いつだって助けるさ
2019年 妻が風邪をひいた時のお話
妻が体調を崩した。
終業時間になるとすぐに妻から電話がかかってきた。朝から調子が悪そうだったが、だいぶ弱っている。ありがたいことに私の体は丈夫だ。だが妻はよく体調を崩す。
電話で聞く妻の声は泣きそうだ。何度も吐いたと言う。どうなるのか不安だと言う。ただの風邪だろうに心が弱っている。しかし私はまだ仕事が残っていて動けない。病院に行くことを勧めると急いで自分の仕事を片付け、家に向かって車を走らせる。
家に帰ると妻の車がない。駅前の病院に行くと言っていたな。不安がっているだろうか、熱はあるのだろうか、ちゃんと運転できるのだろうか。電話での様子を思い返して心配になる。帰ってくるまでまだ時間がかかるだろうか。
考えるより動け。私は病院まで走った。
病院の待合室に到着すると、多くの患者と一緒に妻が長椅子に座っていた。私を見つけた妻は一瞬驚いた後、すぐに泣きそうな顔になり、隣に座るとコテンと頭を預けてきた。
大丈夫、ただの風邪だ、すぐに良くなるよ。妻のおでこに手を当てながら言う。
妻の診察が終わり風邪薬をもらった後、キーを借りて病院入り口に車を回す。
「あれ? あなたの車は?」
そんなの、乗ってきたら君に運転させなきゃならなくなるじゃないか。だから走ってきたよ。
妻がまた泣きそうな顔をする。気にすんな、いつだって力になってやる。そのために私がいる。