表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】無双無敵少女は超超超絶な青春を諦めないッ!!  作者: ラクルドゥ
第八章『心がぶつかり合う最上少女と最高少女』
144/255

第135話『戦後と外国の少女』


 ◇◇◇

 約100年前、ヤベ二等兵の視点

 ◇◇◇

 

「アラタ!」

 塹壕へ戻り奴の服を破く、肺の位置に穴、片手も射抜かれている。

 敵によるものだ。

 こいつのことは気に食わないが死んでいい奴じゃない。

 こいつは俺と共に敵兵の半分を殺し、守ってくれたのだ。

 死に際にラジオを聞こうとするほど、のんきな奴ではあるが死ぬという勝手を許した覚えはない。

 一緒に逃げるんだ。

 そして本部に戻り増援を連れてここにいる敵を駆逐する大役がある。

 ここを攻撃すれば戦況を大きく変わる。

 だが俺が1人で戻ったところでは説得力がない。

 早くしないと新しい舞台がやってきてしまう!

「うぐ……ヤベか?」

「アラタ!基地まで戻るぞ!死ぬな!」

「へへ、歌謡が聞けなかったのは悔しい。

……が、仕方がない。」

 こんな時まで歌謡か。

 なんてのんきな奴なんだ。



 顔から生気がなくなっていく。

 血が止まらねぇ。

「……もっと怒れよ。

人が歌えない世界に。

ラジオからつまらねぇ嘘の報告するばかりするこのクソったれの世界に。」

「……。」

 目が死んでいく。



 俺もこいつもただ生きたかっただけだ。


 

 無駄で意味のない戦争を、人の傲慢さの中から解放されて生きたかった。

 神などに祈りはしない。

 いないものに祈らない、すべては人の業が導いた戦争だ。

 人の業ゆえに我らは殺し合っている。

 まともな奴が、決めた正義のうえで別の正義と殺し合いが行われる。

 だから神などは救うわけがない。

 正義を圧倒する何かがいるわけでもない。

 その業と暴力の最中。





 ――俺らは生きていたかっただけなんだ。


 


 


 

「せめて、せめてよ……憤怒の限りを尽くしてこの馬鹿な世界を怒れよ……!

死ぬ気で怒って、生きろよぉ……。」

「……。」

「お前なんか、大嫌いだ。」



 



 





「治してやろうか?クソガキ。」



 

 

 俺の隣に敵!

 とっさに銃を構え向ける。

 何だこいつは?鳥の仮面をつけ、黒い服を着ている。

 敵か?あるいは死神か?

 塹壕にいつ入ってきた!?

 唐突な恐怖の訪れか、震えが止まらない。

「治してやろうか?と聞いているのだが?答えは?」

「……あ、ああ!こんなどうしようもない奴だが!救うんなら救ってくれ!」

「それが悪魔の契約でも?」

 嗤ってやがる。

 だがそれでもかまわない。




 

「救え!こいつを治し、我々をどうしようもないこのクソみたいな現実から解放してくれ!」

「ああ、わかったよ。要求の多い傲慢なクソガキ。」


 




 

 視界が暗転し、謎の鳥仮面が治療をしていく。

 俺も疲れたのか意識が……。






 

 ◇◇◇



 なんだ?瞼が重いぞ?

「ん?ここは……?」

「あ~~やっと起きたんだ。我が秘密基地だよ。

戦場に転がってる使えそうなものを集めている。」

 謎の鳥仮面に我らは拉致されたのか?

 隣にはアラタが寝転がってる。

 息をしている。

 周りには銃やよくわからない部品が転がってる。

 薄暗く、床はぼろい木材だ。



 鳥仮面が闇の中から近づく。

「国際条約に基づき、捕虜の扱いには気を付けろよ。」

「捕虜?いや違う違う。

ワタシはただ、君らとお茶がしたいだけだ。」

 湯呑を差し出す。

「毒でもいれてるのか?」

「いや。

戦争、戦争でうるさくって人とお茶をする機会が得られなくてね。

ぶらついていると君らが何だかごちゃごちゃしていたから、気まぐれに救ってみたのさ。」

 鳥仮面は仮面の下半分を外し、湯呑からお茶をすする。

「この玉露はなかなかうまいな……。」

 仕方なしに熱い茶をいただく。

 少し感謝はするが、うさんくさい。

 


 

「あんたは誰なんだ?」

「誰なんだろうねぇ~?

