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【完結】無双無敵少女は超超超絶な青春を諦めないッ!!  作者: ラクルドゥ
第六章『心へ襲い来る討伐少女』
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第112話『金ぴかパーティでの少女』


 次は沈黙の大罪。

 


 体中に穴が開いている不審死。

 敵が何をしてくるかわからない。

 


 空間を司る歯車を使い駅へたどり着く。

 


 ここからどこへ向かえば……。

 たしか、ユウタロウさんの勤務地であるゾニュロの反対方向の天秤のオブジェがあるビル……。

 とにかく反対方向へ行かなきゃならないのね。

 まだ火災は激しい。

 今、みーさん達が必死に怠惰(アポク-シン)と電脳世界で戦っている。

 となると、まだ消防署とかの設備も握られたままなんだ。

 火が収まらない中、目的地へと駆けだす。




 ◇◇◇



 天秤のオブジェクト。



 そこは俗にいう株取引場のビル前。

 先ほどグループを分けたイチちゃん、アサくん、ユウタロウさんが待ち構えていた。

「ヒーちゃん!」

「イチちゃん!嫉妬を撃破したよ!」

 その言葉を聞いてイチちゃんは私にハグをしたのち、ガッツポーズをとる。

「ヒーちゃん、服……。」

「ん?服……?」

 あーーーさっきの戦いで、スポブラが若干見えちゃってる……。

 だからユウタロウさんとアサくんは背中向いていたんだ……。

「はい、こんなこともあろうかと。

学校指定ジャージをどうぞ~!」

「ありがとイチちゃん。」

 せっせと着替えて乙女の威厳を戻す。



 ちょっと芋っぽいけど。

「おまたせ」



 アサくんとユウタロウさんは少し怪訝そうな顔をしている。

 まぁさっきまで、私が後ろでガサゴソと着替えていたってのもあるけど。

「う~~~む。

経済犯罪の沈黙(ソドム%シン)であるか……。

まずいな……。」

「たしかに、かなりやばいだろだろ……。」

「何がまずいんですか?」

 そういえばなぜ株式取引場?であるここに?

「本日はエイドスドアルームの例の誤報の影響で、夏の決算処理を行う日程がずれた企業が多くてな。

ワタクシ企業のゾニュロ、ほかにも大手冒険社ドーロハイウェアーズ、そのほか多数の大企業が決算前後の株取引を行う大事な日が今日だついでに今日は各界の重役たちの交流パーティも同時開催していたはずだ。」

「オレちゃんの国立研究所と共同開発している人が務めている製薬会社も、たしか大事なパーティがあるとかでこのビルにいたはずだろだろ。

個人的な友達でもあるから、救出したいだろだろ。」

 ふーーーん。

 学生からしたら何が何だかわからないけど。

 とにかくイチちゃんは今日ここに、大罪が来ると読んでいたのね。



 

 ◇◇◇



 ビル内部豪華ァ!!

 金色の装飾に赤いカーペット!

 シャンデリア!金の彫像に、なんだかよくわからないお金を指し示すモニター!

 あと、スピーカーから流れる荘厳な音楽!

 近場で火事が起こっているっていうのにここは別世界だ!



 


「これがセレブか……。」

 たぶん25年前、私は確かスラム街的な場所に住んでいた気がする。

 ここはなんだか居心地が悪い。

「ここの10階で多種企業合同パーティが開催されている。

そこからあたるとしよう。」

 そう言ったユウタロウさんはすでにエレベーターに入っており、巻きひげをいじっている。

 私達3人もうなずき合い乗り込む。

「ドアガ閉マリマス。」

 エレベーターの音声と共に優雅なBGMがかかっている。

 近所のデパートとは大違いだ。

 それに……。

「エレベーターまで金ぴか……。」

「ヒーちゃん、こういうのは成金の人達が、自分の品格を保つために金色にしているだけで、実際の財布事情は案外大したことないよ。」

 イチちゃんの昼ドラ知識曰くそうらしい。



「10階デス。」

 ほどなくして無機質な機械音が鳴り響きドアが開くと、10階とは思えない高い天井。

 エントランスには黒服の図体だけの警備員に。

 外のことを気にしてない偉そうな人達が会釈してパーティ会場へ入っていく。

 ユウタロウさんは、受付へと近づく。

「すまぬ。」

「はい、どちら様でしょうか?」

「ゾニュロのエンジニア。ユウタロウだ。

このパーティ会場に危機が迫っていることを告げに来た。

早急にこの中に入れてもらいたい。」

 受付嬢はけげんな顔で、名簿と照らし合わせる。

「あ、あの……名簿に名前がない方は入れられません……。」

「だから危機が迫っているのだ。」

「し、しかし。いくら著名なエンジニアであるユウタロウ様と言えども名簿に名前がない限り入れるわけには……。」

 ほらほら、ボディーガードさんが目を光らせ始めたよ。




 

 ――んん??



 


 なんだかさっき一瞬だけ。

 ボディーガードさんが妙な動きをした。

 まるで水あめみたいな感じでプルン♪って移動した。

 なんだ?この違和感。



「ですが、ワタクシたちは、このパーティ内に大罪が……。」

 ユウタロウさんが受付と小競り合いをしている間。

 ボディーガードさんが警棒を持って近づく。

 警棒は本物だ。

 だがあのボディーガードさんは……。

「ヒーちゃん。」

「わかってる。」

 イチちゃんも気づいたようだ。

 金魚モードを発動し周囲の空気を察知する。





 明らかに二酸化炭素を発していないのがいる。




「高達流闘術!」

 すでに紛れている!

 そこのボディーガード!

 明らかに初見のタイプの敵だ。

 下手に近づかない。悠長に隙を与えない。

 リーチがある足で仕留める!

