第144話『最上少女VS最高少女』
「Idですか……。
その様、名付けるなら『赤金魚モード』と言ったところですね。」
全身が焼けるように熱い!
血が沸騰していくように煮えたぎっている。
血管が浮き出ている。
肌や髪が赤くまるで金魚のようになっている。
初めて使う。
発動条件はなんとなくわかっていた。
命を燃やしてすべてを費やす覚悟。
「お前を殺す。」
肉体がチリチリと焦げていくような感覚。
筋肉が増量してきているというよりも、『蓄積されていく感覚』がする。
ただ、長時間使うのは無理だ!
心臓が破裂しそうなくらい痛い!
長時間使うと死ぬ!
短期決戦だ!草島日!
「高達流闘術!弐匹目!」
この技で奴の首を取る。
最も強い今なら!
速度と威力が強化された今なら!!
「リュウキン!!」
「うぐっ!?」
避けられた……!?いや、狙いが外れた!?
私が速さに慣れていない!
肩をかすめただけだ!
ただ相手の肩の肉と骨は削れた!
いける!
次こそ当てる!!
「高達流闘術!」
連続技なら肉を削り取り心臓を穿つ!!
「陸匹目!!」
肩の痛みで相手はひるんでいる!!
今ならいける!!
その腹にまずダブルパンチを当てて、内臓の機能を停止させてやる!!
「ランチュウ!!」
「見えてんですよォッ!!」
私が殴りつけようとしていた肉体が消える!
いや、これ身体をブリッジでのけぞらせているだけだ!
空圧で相手を地面にたたきつけたが、手ごたえがない!
だがしかし、連続攻撃を受け止めきれるかな!?
「くらえ!!」
「よっと!!」
足を振り上げ踏みつけるように蹴りを放つが、転がるように避けられる。
厄介すぎる。
床を破壊して噴石を当てるが、効いている様子がほとんどない。
相手が思考を回避に専念してきている!
当てるためには絨毯爆撃のような強固な攻撃……。
ジャンプをして、空気を殴りつける。
「拾参匹目!」
これの威力が上がっているなら圧殺も可能なはずだ!
プレス機で薄っぺらになっちゃえ!
「シュブンキン!!」
だが、私の絨毯爆撃攻撃に対して相手は冷ややかな目を送る。
さらに言えば、奴はもうこの攻撃の弱点を見切っていた。
「よっと……。」
こっちへ近づいてくる!?
この攻撃は中射程。
あくまで空気を殴る技、懐に潜り込まれるインファイトには適していない!
プレスするために射程範囲外に奴がいる!
「小癪な!配合種!!」
そんなに近接戦闘がやりたいならやってあげる!!
近づいて来た奴を両腕で挟む!
「ライオンヘッド!」
「!?」
そして宙にいて拘束したこの状態から、宙返りをしてオーバヘッドキックのような体制になる。
「パンダチョウビ!」
勢いよく空気を、蹴り地面へ自爆覚悟で私もろともたたきつける!!
「「ぐガぁッ!!」」
相手の方が先に地面へ接敵した分ダメージは大きいはずだ。
私のダメージも馬鹿にならない。
早くこの状態を解除しないと……。
相手の首の骨でも折れているといいんだけども……。
相手の方を見てみると、地面に上半身が埋まり、血まみれの状態だ。
「そして私は敵の存在を鮮やかに処理し、対象は」
「…………。」
死んでるはずだ。
私以外がこの武術を使うと身体がボロボロになって崩れる。
当然この女も例外じゃないはずだ。
「絶命した……。」
「…………。」
私が目を閉じその場を去ろうと歩こうとする。
流石にこの状態をもう維持できない。
一呼吸して、元の状態へ戻ろうとする。
その時だ。
「待っていましたよッ!!この時をォ!!」
地面にたたきつけられて、死んだはずの敵は油断した私へすでにデメキンを放っている!
「デメキン!!」
「――ッ!!?」
思い切り顔を殴られて、大きく壁際まで後退させられる。
油断してた時にこの攻撃はやばい!大ダメージだ!!
鼻血が流れてる、骨にひびが入ってるのを感じる。
「ぐはぁ、あ、ぁ……。
ど、どうし、て?」
「……ふぅー。
武山冒険社はズル上等、やられてから確実に相手を叩きのめす、ジャイアントキリング、捲土重来が売りの会社なんですよ。
自称(笑)彼氏の会社が作った会社の、そんなことも知らないんですか?」
この女ァ!!一体どうやって威力を……!?
「我々、鬼人は多少頭蓋骨と首の骨が丈夫でしてね。
鍛えれば耐えられるんですよ。
あんたの攻撃は。」
むかつく!!
「さらに言えばあんた、触覚細胞と痛覚細胞が著しく機能が下がってるでしょう?
おかげで拘束されている途中、強引に力を込めて拘束を外して防御姿勢をとっていることに気が付かなかったでしょう?」
まさかとは思い腕を見る。
上腕からマグマの様な高熱の血が噴き出している。
筋肉の動きが鈍くなってきている。
視界が赤い。
血を流しすぎている。
肉体がこの状態を維持できていないし、ついてきていない。
「理不尽は歯車達を集めるあの旅で慣れてるんです!」
こうなったらチョウテンガンで奴の肉体を操作して、自滅を誘うしかない。
ツボをついて不調をきたす技ならあいつにダメージを与えられる!
