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なにはともあれ、ミナが無事でよかったのです

 公爵家に着いた。

 門を潜ってからが長くてびっくりだったけれど、本館の車寄せで降りると、立派なお髭をはやした執事さんが出迎えてくれた。


 大きな扉を潜って入ると、大階段のある大きな玄関ホール。

 レリーフで飾られたマホガニーの壁、花や乙女をモチーフにした繊細な彫刻が施された階段の手すり、シャンデリアの輝きなんかで、重厚さとキラキラ感が凄い。


 既にご家族はお食事中ということで、私たちはなにか軽く食べて、明日の朝、公爵閣下にご挨拶するということになった。

 エドアルド様は、着替えて父上に報告してくるとおっしゃって、いったん別れる。

 

 2階に上がり、あちこちに肖像画やら領の風景の絵がかけられた廊下を延々延々歩いて着いたのは、居間のような部屋と寝室がつながった客間だった。

 お風呂もついている。


 居間にはソファセットだけでなく、書き物をするための机や棚もあって、仕事をしながら中長期で滞在する人用の部屋っぽい。

 寝台は一つだったけど、私とヨハンナなら詰めれば6人は寝られそうだから一緒で全然余裕だ。

 窓には執事さんが「封印」をしっかりかけてくれる。


 入れ替わりに、侍女の方がやってきて、お茶を淹れてくれ、お召し替えをと部屋着と寝間着を出してくれた。

 ヨハンナの分は、新しい下着も用意してある。

 制服を出してくれれば、明日着て帰られるようにしてくれるとのことで、手稿にへばりついているヨハンナを無理くり着替えさせた。


 すぐにメイドさんが洗い物を取りに来る。

 ヨハンナは、サンドイッチとなるべく純度の高いチョコレート、コーヒーをポットで欲しいと言い、できれば古エスペランザ語、なければエスペランザ語でも帝国語でも良いのでとにかく辞書、あと薄手の白手袋を借りられないかと頼んだ。

 こんなこと、いきなり来たおうちで勝手に頼んでいいんだろうかってびっくりしてたら、普通に「承りました」と承られて、公爵家すごいってなる。


 頼んだものが来るのを待たずに、ヨハンナは書き物机に座り、手稿になるべく触らないように広げて、ノートに鉛筆であれこれ走り書きし始める。


 神殿で手当は受けたけど、まだ腕がズキズキする。

 隙間時間があったら勉強しなくちゃと単語帳だけは持ってきたけど、色々ありすぎて開く気になれない。


 ソファでほげーと脱力していたら、頼んだものが普通に来たので、ドアのところで受け取った。

 古エスペランザ語とエスペランザ語、帝国語と3種の辞書をヨハンナに渡し、ソファのテーブルにサンドイッチなんかを並べる。


 ご飯は?て聞いたけど、「後でいただくです」と生返事。

 コーヒーをカップに注いで、チョコと一緒に執務机に持っていこうとしたら、コーヒーをこぼしたらえらいことになるので、そっちに置いておいてと言われた。


 一人で、もそっとサンドイッチとスープを食べた。


「……えっと、私、手伝えることってあるかな?」


 そっとヨハンナに聞いてみる。


「んー……特にはないのですが」


 ヨハンナは顔を上げて、眼鏡をくいっとすると私の顔をじっと見た。


 ちょちょいと手招きされる。

 そばに行くと、座ったままのヨハンナにむぎゅっと抱きつかれた。


「言うのを忘れていたですが、なにはともあれ、ミナが無事でよかったのです」


「ヨハンナ……」

 

 そうだ、私も言うのを忘れてたことがあった。


「今日はありがとね。

 火事だー!って叫んでくれて。

 あれで学院長も警護の人もすぐ来てくれたし、やっぱヨハンナって頭いいなって思った!」


 むぎゅーって抱き返し、頭をなでなでしながら言う。


「くふふ……うちの母に教わったのです。

 『たしけて〜』だけでは、帝都ではスルーされがちなのです」


「そなんだ。

 私の母さんは、枢機卿を蹴飛ばしたキックを教えてくれたよ!」


「なるほろ……

 恐るべし、ミナママなのです!」


 えへへって笑う。

 そういえばエドアルド様、あれから私を見る目がちょっと怯えがちな気もしないでもない。


「リングア・グノシアは、どんな感じなの?」


「にゅむ、それが単純な換字式暗号ではないようなのですよ。

 AをB、BをCという風に一対一で文字を置き換えて暗号化したものなら、よく出てくる組み合わせを探していじくってると、わりとイケるのですが、どうも違うのです。

 ダミーを混ぜてるくさいので、ダミーを特定できると後は早いかもですが」


「ほえー……」


 そこまでもうわかってるのか。


「ま、全力でやるしかなのです。

 この手稿はミナの魔力に反応して出てきたですので、光属性持ちに役に立つことが書かれている可能性もあるですからね」


 きらんと眼鏡を光らせて、ヨハンナは言う。


 そっか。

 私のことも考えてくれてたんだ。


「ありがとう、ヨハンナ」


 もっかいむぎゅーってすると、きゅふふとヨハンナは照れた。


アルベルト「ヨハンナ嬢、俺よりミナの役に立ちそうなんだけど……」

ギネヴィア「叔父様、安全安心のGLタグがついているから、今後2人の仲が進展しても大丈夫ですのよ?」


いいね&ブクマありがとうございました!

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☆★異世界恋愛ミステリ「公爵令嬢カタリナ」シリーズ★☆

※この作品の数百年後の世界を舞台にしています
― 新着の感想 ―
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