英雄か、大量虐殺者か。

はたまた、ただのボケ老人かもしれない。」

「名を聞いているんだ!」

 俺のその言葉に舌打ちをし、手で頭を掴む。

「まったく、名を聞くのなら貴様から名乗れ。

目上の者に対して傲慢すぎるぞ。

お友達を救ってやったのは、ワタシなのに。」

「俺はヤベ二等兵だ。

後ろのこの馬鹿はアラタ二等兵。

齢14歳、帝国陸軍偵察部隊所属。

感謝はするが貴様は何者だ。」

「……名乗る名など、幾千も前に捨てたただの老人さ。」

 にしてはずいぶんと若く見えるが……。

「あーそうだ。

そこのお前、なんなら名を付けておくれ。」

「は?」

 何を言い出すんだ?





「名前を付けておくれよ。クソガキ。」

「……。

じゃあ姿が黒いし、貴様にはアラタを助けた義があるから『黒義(コクギ)』。

俺らに利があって玉露を呑んでいたから『利玉(リギョク)』。

合わせて『黒義(コクギ) 利玉(リギョク)』なんてどうだ?

最もこのような馬鹿な名前……。」

「ああ、いいね。じゃあそれで。」

 いいのかよ!?



「……何を騒いでる?ヤベ二等兵……?」

「アラタ二等兵!」

 起きたか!無事だったようだ。

 だがよく見ると、肺と鼻に何かのくだが繋がっているようだが……。

 それに腕が鉄に変わってる。

「すこし肺の方に穴が開いていたから呼吸の補助機と、腕を義手に代えさせてもらったから。

しばらくは、絶対安静だ。」

「そんな!我らは基地に戻って、敵の基地の居場所と部隊の壊滅を……。」






「そんなことをしなくても、もう終わりだ。」





「え?」

 奴がラジオを付ける。

『本日、帝国は戦争の終結。

敗戦したことを告げました。』

「な、なに!?」

 は、敗戦だと?

「お前らが疲れから寝ている間に負けたんだ。

それに国に戻るのは今はよした方がいい。

敗戦のショックから、おそらく今後100年はあの国は国交を断絶しかねない。

もっともこのままだとまたいずれ、大きな戦争をするだろう、そういう奴らが国の中核だからな。」

「……。」

 自分の国のことだ。

 少ししか生きてなくてもよくわかる。

 汚い大人共の考えはよくわかる。

 親のいない俺はそういうのをよく見てきた。



「リギョク。俺らはどうしたらいい?」

「さぁね?ここで当分、情勢を見守りな。

下手に帰ると、無知なものから射殺されかねない。

お前らは自分の命惜しさにチャンスを不意にしたクズとして、石を投げられるだろう。」

 ……鬼畜たる敵国にわたる、あるいは自国に戻り汚名を背負い酷い扱いをされるのであれば、ここに居座るべきか?






 しばらくいうことを聞くしかない。






 ◇◇◇

3か月後、ヤベ二等兵の視点。

 ◇◇◇



 ここでの生活もだいぶ慣れた。

 というのも、リギョクの奴らは俺らに家事を任せたかったらしく、敗戦しそうなわが国でいかにも死地をさまよってた俺らに恩を売って雑用をさせたかったのが真実らしい。

 腹立たしいがアラタも回復してきた。

 ただリギョクの言う通り、国へは帰れそうにない。

 すでに鎖国の準備を始めており、前線の領地を切り離しそこにいた我ら兵を他国への献上品として、送るとのことだった。

 なので仕方がなくリギョクとアラタと共にこのボロ家で生活している。

 リギョクは時折いなくなり何らかの研究をしており、俺らはその間、どうしたら勝てたであろうかということに日々を費やしていった。

 不毛だが、それで飯を食わせてもらえるのだからありがたい。

 この秘密基地はどこにあるのかわからないが、おそらく元領地で諸外国のどこかだろうということはわかった。



 


