第147話『四面楚歌の少女』
こっちは痛くて疲れているときに新しい大罪!?
ブラウン管に映し出されたのは仮面をつけた謎の存在。
ローブで体を覆っていて姿がわからない。
「どうだったかね?我々のサプライズは?」
「何者だ!!」
「私は第ⅩⅣ大罪、別名『福音』と呼ばれている。」
ローブの人物はひょうひょうと答える。
「大罪は13人だったはず!」
「だが確認しようがないだろう?」
それはそうだけども……。
隣にいたクソ女も目を見開き、相手を注視している。
「質問です。あなたは先ほど私達の大切な人達を連れ去ったと言いましたよね!証拠はあるんですか!?」
「この通りだ。」
ブラウン管の画面が切り替わる。
そこに映し出されたのは、倒れ伏した見覚えのある人達。
「ソライ!ユウジ!」
「ハナビちゃん!ユミさん!ア、アルさんまで!?」
画面に映し出されたみんなが倒れている。
動画らしく呼吸をしていることがわかる。
創造主さんに至ってはぐったりと壁にもたれかかるように座っている。
「この者たちはワタシの洗脳支配下にある。
君らを倒すためのいい手ごまとしていつでも強襲できるのだ。
実際、君らの攻撃に関してあらかじめ洗脳しておいた、そこの創造主クンを出動させたのだ。」
ええ~!?
ああ、そういうことか!
私達がぶつかり合った、あの時創造主さんはすでに操られていたのか!
そうじゃなきゃあそこで唐突に私達の最大の一撃に割り込んだりしないだろう。
「意気揚々と自分の手の内を公開してくれるじゃない。
一体私達の大切な人達をさらって何がしたいの?」
ブラウン管の人物の何かを押し殺したような癪に障る笑い声が聞こえる。
「それは大罪だからね、赤金魚の抹殺を目的としている。
そしてそれと同じ力を持つ草島日もな。」
「な、なぜ私達と大罪が敵対してるんですか!?」
恋敵が困惑しているようだから私が教えてやるかな。
「それは私が大罪達を12人ぶちのめしたからだと思う。」
「お前ぇ……。」
恋敵がシラケた顔で私を見る。
なんだその生ごみを見るような目は?
殴って骨を折るぞ?
ブラウン管の画面が切り替わる。
次から次へと私の知り合いが出る。
さっきいたクノレお嬢様、ムケイ執事だけじゃない。
マロンちゃん、ヤヤさん、ナナナちゃん。
私の知り合いばかりだ。
「まさかショーワ街にいるみんなもあなたの手先になっているの!?」
「ああ、その通りだ。
お前らだって知り合いに本気は出せないよな?」
この敵、姑息だなぁ……。
私達の知り合いを手ごまにして戦うタイプの敵だ。
戦いづらいタイプの敵だ。
「そしてお前らにとって、最も会いたいであろう人質も用意している。」
私達が画面に注視していると、そこには最も求めていた人物が倒れ伏していた。
黒い髪に赤い服の男。
顔はうつ伏せのせいか見えないけど私達はこいつを知ってる。
「サイム!」「サイム君!」
ブラウン管テレビに映し出されたのは、私がずっと求めていた彼氏が何とか立ち上がろうと腕に力を籠めるが、すぐに果ててしまう。
「うぐっ……みん、な……。」
画面の中で彼氏がつぶやくが力がなさそうだ。
「彼はなぜか洗脳にかからなくてね、こうして丁重に保護しているよ。」
そこへ大罪が後頭部を殴りつけて気絶させる。
「お前!!ぶっ殺すぞ!!」
「何発殴られたいのか言ってください!!」
私達が怒りのあまり金魚モードになろうとするが、なぜか金魚モードは一瞬で解除してしまう。
なぜだ?疲れているとはいえまだいけるはずなのに?
「お前らにはあのお嬢様の力を使い、呪いをかけさせてもらった。」
「「呪い?」」
「呪いは3つ。
金魚モードの時間制限、そしてお前ら同士の無駄な喧嘩、一定以上お前らが距離を離れることができないだ。」
え、大罪相手に金魚モードを封じられた?
ちょ、ちょっと待って?それまずくない?
身内が敵になるって展開だけでもかなりまずい。
そんな中、金魚モード無しで戦うの?
ここにいるみんなを連れ去ったってことは、ソライとかユウジとかとも戦うの?
アイツら、私がいないうちにだいぶ強くなっていたみたいだけど金魚モード無しで戦うの?
この大罪を叩き潰し生命として終わらすの、結構難易度高くない?
