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28.お姫様だっこで微妙顔(2)

 後は表彰式かなとがやがやしていたら、司会の生徒が「2人の戦いをもう一度見たくないかー!?」とか煽りはじめる。

 会場が絶対見たい!てなったタイミングで、運営委員の生徒が机くらいの大きさの台をアリーナの真ん中に持ってきた。


 なんぞ?と思ってたら、鎧を外した姿で再登場したお二人が台に近づき、肘を台につけて、手を握り合わせる。


 司会がささっと近寄って、カウントダウンを始める。


 アームレスリングだ。


 さっきの試合に劣らないほどの熱戦で、特にウィラ様ファンの応援の絶叫で、耳がどうかなりそうな騒ぎだ。


 ウィラ様も相当粘られたけれど、ミハイル様が勝った。


 司会がミハイル様に勝利のコメントを求める。


「自分は体格や力でまさっているのに、ウィラ殿に2年間、どうしても勝てなかった。

 今日、この試合を見てくれた者の中には、騎士を目指しているのに身体が大きくならないと悩んでいる者もいるだろう。

 もし、なかなか大きくならなくとも、ウィラ殿を目標に、自分の特徴を活かし、練度を上げていくことに取り組んでほしい」


 騎士系の生徒達が皆、頷く。

 ウィラ様も頷いて続けられた。


「魔法もそうだな。

 魔力が多くなくとも、研究に励み、使い所を工夫すれば、立派な働きができる」


 ウィラ様はまっすぐエドアルド様の方をご覧になっておっしゃった。

 エドアルド様がぱああっと笑顔になって、大きく頷かれる。


「2年間、本当にありがとう」とウィラ様が、ミハイル様に握手を求められ、お二人は堅く両手で握手された。


 ウィラ様が「ミハイル、とお呼びしてもよいだろうか」とお訊ねになり、「もちろん」とミハイル様が頷かれる。

 ミハイル様が「ウィラ、とお呼びしてもよいだろうか」と返されてウィラ様も「もちろん」と頷かれた。


 場内、割れんばかりの拍手だ。


「麗しい……麗しすぎる!! 今この瞬間に死んでも我が生涯に一片の悔い無しなのです!」と、ヨハンナが超号泣しながらメモを取っていた。


 ……なんかそのうち、似たようなシーンがある「薄い冊子」が出回りそうだけど、お2人とは関係ない騎士道物語だろうから、まあいいか。



 というわけで今度こそ表彰式に移る。

 学院の歴史や、著名な騎士となった卒業生の在学中のエピソードやらが延々続く、やたら長い学院長の挨拶があり、皇族として学院長達とアリーナで観戦されていたギネヴィア様から、弓術部門、女性部門、総合部門のそれぞれ3位まで表彰楯が授与される。


 さて解散となって、がやがやと動き出した中……


「エドアルド!」


 ウィラ様がアリーナから観客席最前列のエドアルド様に呼びかけた。


「このあいだ、遺跡でミハイルに抱きとめてもらっただろう?

 あれを私もやってみたいんだ」


「いま!?」


 生徒も先生もまだほとんどいる。

 なんだなんだと注目が集まり始めた。


「例の件、それで手を打とう」


 ウィラ様の表情は私の位置からは見えないけれど、エドアルド様が、あう、と引きつった顔になる。


 ああああああ、アラクネ戦の舌入れ事件のことかー!!!


 その後仲良くされているご様子だったから、エドアルド様の謝罪を受け入れたのだろうと思っていたけれど、違ってたらしい。


 エドアルド様がいらっしゃる観客席の高さは、私が渡り廊下から落ちた時よりも高い。

 普通の建物なら3階分近くはあるんじゃなかな……

 遺跡で飛び降りられた時と同じくらい?

 木の床だから、よっぽど打ちどころが悪くない限り死にはしないと思うけど、普通に落ちたら普通にぽっきりいって大怪我だ。


 エドアルド様はあたりを見回し、覚悟を決めると、「じゃあいくよ!」と下に来たウィラ様に声をかけた。


 片手で手すりを掴んで身軽にぽーんと飛び越え、身体を縮め、背中から落ちていく。


 ウィラ様は立ち位置を合わせながら両腕を差し伸ばし……


「……よし!」


 無事、落ちてきたエドアルド様をお姫様だっこで抱きとめた。


 かっこよすぎて、エドアルド様が羨ましすぎてウィラ様ファンの子から悲鳴が上がる。


 ウィラ様は、「私だってできると思っていたんだ!」と意気揚々と、トロフィーを掲げるように、エドアルド様を持ち上げて周りに見せる。

 なかなか下ろしてもらえなくて、無理やり抱き上げられた猫みたいにむすっと微妙顔をしているエドアルド様との対比が面白すぎて、めちゃめちゃ笑った。

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☆★異世界恋愛ミステリ「公爵令嬢カタリナ」シリーズ★☆

※この作品の数百年後の世界を舞台にしています
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