本の腕のうち背中に生えた金属の腕が、人間ではありえないように肘から先が回転していく!
すごい勢いでハンマーやドリルが肘ごと回転して狙いが付きづらい!
人間の急所、顎や胴体や頭が狙いづらい!
っていうかロボにそんなのが効くのか!?
ならやるべき攻撃、そして箇所は……。
「高達流闘術!」
恋敵と足裏を合わせる!
こいつを踏み台にしてそしてパンチの風圧で6本の腕の合間をぬって、一気に奇襲を仕掛ける!
「拾伍匹目!パンダチョウビ!!」
腕をかいくぐり一気に接敵して、パンチの風圧でドリルとハンマーを破壊して突き進む。
あとは一気に殴れば……。
「かかりましたわね!」
「!?」
な!?
人間形状の腕が持っている、それはまさか!スタンガン!?
まずい!パンチをもうはなってしまった!
「うぐぁ!?」
「きゃあ!!」
パンチが相手に当たるのと同時に全身に雷が走る!
電撃のしびれが、皮膚を伝いむっちゃクチャ痛い!
私で無かったら、皮膚が焼けこげる!
気絶しそうだ!
だが私のパンチも同時に当たった!
次女テルさん撃破!!
墜落していく!
って!?さっきよりもデカイ太陽が私達に迫ってんですけど!?
七女ヒバナさんも飛べるんだった!
後ろの泥棒猫は何してんの!?
あ!そうか!私がパンダチョウビで移動した分、呪いの影響でこいつの移動は制限されたから一手遅れたのか!
じゃあやることは一つ!
――二、三手先を行けばいい!
デメキンの体制を取る!
「デメキンカタパルト!!」
私が殴ると同時に恋敵が手を握って呪いの影響を軽減させて、太陽へと迫っていく!
そして恋敵はくるりと翻して、七女のヒバナさんへ接敵する。
「太陽巨炎!」
巨大な太陽が流星群のようにはじけ飛んでいく!!
「陸匹目!ランチュウ!」
殴り蹴り、太陽の炎を火の粉を払うように消していく!
「アっつ!?」
そりゃそうだ!あくまで素手だからな!
それを空圧で無理やり弾いてるんだから熱くて当然!
だが!太陽を弾いて射程圏内に入ったのか恋敵はかかと落としの体制に入る。
「オラァ!」
「ぎゅむ!?」
七女ヒバナさん撃破!!
ならここからやるべきことは、下にいるいかにもやばそうなあの人!
着地をして気が付く!
着地と同時に五女スミさんの槍が来る!
「戦槍馬突!!」
さっきよりも威力がケタ違いだ!
ケンタウロスの馬の部分でほぼジャンプするように、勢いよく蹴って突撃をかましているんだ!
「肆匹目!ニシキッ!!」
まっすぐこちらへ突っ込んでくるならそれ以上の力で打ち負かす!
槍をへし折るが、私は見逃していた。
前足の馬脚が私の顔に迫る!
「ぶげ!?」
槍の迫力で、足元が見えなかった!
あまりにもバラエティに富んだ人たちだから、いろんなことに思考が錯乱されていた。
馬脚に顔を少し蹴られる。
直撃は回避をギリギリしたけど少し当たった!
その衝撃でよろめいて恋敵の背中に当たる。
「いつつ……。」
「大丈夫ですか?」
「心配しないで!かすめただけ!」
すると、ふらついた中で極めて大きな光が崖から放たれる。
崖に潜伏している!
「極電光線!!」
四女レンガさんの光線がこっちへ来る!
地面をえぐりながらマシンガンみたいに乱射している!
小石が飛び散りながら地面をズタズタにしていく!
だが、場所はわかった。
金魚モード残り数秒!
こいつを倒すための弾丸はこいつが都合よく、巻き上げてくれているこの小石!
「コメット!!」
「にゃ!?」
暗がりでわかりづらいけどヒット!
