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いや、光と闇ならばあるではないですか

 ヨハンナはエドアルド様の方を見た。


「昨日、皇族には身体が弱い者が多いと言ったけど……

 皇帝の子は、流産や死産、赤子のうちの夭折が異常に多いんだ。

 ファビアン殿下も、本当なら同腹の兄弟姉妹が何人かいるはずだったんだが、無事成長したのは殿下だけだったと聞いている。

 ギネヴィア殿下もたぶんそうなんじゃないかな。

 それだけじゃなく、生まれつき障害をもつ皇子皇女も多い。

 皇帝の兄弟姉妹の子はそうじゃないから、遺伝というわけでもなさそうだし、なんなんだろうと思っていたけど、手稿に書かれていることが本当なら、『ことわりの龍』との契約の代償、一種の呪いということなんだろうか」


 エドアルド様は伏し目がちに教えてくださった。


「……なるほど。

 龍の場面でエルスタルの後ろにいる人々、これはエルスタルの子孫のつもりなのかもしれませんですね。

 手稿の記述では、エルスタルは一人で遺跡に突っ込んでますので、ここにこんなに人がいるのはおかしいのですよ」


 ヨハンナは、薄墨で描かれている人々を指した。


「そうかも。

 これとか、アウローラとレクシアじゃない?」


 はしっこにいる2人を指指した。


 皇宮の彫像では、アウローラは左手に、レクシアは右手に、フルーレのような細い剣を下げて並び立ち、2人の間で剣先を触れ合わせるポーズをとっていた。

 はしっこの2人、どちらも女性っぽいし、剣に見える斜めの線も描かれている。


「いやいやいや、それは平仄ひょうそくが合わんのです。

 アウローラとレクシアは四代皇帝の娘、2人が生まれた時は、ゾーディア卿はとっくの昔に亡くなってるですので、ゾーディア卿が遺した絵ならば、描かれているはずがないのです」


「でも僕も、これはアウローラとレクシアに見えるな。

 皇宮の彫像の髪型もこんな感じだったはずだ」


「むーん……

 本当に2人であるならば、この絵は偽書ということになるのです。

 空白部分に後から誰かが描きこんだということもありえますですが……」


 ヨハンナは考え込んだ。


「うーむ……

 それにしても、レディ・ウィルヘルミナが見た龍の幻影と、『ことわりの龍』、同じものなんだろうか……」


「んー……

 絵の龍の方が全然大きく見えるのと、私が見たのは、天井の近くでぐるぐるしてるだけで、こんな風にお話しにくるとかそういう雰囲気全然なかったんですけど。

 かたちとかは同じですね。

 この4色の珠も持ってたですし」


 絵の中の龍が前足?で握ってる珠を指す。


「この珠、色があるのですか?」


 よく考えたら、絵には色はついていなかった!

 2人とも白色の珠だと思ってたみたい。


「私が遺跡で見た時は、白黒どっちも、赤と青、黄と緑の珠を前足の指で握ってたです」


 指を熊手のようにして、珠を握る龍の前足のマネをしてみせる。

 ふむー?と2人は首を捻った。


「赤青黄緑……魔法の四属性の色か。

 逆に言うと、光と闇はないんだ?

 ま、属性魔法というと四属性という言い方が普通ではあるけど」


 あ?そういえばそれ、なんでなんだろう。

 四属性があって、別に光と闇もありますよっていう風に教科書には書いてあったし、みんな光と闇は別枠と認識してる。

 四属性は四大元素と対応してるわけだし、光と闇を使える者が少ないからってこともあるかもしれないけど、なんか変だ。


「いや、光と闇ならばあるではないですか。

 白龍が光、黒龍が闇を表していると考えれば」


「「あー……そうか!!」」


 エドアルド様と声が揃う。


「じゃあ無属性魔法は?」


 ふと疑問に思って言ってみると、2人はなんかピキってなった。

 せっかく綺麗に収まりかけたところに、なんかごめんってなる。


 うまく収まる手がかりになるようなこと、なにかないかな……


「えっと……

 エドアルド様のプリズム、無属性の魔力が真ん中の白い光として出てきて、その周りに、四属性の魔力が出ますよね。

 あれだと、光と闇はどこに出るんですか?」


「いや、せっかく君で光魔法が計測できると思ったら、属性魔法の部分が投射される前に、プリズムが溶けてしまったし。

 そうだな、溶けなかったらどう見えるんだろう……

 四属性の外に、光と闇が出てくるのか?」


「そのプリズム、どういうものなのでしょう?」


 エドアルド様の魔力判定プリズムを見たことがないヨハンナはが首を傾げる。


 無属性の魔石を円錐形に磨いた「プリズム」を手のひらにのっけると、天井に向かって魔力が光となって投影されること、まず真ん中に誰にでもある無属性魔力の量を表す白い光が円で出て、その外側に4つの属性魔法を表す赤青緑黄の光が出るのだとエドアルド様が説明する。

 ついでに、エドアルド様の魔力パターンや他の人の例とかも書いてみせた。


 ヨハンナは眼を伏せて考え込む。


 妙な間が空いた。


 ヨハンナは微動だにしない。


 あまりに動かないので、徹夜明けだし、もしかしてこれ寝てるんじゃ?てエドアルド様と顔を見合わせたところで、ヨハンナはくあっと眼を見開いた。


「無属性魔法と光魔法は、実は同じものではないのですか?」


「「はいいいいいい!?」」


 エドアルド様と私はのけぞった。

 なに言ってるの!?

 そんなの、魔導理論ひっくり返るし!?


「この二頭の龍、魔獣ではないと思うのですよね。

 『ことわりの龍』という名からして、魔導エネルギーのありかたを象徴するような存在、一種の神のようなものではないのですか?

 魔獣が、自らを倒す魔力を人に授けるなどいくらなんでも意味不明ですし」


「それは……そうかもだけど……」


 ヨハンナはまたペンのお尻で龍を指した。


「仮にこの龍が魔導エネルギーの象徴であるならば、白と黒、すなわち光と闇という対立軸があり、その下にそれぞれ四つの属性が存在しているということになるのです。

 エドアルド様のプリズムにこの構造を写すとしたら、


 光属性を持つ者は真ん中に白が、その周囲に四色が現れる

 闇属性を持つ者は真ん中に黒が、その周囲に四色が現れる


 というかたちに投射されるのが自然ではないかと思うのです」


 言われてみると、それならしっくり収まる。


「それに、無属性イコール光属性ならば、ミナの魔力の謎が、まるっと説明がつくのです。

 ミナの魔法は『意思の力』で発動させてるのでしょう?」


「たし……かに。

 子供の頃、『ライト』はどう考えても光魔法だろうに、無属性だと言われて、なかなか飲み込めなかった覚えがあるな……」


 考え考え、エドアルド様が頷いて、え!?それでいいの!?ってなる。


エドアルド「いいねありがとうございます! 僕の『プリズム3.0』での魔力判定方法については、『第一部 16.いきなり愛称呼びはない(1)(2)』をご参照ください!」

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☆★異世界恋愛ミステリ「公爵令嬢カタリナ」シリーズ★☆

※この作品の数百年後の世界を舞台にしています
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