 ――そんなある日の晩。





「…………その場合、敵の練度にもよるが母艦を航空機が落すんじゃないのか?」

「いや、対空砲でだな……。」

「もっと確実な兵器が必要だろ。あるいは連絡網が……。」

 極めて不毛な論争の最中だった。



 突如玄関扉の奥から、ごとッという音が聞こえる。



「……敵か?」

「弾を込めろ。」

 一応少年兵と言えども警戒は怠らない。

 報復しに来たかもしれない。

 リギョクは今、寝てるはずだ。

 銃に弾丸を込めて玄関扉の前に待機する。

 アラタの義手は多少おぼつかないが、照準はブレていないようだ。

 扉を開ける。





「両手を頭の上に置き、その場に伏せろ!」

「フリーズだ!」

 そのものはひどく怯え、白衣を着た年端も行かない少女だった。

「お前は何者だ?」

「ア、ワ、ワワタ、シハ……。」

 眼鏡をかけており、ひどく怯えている。

 外国の少女だ。

「ワタシハ、ニゲテキマシタ!タスケクダサイ!」

 



 

 逃げてきた?

 それも俺達の言葉を使って?

 見た感じ、俺らの国に近い人っぽいけど

「何があった?」

「帝国の人!タスケクダサイ!」

 たしかに帝国の少年兵ではあるが。

「なんだねぇ?こんな夜遅くに……。」

 二階からリギョクが下りてくる。

 眠そうだな。

「リギョク、こいつは敵か?」

 アラタ、聞いていて銃を下すな。

 油断するな。

 圧倒し尽くし、慢心せず敵意を向け続けろ。

「うーーん。中に入れてみるか……。」

 リギョクもリギョクだ。

 終戦で緩むな。





 ◇◇◇





 この少女はお隣の国出身で、名前をイカヅチというらしい。

 地元で天才と称され育てられたが、拉致されて大国の兵器研究のために日夜、利用され続けてきたらしいのだ。

 とりわけ興味深かったのが……。

「ワタシ、強固な通信網!ネットワーク作ッテルノ!毎日、イソガしいのが悩みですけど。」

「なんだそれは?」

 アラタ、貴様は馬鹿だな。

 敵にその通信網さえあれば戦争がこんなにもうまくいくわけだ。

 つまり、我らの不毛な戦争討論で軸になっていた連携が、こいつによって行われていたんだ。

「人を繋げテ幸セニスルハズガ……。」

「利用されたわけだ。」

「ソウ……。」

 こいつもある意味、正義の被害者だ。

 責めきれない。





 責めるなら自らを正義だと呼称し戦争を吹っかけて、銃を持たせる世界そのものだな。

 と痛感する。

 見え透いた誇張で塗り固めないと、安寧のメッキが剥がれる正義を責めるべきだ。





「助けてって言ってたが?」

「仲間!人体実験サレテル!人や動物イル!助ケテ!」

 人体実験だって!?

 

 

「これはみすごせん!ヤベ二等兵!行こうぜ!」

「待て!アラタ慎重に事をなすべきだ!

貴様は負傷してる!第一どのような敵勢力がいるかもわからないのに、むやみに出歩くべきではない!」

 俺らがいい争いしているとリギョクがゆっくり立ち上がる。





「はぁ、じゃあ行くのなら少しだけ協力してあげるよ。

不服だけども、ワタシもその研究所に興味がある。」

「リギョクの許可が下りたぜ!」

 アラタ二等兵が笑う。

 仕方がないか。

 下手に放っておくと、こちらに不利益が生じかねない。

「作戦を立てよう。まず、君たちは小さいから……。」

 こうしてお人よしに付き合って我らは謎の人体実験研究所を目標として攻撃する計画が立てられた。





 ◇◇◇




 時刻は宵。



「アラタ先に行け!」

「いや、匍匐前進苦手で……。」

 こいつを前に進ませたのは誤算だった。

 今、件の研究所の空気を送るダクトの内部を進んでいる。

 時折、研究者や軍人が下を通ってひやッとする。

「そろそろ合図の時間だぞ。」

「いや、わかってるよ。」

 俺らの声に反応したのか。




 

 下から

「誰の声だ?」

 という兵士の声が聞こえる。



 