色々と淡々と話が進み過ぎているし、疲れて脳が処理しきれていない。
「無駄な喧嘩については。
貴様らを倒すために共倒れされては困るのでな。
創造主とそこのお嬢様の力を使い『苦しみが味わう呪い』をかけさせてもらった。
また時間制限に関しては、純粋な弱体化だ。
一定距離を取ることに関しては単なる嫌がらせだ。」
冷静に処理しよう。
相手は私達の仲間を自由に使役できる。
金魚モードの制限。
私達が争わないための呪い。
このクソ女と一定距離を保たわ無ければならない呪い。
敵は画面に出ている大罪と隣にいるこのクソ女。
そしてわざわざテレビで連絡を取ってきたあたりここにいない可能性が高い。
私達の戦闘に創造主さん達を使い割って入ってくる、サイムを見せつけてくることから相当な自信家。
――これは本気で殺しに来ているね。
「彼を返してほしければ、仲間を傷つけワタシの元へたどり着いてみせよ。
ワタシは今、隣にあるドソウ魔国にある場所にいる。
自らの足でここまで来い。」
はいはい、お決まりのセリフね。
ならこうして返してあげよう。
「言われずとも覚悟しておきなさいよ!!大罪めッ!!
その仮面の下の顔面をぐちゃぐちゃにしたうえで、警察に突き出してやる!」
「私が叩きのめします。
あなたの骨がどれだけ折ったら生命活動を停止するのかが楽しみです。」
「フハハ!なお、」
ブラウン管に映った何かを言いかけた大罪を思わず、2人でぶん殴りつけてテレビが吹っ飛ぶ。
何かを言いかけたようだけど知ったことではないわ!
こいつを探し出して洗脳された仲間を開放して、この女と決着をつけると同時にサイムに甘える!
◆◆◆
「「はぁ……。」」
ため息をつきながら恋敵の顔を見ること数分間。
仕方がないとはいえ、この女と共に過ごさなきゃならないのか。
腹立つなぁ~。
「そろそろ、何か言ったらどうですか?」
「サイムは私の彼氏。お前は後から来た出遅れ女。」
「うるさいです。あんたは人の彼氏を傷つけた挙句、ブーブー文句を垂れるだけのガキです。」
こいつとはぜぇぇったいに、仲良くできない。
やっぱりここで殺すべき相手だわ。
私達が敵意を向けようとすると、とんでもない『苦痛』が精神をむしばみ思わず吐しゃ物が喉にこみあげてくる。
「「おぇえ……。」」
流石に疲れからか、お互いいろんなものが我慢できずに吐き出す。
吐いてしばらくたった後、急にトイレに行きたくなり1人で立ち上がり数歩歩くとなぜか進んでいない。
歩けど歩けど、座り込んでいるアイツから進まないのだ。
これが移動制限の呪いか。
「トイレ行きたいんだけど移動してくんない?」
「それが人に物を頼む態度ですか?」
触りたくすらない相手を無理やり掴んで、傍にあった倒れていた簡易トイレを起こし用を足す。
「まったくもってなんでこんな面倒なことを。
しかもよりによってション便臭いガキの、音を聞かなきゃならないんですかねぇ?」
「はぁ?あんただってサイムがいないところでは豪快な音で、おならをかましてるんじゃないの?」
「はぁあ~?それは偏見じゃないんですかァ?」
「いずれわかることですけどォ?」
用を足し終わり金魚モードになり都合よく背中を向いたクソアマに闇討ちしようとすると、やはり吐き気がこみあげる。
「「おぇえ……。」」
相手も同時に吐き出す。
同じ考えだったらしい。
ただ思ったことがある。
第ⅩⅣ大罪『福音』。
あのブラウン管に映ったあの人物さえぶちのめせばサイムに会える。
そしたらサイムはこいつを捨てて私を取るはずだ。
そのままの勢いで私は見事ゴールイン!
サイムに確認を取れるだけじゃない。
この女へ報復ができる。
サイムに会うことそれがすべて。
私の目標は変わらない。
意味にスカッとする要素が加わっただけ。
「癪に障るけどお前と一緒にサイムの元へ行かなきゃね。」
「あんたのような子供と行くのは嫌ですが、仕方がありません。
それが大人ってやつですので。」
「「ケっ……。」」
荷物はサイムのと思わしきそこらへんに転がったキャンプ用具のみ。
同行者は恋敵のみ。
「あんたなんかと行くのは不服ですが、せいぜい足を引っ張らないでくださいね。」
「その言葉そっくりそのままお返しする。」
「行きますよ。」
何が何だかわからないまま。
私達は彼氏を探す旅に出ることになった。
イチちゃんや仲間達は恐らく洗脳されて敵になっている。
謎の敵ⅩⅣ大罪『福音』。
隣にいるこの女と共に確実に粉砕してみせる。
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この物語の『更新』は現状『毎週金、土、日』に各曜日1部ずつとなります。
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本日のヒトメさんによる被害/買い物
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ブラウン管テレビ:粉砕!