結界少女はピンチになる
遅くなってごめんなさい!
「ひうぅ……怖いよぉ。」
どうやら私は森の奥に来てしまったらしい。なんだか薄暗いし、植物もじめじめしてて、明らかに安全じゃない雰囲気が出ている。
も、もしかしてこういう場所で魔物が出たりするのかな?だとしたら早くこの森を出なきゃ!
「でも……どっちの方向に進めばいいのかな。」
どこを向いても森、森、森で出口なんてわからないよ……。はぁ。困った。
ガサッ
ん?何か聞こえたような。気のせいかな。
ガサガサッ
や、やっぱり何かいる!?ど、動物かな。それとも……魔物?
どんどん近づいて来る音に足がすくんで動けない。
ガサッ!
そしてついに私のすぐそばまで音が迫って来た。
「な、何?誰?」
対話が可能そうな相手であることを信じて目の前の草むらに言葉をかける。
「キキキッ?キキッ!」
だけど現れたのは到底対話が不可能そうな相手だった。それは……
「う、うさぎ?でも角がある…。」
草むらから出て来たのは3匹の角の生えたうさぎだった。しかも、可愛い感じじゃなくてすごく凶悪な顔をしている。
「キキャッキャ!」
突然、角うさぎ×3が大きな声で鳴いたかと思ったらこっちに向かって走り出して来た!
「ッ!わあぁぁー!来ないでー!」
私は全速力で反対側に向かって走り出した。でも小さい10歳の女の子と進化したうさぎじゃ走る速さの差は分かりきっている。私の足ではうさぎたちに5秒と経たずに追いつかれてしまった。
「キャッキャッキキー!」
3方向からこちらを囲み、醜悪な顔で飛びかかろうとして来る角うさぎ。
「い、いや。来ないで!」
なにか、なにか助かる方法は……!
その時、ふと神さまから貰った能力のことを思い出した。
そうだ、結界の能力、あれを使えば……!
「キュキュ……キキー!」
そう考えた瞬間、角うさぎ×3が一気に飛びかかって来た。
「け、結界!」
すぐそこに迫った角うさぎたちに向かって手を突き出して、やり方が合っているかはわからないけど、とりあいずそれっぽいことを言って結界を発動させる。すると……
カキィン!
私の顔のスレスレのところで、角うさぎが何か見えない壁のようなものにぶつかって、こちらに攻撃できないでいる。見回すと、他の2匹も同じように壁のようなものに阻まれている。
「これが……結界?」
見たところ、私の周りに円状に結界が張られている。範囲はあんまり広くないけど、なんとなく大きさはいじれる気がする。
「じゃなくて!今の内に逃げないと……!」
私は結界を張ったまま角うさぎがいない方向に向かって走り出した。
森の奥に行ってしまってるかもしれないけど、とりあえず今の状況から抜け出すことが最優先だ。
そして体力が切れて立ち止まる頃には角うさぎたちは諦めてこちらを追って来なくなった。
「はぁ、はあ。と、とりあえず、助かった……!」
緊張から解放されて、どっと疲れが押し寄せて来たからか、へなへなと地面に座り込んでしまう。
「結界の能力をお願いしてて本当によかったー!この世界に来て早々に死んじゃうところだったよ……。」
もし他の能力を貰っていて、それが使いこなせていなかったらと考えるとゾッとする。
「でも……さっきよりもさらに奥の方に来ちゃったみたいなんだけど……これ大丈夫かな。」
今いる場所はさっきよりもさらにどんよりした空気で、植物はじめじめどころか咲いてさえいない。
音も全くせず、それが逆に怖さを倍増させていた。
「この状況で私が出来ることといえば……結界の能力を使いこなせるようにすること、かな。」
次にさっきみたいな魔物が出て来ても大丈夫な保証はない。
さっきは偶然あの弱そう…と言っても私からすれば強いけど…まぁこの世界基準ではあまり強くなさそうな見た目をしていた角うさぎが出たけど、次に私の前に魔物が現れて私が無事でいられるという保証ははどこにもない。
だから私はこの能力を使いこなせるようにしないといけない。
こうして私の森の奥での結界を使いこなすための訓練が始まったのだった。
最初の方は旅しません。少なくとも第一章時点では。