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……お前ら、なんか知らんが、青春しやがって……

話の切れ目の関係で、薄めですみません><

明日は、ファビアン殿下のお昼ごはん回ですので…!

 幌馬車は街道へ向かう道からそれて、生い茂った草木が迫ってくるような狭い道に入り、ぽくぽくと進む。


 ヒルデガルト様がリュートを出してくださって、みんなで流行りの歌を歌ったりした。

 ファビアン殿下も歌うのがお好きとかで、めっちゃ入りたがったけど、ヨハンナに「前を見るです!!」と怒られる。


 気の毒がったヒルデガルト様は、御者席にリュートを持っていき、リクエストをうかがった。

 ファビアン殿下は、「せっかくなら2人で歌える歌がいい」とおっしゃって、お2人は「パパパの歌」という有名な歌劇の二重唱を歌われた。

 ほとんど「パパパ」と言ってるだけの、コミカルな歌なのだけど、ヒルデガルト様もファビアン殿下も良いお声の上、初めてとは思えないほど息が合っていて、皆、聞き入ってしまった。


 そんなこんなで小一時間、ファビアン殿下とヒルデガルト様の背中越しに見える風景が変わった。

 開けたところに出たみたいで、湖?池?とにかく少し下ったところにきらめく水面が見える。


「ここか!ここだな!

 みんな、着いたぞー!」


 殿下は嬉しそうに叫んで、馬を止めると飛び降り、みんなを下ろした。


 降りてみると、小さな湖といっていいのか、大きな池といっていいのか、結構広い水面が広がっている。

 水際には小さな桟橋があるけど、ボートの類は見当たらない。

 だいぶ古びているけれど、レンガ造りの東屋や、馬をつなぐ杭もあった。

 崩れてるけど、石を組んだ炉の名残まである。


 湖のまわりの草地には、色とりどりに野の花が咲いている。

 水面に春の緑が映え、はるか遠くの山々はまだ白銀のように輝く雪を頂いている。

 ちょっと絵にしたくなるような風景だ。


「こんな素敵なところが学院の近くにあったんですね!」


「父上から聞いたんだ。

 友達とここで釣りをしたり、昼寝をしたのが、学院時代一番楽しかったって」


「そうなんですか」


 父上、ということは、もちろん皇帝陛下のことだ。

 ギネヴィア様はいつも「陛下」とおっしゃるし、個人的なエピソードを話されたことは一度もないので、ちょっとびっくりする。

 ギネヴィア様はファビアン殿下のことを「陛下の思し召しが深い」っておっしゃってたけど、息子として可愛がられてるってことなんだと腑に落ちた。


 ファビアン殿下は、自分でカゴやら敷物やらクッションやらどんどん運び出す。

 慌てて、東屋の蜘蛛の巣をざざっと払い、ベンチに積もった落ち葉なんかもかたし、敷物をベンチやテーブルに敷くのを皆で手伝った。


 一段落ついたところで、デ・シーカ先生が魔法を使ってヤカンを水で満たし、そのまま湯を沸かしてお茶を淹れてくださった。

 淹れ方はめっちゃワイルドだけど、外で飲むお茶、美味しい!

 先生は、ほんとは茶を淹れさせるために俺を呼んだのだろうとぶつくさおっしゃって、皆で笑った。


「デ・シーカのお茶は美味しいからな!

 んー、少し早いが、昼飯の支度を始めるか?」


「ですね!!」


 バスケットの中身、超気になる!!


「じゃあ、枝を拾いに行く係と、下ごしらえする係に分かれよう」


「「「「はいいいい!?」」」」


 町育ちのヨハンナ、エレン、アデル様がびっくりして声を上げる。

 焚き火をして、なにかこの場で作るってことみたいだ。

 私もてっきりお弁当だと思っていたので、ちょっとびっくり。


「じゃあ私、枝拾いやりまーす!」


 村にいた頃は、隙間時間に焚き付けになりそうな枝を拾っておくのが基本だったので、手を挙げる。

 ここのところ雨は降ってなかったし、なんとかなるだろう。

 結局、私、ヨハンナ、ヒルデガルト様が枝拾い係になり、一応デ・シーカ先生が監督?としてついて来てくださることになった。




 どういう枝がよいのか、ヨハンナとヒルデガルト様に一応説明しながら草地に落ちている枝を拾っていき、木立の間に入った。

 ヒルデガルト様は、領地の館で暮らしていたとおっしゃっていただけあって森に慣れているようで、さくさくと皆で枯枝を集めていく。


「ていうかごめんね。

 好きな人の話、言ってなくて」


 他の2人と少し離れた時に、こそっとヨハンナに謝った。


「ん、無問題なのです。

 ぶっちゃけ『夜中に手紙鳥がガンガン来て、ミナがめっちゃにまにましてたりするんだけど、なんか聞いてる?』とかリーシャに聞かれたことはあったのです」


「ぶふぉッ」


 リーシャにも言ってなかったんだけど、そっか、同室だとバレるよね……


「か、かかか帰ったら、リーシャに謝っておかないと……」


「まー……今後気をつければ、そこは特に言わなくてよいのでは?

 というか、念の為確認しておきたかったですが、相手は既婚者とかではないのですよね?」


「は!? 違う違う!!

 婚約とかもしてないし人だし!!」


「ならよいのです」


 ヨハンナは一安心とばかりに、にゅふにゅふ頷く。


 なにを斜め上の心配してるんだヨハンナ!!と思ったけど、「手紙鳥」でやり取りしてるってことは、魔導研究所の人かもって察しがつくだろう。

 研究所には既婚者もそれなりにいるし、もしかして道ならぬ恋に嵌ってるから言えないのかもと心配してくれてたんだって気がついた。


「なんか……ありがとね」


「なに言ってるですか。

 水くさいのです」


 ヨハンナは照れ照れになって、てしてしと私の二の腕を叩いてきた。


「かわいい!

 ヨハンナまじきゃわわ!!」


「なに言ってるですか!」


 さらにヨハンナがてしてししてくる。

 かわいすぎるでしょヨハンナ!!


「……お前ら、なんか知らんが、青春しやがって……」


 2人で騒いでいると、デ・シーカ先生に、生温かい眼で言われてしまった。


「パパパの歌」(モーツァルト「魔笛」)

Roth and Le Roi perform "Papagena / Papageno!"

https://www.youtube.com/watch?v=87UE2GC5db0


ブクマ、評価頂戴しました。ありがとうございます!

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☆★異世界恋愛ミステリ「公爵令嬢カタリナ」シリーズ★☆

※この作品の数百年後の世界を舞台にしています
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[一言] 言い出すまで見守ってくれる友達……本当の友達やんけ……尊いんじゃぁ〜〜(^ω^人)
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