接敵して打ち込む!
「高達流闘術!」
「ならばこちらも高達流闘術!」
相手が打ち込むより早く!今ならば行ける!
あの構えは恐らくはオランダガシラ!
一丁締めしてひるませてからデメキンだろう。
その技の創始者は私だ。
見切れるし、それよりも私のチョウテンガンの方が早く当たる!
「拾弐匹目!チョウテ」
「と、思わせて回避!!」
横に吹っ飛ぶ回避行動!?
距離を取られた!?
チョウテンガンはその特性上、相手に接敵して人体のツボを正確について、呼吸不全や肉体を操作して何度も自らを殴り続けるという行動が可能だ。
ツボを突くという性質上、繊細さを要求される技だ。
なるべく至近距離で動いている的に狙いを定めて、突かなければならない。
ましてやスピードに慣れてないこの状況だと尚更だ。
敵が私と同等の速度で回避をされると、当たるわけがない。
技が当たらず思わず体制を崩す私と、同時に回避行動をとった相手も同時に体勢を崩す。
さっきの技は防御されたとはいえ、やはり効いていたようだ。
「こうなったらとことん付き合ってやる!!サイムは!」
「かかってこい!!サイム君は!」
「「私の彼氏だッ!!」」
◆◆◆
時は少しばかり戻り、二人が言い争いあっている最中、イチジクの視点
◆◆◆
「ヒーちゃん!!」
「嘘だろだろ?」
「ヒトメ!!」
「ニッちゃんさん!!」
「だから言ったのよ!ニッちゃんを探せだなんて!」
「ニッちゃん、旅の最中サイムからヒトメのことを言われ続けて悪い方向へ感化されていたみたいだ……。」
「恐れていたことが起きちまった……。
9割サイムのせいな気がするけど。」
すごい怒りと力の対決だ。
ヒーちゃんが見たこともない顔をしている。
――怖い……。
「無駄だ、怒りで我を忘れて声なんて届いてないさ。」
傍らにいた創造主がそう言う。
そうかもしれない。
でも……こんなの見てられないよ……。
「みんなで2人を止めよう!何か策があるはず!」
きっと、何か策がある……。
周りを見ろ、常に自分の思考をより上にアップデートしていくんだ!
2人は周りの壁や床、転がっていたキャンプ用具を破壊しながら戦っている。
衝撃波でいろんなものが吹き飛ぶ。
「「高達流闘術ッ!」」
な!?ヒーちゃんの技を!?
あの人も高達流闘術を!?
ヒーちゃん以外が使うと肉体が壊れるはずなのに!?
なぜ!?いや、金魚モードを使える人なら可能性的にはゼロじゃない?
ヒーちゃん以外にも同じようなIdを持っている??
謎は後回し、止める方法を模索しなくては……。
生半可な力じゃ無理だ。
話は聞いてもらえない。
と、いうより……。
「まずい!このままだと世界がこの2人だけでぶっ壊れちまう!」
「やめろ!2人とも!!」
あの戦闘中の2人の間には言ったらミンチにされるどころか世界が滅びそうなんですけど……。
だけどここには、武山冒険社の皆さんがいる。
アタシがそう思っている間にソライさんが、歩み出る。
「ちょっと僕止めてくる!いくよ!ユウジ!みんな!」
「おう!身を挺してでも!」
武山冒険社の皆さんが険しい顔つきで家族を後ろへと下がらせて、前へと出てくる。
これで何とかなる。
さすがに間に入って大切な仲間が決死の覚悟で仲裁したら、何とかなるはず……。
ただアタシはこの時見ていなかった。
だから反応が遅れた。
彼がすでに世界を滅ぼしかねない武器を手にしていたことに。
「『殺』の歯車Å。
この場にいる俺とあの2人以外の『行動を殺す』。」
――!?
何かにぷつんと肉体と意識が切り離されたかのように切り離される。
「な、なに!?」
口と目だけ。
それ以外が動かない。
まるで身体が石になったように動かない。
首から下が半身不随になったようだ。
体の感覚が全くない。
「この感覚は!?」
「まさか!?」
「19年前!同じことがあった!ハナビは覚えている!!」
「このタイミングでなぜ!?なぜおまえが裏切った!!」
2人が戦っている最中を見物するかのように、1人の創造主が巨大な死神のような鎌を持ち、空中に座る。
「アル!!」
創造主アルゴニックさんは動かなくなったアタシ達へ見向きもしないで、軽いため息をして頬杖を突き戦っているあの2人をぼーっと見ている。
「この2人は同じ存在であり、それぞれにとってのアンチテーゼなんだ。
これは必要なことらしくてな。
お前らに邪魔してもらっちゃあ、困るんだわ。
手は出させないために『行動を殺させてもらった』。」
何を言っているのかはよくわからないけど、最悪の状況だ。
創造主がこの半端ないハプニングの中。
裏切った!!
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