「伍匹目!」

 ジャンプをしてボディーガードの形をした何かへ向かって連続空中蹴りを行う!

 受付嬢の叫び声と共に、敵に攻撃が当たる……。

「ハナフサ!」



 

 何だこいつ、柔らかい。

 


 蹴り心地は完全に水、変形していく姿も水。

 これは人じゃない。

 スライムの様な粘性を感じる存在ですらない。

 こいつは生命体ではない。

 みーさんは、正体がぬいぐるみで人間のようだったけど。

 私は今、完全な水を蹴っている。

 

 

 水の身体が変形して私の身体を掴む!


 

「えっち!」

 言っている場合じゃない。

 どう見てもこのままだと、顔まで水が覆って呼吸を阻まれて窒息する。

 今日こんなのばっかりだ。

 とにもかくにも金魚モードを解除しようとしてくる、せせこましい敵ばかり!

 弱点はないのか!?

 いいや考えるのは面倒だ!

捌匹目(はちひきめ) オランダガシラ!」

 一丁締めをしてその空圧で、体にまとわりつく水をはじけ飛ばすッ!

 水はあたりに散り散りに飛び散る。

 カーペットに染み込み、消えて行く。

 そしてその大部分は空気を巡回させていたエアコンの中に入っていく。



「はぁ……はぁ……。」

 この私が動揺している。

 これは倒していない。

 わかる。

 逃げられた。

「ヒーちゃん!大丈夫!?」

「逃げられた。なにあいつ。」

「おそらくあれが沈黙の大罪?

水……スライムが正体なのかな?」

「イチちゃん、あれはスライムじゃないよ。

スライムにはコアがあって、もっと粘性が高いんだ。

あれは『水そのもの』。」

「水そのもの……コア……。」

 イチちゃんはあたりを見渡す。

 天井備え付けのエアコンを眺め、少し息をつく。





「倒せる方法はなんとなくわかったよ。

ヒーちゃん。」

「ほんと?」

「うん。

ただ、急いでパーティ会場の中に入って敵を探さないと。

移動させられる。」

 させられる?

「恐らく奴にもコアとなる何かがあるんだよ。

恐らく一度形が崩れると、元に戻れなくなるんだ。

そして崩れたものはコアへと戻り、コアを守るために尽くすんだと思う。

じゃなきゃ戻らない。

統率のとれた軍のように行動する生物。」

 そんな生き物がいるのか……。

 白野叔父甥は顎を抑えた同じ体制で感心しつつ、受付嬢をエレベーターに乗せ終わる。

「その話、実に興味深いな。」

「たしかに!イチジク嬢ちゃん!

そういう生物や科学的分野なら、オレちゃん達も協力するだろだろ!」

 パーティ会場の扉をみんなで開く。


 

「これはアタシらと、この生き物との詰将棋。

生存権をかけた弱肉強食の戦いだ。」

 なんだかだんだん、イチちゃんが頼もしくなってる……。


 

 ◇◇◇



 パーティ会場も似たような豪華な雰囲気だ。

 みんなスーツの中、私はダサい芋ジャージと言うことですごい場違いに感じる。

 せめてセーラー服だったらいいのに。



 さすがに怪訝な目で会場のまぶしい金持ちたちが私達を見る。

 っていうか結構な人数いるなぁ。

 これを総当たりで探すのはさすがに無理でしょ。

 かと何とか言ってこの中から息をしていない水を、探すのは難しいだろうし。

「イチちゃん、この中からどうやって……。」

「オレちゃんの知り合いもどこにいるのか……。」

「ここでは人が多すぎるとは思わぬか……?」

 3人がいっぺんに話す中イチちゃんは眉間を抑えて冷静に、あたりを見渡す。

「(小声で)うかつに離れるわけにはいかない。

相手は水……冷やす?熱する?音?

……あ。」

 どうやら思いついたらしい。



 イチちゃんはパーティに備え付けられていたテーブルに行く。

 豪華な立食パーティーらしく、ご飯が並べられている。

「おいしいそ~。」

「くぅ弟や妹たちにぶんどられまくるから、こういうのうらやましすぎだろだろ!」

 ショーワ街育ちの私とアサくんは、基本飢えている。

 イチちゃんも同じ出身なのに、極めて冷静にテーブルを眺める。


 


 

「……もし。

敵が潜伏しているなら、成り代わる暇があるかな?

追ってきたもの、穴が開いて干からびた死体、水の敵。

アタシ達を殺すための敵。

そんな奴が、ぺちゃくちゃおしゃべり満点の立食パーティに堂々と参加しているとは思えないんだよ。」

 イチちゃんは、にこやかにテーブルにあった水が入ったピッチャーを持つ。








 

「ねぇ?そうでしょ?沈黙の大罪さん?」

 



 

「……。」

 ピッチャー内部の水が不自然に揺れる。

 グラス越しの水が明らかに波立って私から逃げるようにゆれ動く。

「ヒーちゃん!」

「うん!」

 イチちゃんが蓋を抑えながらピッチャーを私へと渡す。

 結構、力強く動いている。

 しかも一方向に。

 だいたいこの部屋の前方へ向かいたがってる。

 そこには1人、異様に目立つ男がいた。





 前方にいるのは……狐の獣人だ。

 白衣を付けて目の下に濃いクマがある。

 不摂生そうな痩せた顔つきで、目つきが鋭く長身の長髪茶髪の男性。

 尻尾や髪の毛がボサボサで白衣も、緑のインナーもボロボロだ。

 なぜかトイレスリッパをはいていて、やや猫背。

 



 

 ――あれが、おそらく沈黙の大罪。

 そのコア……?


 

 

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