「チューチュー……。」

「ネズミか……。」

 よかった勘違いしてくれたみたいだ。

 前を進んでいるアラタのケツをひっぱたき、捕まってる部屋にせかす。







 イカヅチ曰くここら辺らしいが……。





 なんだかうなり声が聞こえる。

 アラタが止まり、単眼鏡で隙間から下の方を確認する。

「おい、ヤベ。

下の方に湯煙の美少女がいるぜ。」

「何、鼻の下を伸ばしているんだ猿?」

 アラタ、興奮していてこの狭いダクト内で暴れるな。

「あと何が見える?」

「……なんだあれ?馬鹿みたいにでかいミミズ?に本を読ませているが……。

…………なんだか機械の鞭でたんたんとシバかれていやがる。可哀そうに。

それに……兵士が1人。俺らと同じ年くらいだな。」

 たったそれだけか。

 運がいい。

 休憩時間に来たかもしれないな。

「入り口にいるリギョクが行動を起こすまであと3秒。準備はいいな?ハゲ。」

「ああ、威張るだけのゴミ野郎。」

 うるせぇ。





 部屋に赤いランプが灯り、じりりりと大きな音が研究所に鳴り響く!


 

「「いくぞ!!」」

 ダクトを突き破り、白い服を着た少年兵へ銃口を突きつける。

「おとなしくしろ!フリーズだ!」

「Oh……。」

 俺らと同じ少年兵だが、俺らよりも若く、鋭い殺気だ。

 隙を見せれば銃を構えるだろう。

「アラタはやくしろ!!」

 少年兵から鍵を奪い、白い服を着た美少女の檻を開ける。

 戦争のための実験動物にされたんだ。

 可哀そうに。

 よく見るとその少女から蒸気?の様なものが出てる。

「コノ煙、吸ワナイデ!」

「わかったから、いいから出るんだ!外でイカヅチが待ってる!」

 少女は意図が伝わったのか、ぺこりとお辞儀をしてミミズの檻を指差す。

「彼モ、タスケテ!」

「あいよ!」

 アラタがかちゃかちゃとデカイミミズの檻も開ける。

「ありがとぅゴザイマス……。でも、モウ、お腹ガ減って」

「いいから!これ食ってとっとと出ろ!」

 あー!それ!俺のレーションだぞ!!

 許さんぞ!あいつ!

 っていうか、あのミミズしゃべれるのかよ!

「アリガトぅ!おんにきマス!」

 俺のレーションを食いながら廊下へと抜けて行った。



 そろそろリギョクがこの基地を爆破する。



「撤収だ!」

 俺がそう声かけると銃を突きつけた少年が、俺にナイフを突きつけてきた。



 その震える手と目を見て、思う。


 




 殺しや銃を向けるのが初めてなんだな。

 こいつ。



 


 俺はその目を見て、ゆっくり近づき。

 思い切り腹を殴る!

「許せ!」

 地元だと喧嘩は一番強かった。

 戦争前はこの拳で、すべてを勝ち取ってきたのだ。

 何も知らぬものは、そこで静かに眠っていてくれ。







 戦争などという『善』を知らずに。

 

 





 悶絶したのを確かめると、部屋を出てイカヅチのいる窓へと駆け出す。


 


 

 ◇◇◇

 




 こうして研究施設を爆破し、アジトに帰ってみたはいいもの。





 我々は途方に暮れていた。

 俺とアラタに加えて。

 食うことばかりの頭がでかい喋るミミズ。

 背が高い、妙な煙が出るウサギ獣人。

 という実験されたもの達と頭だけはいいイカヅチ。

「ずいぶんと賑やかになったねぇ。」

 そういって茶をすするリギョク。


 



 まともな奴がいやしない。







 いや、まともじゃないほうがいいのかもしれない。







 まともであれば被害者になるだけだ。

 正義(まとも)の被害者に。

 誰かが決めた正しいを遂行するだけの人生に何の価値があるんだ?

 疑問がわいたとき、扉をノックする音が聞こえ、実験にされたもの達が怯える。

「アラタ、みんなを守ってくれ。」

「ヤベ、注意しろよ。」





 俺が扉を出ると、先ほどの少年兵とその後ろに別の少年兵が立っていた。

 先ほどの爆発で煤だらけになったのか、やや小汚いその少年兵の目は何かを決意しているようだった。



 


 

 改めてその白い少年兵は、涙目で俺の首元に銃を突きつける。






 


 どこか親近感を覚えた少年に向かって思うことがあり、俺は落ち着いていた。








 


 ――名前も知らないこいつも同じ、理不尽な世界に虐げられたものなんだ。



※ブックマーク、評価、レビュー、いいね、やさしい感想待ってます!

この物語の『更新』は現状『毎週金、土、日』に各曜日1部ずつとなります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