屋根裏で見つけたもの
『第4回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』投稿作品です。
キーワードは『屋根裏』です。
お題コンプリート!
最後は何か捻ろうかと思ったのですが、普通に直球ストレートにしてみました。
私の投げるストレート、後は分かりますね……?
どうぞお楽しみください。
我が家は建て替えに向けて大掃除の真っ最中。
今日はここ数年手をつけていない屋根裏に挑む。
「……マジでやるの?」
帰省していた従兄弟の芭久はゲンナリした顔をしている。
「子どもの頃にあんたも遊んだ場所でしょ? 当然の責務よ」
軍手を渡すと、芭久は深々と溜息をついた。
「あの時から凄い量の荷物があったじゃんか……。無理だよ……。業者案件だよ……」
「怯むなー! 所詮相手は有限! 運び続けていればいつかは終わる!」
「体力も有限なんだけど……」
ぶつくさ言いながらも、荷物を下へと運んでいく。
私は階段近くに荷物を寄せつつ、空いたスペースに掃除機をかける。
「あ、これ……」
掃除機の角にこつんと当たった小箱。
見覚えのあるクッキーの缶。
昔芭久と二人で遊んだ時に、見つけたビー玉とか、綺麗な小石とか、お菓子のおまけのおもちゃとか、『宝物』として片っ端から入れていた箱だ。
「懐かしいなぁ……」
少し錆びてはいたけれど、力を入れると蓋が開いた。
中には子どもらしく、統一性のない物が雑然と詰まっている。
一つ一つを手に取ると、当時の思い出が蘇るようだ。
「……あ」
その中で一際輝くものを見つけ、私はつまみ上げた。
「初代、次の荷物は……。って何してるんだ?」
「ふふっ、懐かしいの見つけた」
箱を見せると芭久の相好も崩れる。
「わー! これ子どもの時の!? よく残ってたなぁ」
「懐かしいよねー」
「あ! 無くなったと思ってた俺の最強ベーゴマ、その中にあるかも!?」
「その前に、これ」
私が見せたものに、芭久の目が丸くなり、続いて真っ赤になった。
「……そんなものまで……!」
「ね。『将来初代と結婚する』ってくれたあの指輪。こんなところにあったんだね」
「いや、それは子どもの頃の話で……」
「今は違うの?」
「……その……」
黙り込む芭久。
東京の大学を卒業後はこっちで仕事を探すって言ってたから、少し期待してたんだけどな……。
「……卒業してこっちで仕事決まって、ちゃんとしてからって思ってたんだけど……」
芭久が私の手を取る!
私が持っていた指輪を掴むと、左手の薬指に……!
「……あれ? 入らない……」
「……当ったり前じゃない! 小学生の時の指輪なんだから!」
第一関節までも入らない指輪。
それは今の私達の関係みたい。
それでもあの時の想いが形になったのが嬉しくて。
「次は給料三ヶ月分ね」
「……おう」
「さ、片付け片付け!」
指輪がきらりと光る左手で、芭久の背中をばしばしと叩くのだった。
読了ありがとうございます。
恒例のお名前由来。
主人公は末永初代。
従兄弟は末永芭久。
末永く芭久初代でした。
ひとまずお題はコンプリートしましたが、また何かを思いついたら書くかもしれません。
その際はよろしくお願いいたします。