だが暗がりでわかりづらかったけど、小石が飛んでいるのと同時にやばいものが空を浮いている。
「なにあれ!?」
「岩ですよ……。」
巨大な砂鉄まみれの岩が空を浮いているのだ!
それもいくつも!これはまさか磁力使い三女アカリさんか!?
「必殺!磁岩雪崩だぜ!」
まさしく巨大な岩が雪崩のように迫ってくる!
それに紛れて大量の鉄も混じってる!
「ではこれならどうですか!?
高達流闘術!」
恋敵がジャンプするこの姿勢はわかる!
だがそれは下に向けて放つ技だ!
……ああ、そうか!
私が姿勢を変えるのか!
「伍匹目!ハナフサ!」「改!」
本来下に向けて放つハナフサの蹴りを、恋敵がジャンプした瞬間!
肩を引っ掴んで岩の方角へ向けて打ち砕くッ!!
「な!?」
そのまま連続蹴りを放っている恋敵を押し込むように平行移動して、三女であるアカリさんへと接敵する!
恋敵を背中合わせのポーズに戻し、勢いに任せて貫手の体制を取る!
「弐匹目!リュウキン改!!」
本来貫くためのリュウキンだけどもやりすぎないために思いっきり振り払う感じで、三女アカリさんにぶつける!
「うぐっ!?」
これで次女、七女、五女、四女、三女は倒した!
六女であるハナビさんがいないから残るは長女ケムリさん!
あと5秒で金魚モードは終わるだろう!
と、気づいたその時。
周りに大量の水が染み出ている!
なんだこれは!?
――よく見てみるとケムリさんの周りに大量の水が津波みたいにあふれている!!
「まずい!『水』の歯車です!」
そう言えば泳ぎが得意と言っていたが……。
まさか歯車の力を使って水を生成しながら、こっちへ泳ぎ突撃している!?
なるほど!ケムリさんのあの足は、スクリューみたいになっているんだ!
まるで水上ジェットだ!
水を身にまといながら、突撃してくるなんて普通じゃあ考えつかない!
ケムリさんが斧を構えている!
しかも泳ぎながら、自分を回転させて腕を伸ばしながら地面を抉り取っている!
何だあの技は!?
「ガボボボガボボボ!!」
「「いいとこなのに!水で技名が聞こえてないッ!!」」
だがよく考えたら一番対処がしやすい!
なぜなら回転しているとはいっても、泳いで突撃してきているんだからそれはコマみたいな横回転じゃなくて、スクリューとかと同じ縦回転なのだ。
つまり軸である頭は動いていないから、そこに向かって攻撃を放てば。
「え、っと……デメキン。」
「ブひぇ!?」
簡単に倒せるのだ。
私に吹っ飛ばされたケムリさんはのけぞりあられもない体制で、地面に横たわる。
一番大したことなかった。
姉妹達はため息を呟く。
「そ、そんにゃ……ボ、ボクだって大人になったのに……。」
長女ケムリさんはガクリと項垂れる。
「お、お姉様はだからいつまでたってもポンコツなん、ですよ。」
次女テルさんは呆れたのちに、気絶する。
「姉ちゃん、かっこ悪い、ぜ。」
三女アカリさんは、乾いた笑みを浮かべ、戦闘不能になる。
「ふひ、ひひ、もう散々なのよ。」
四女レンガさんは、すん……と眠る。
「……もう、いたいのやだぁ……。」
五女スミさんは、涙声で動けなくなる。
「スミ姉様、いい大人が泣かないでください……。」
七女ヒバナさんは、姉妹を思ってため息を吐き疲れ果ててしまう。
やれやれなかなかに厄介な連中だった。
ちょうど金魚モードが解除される。
「そして私は敵の存在を鮮やかに。」
「さて、カードを拾いましょ。」
「…………いい加減、決め台詞言わせてくれない?」
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この物語の『更新』は現状『毎週金、土、日』に各曜日1部ずつとなります。
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本日のヒトメさんによる被害/買い物
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ケムリ:気絶
テル:気絶
アカリ:気絶
レンガ:気絶
スミ:気絶
ヒバナ:気絶