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1.まさかのピンク髪ツインテですわあああああ

 なんとか間に合った。

 廊下の大きな鏡で前髪を直して、お茶会が開かれている応接室に案内してもらう。


 ギネヴィア様のお茶会に招かれるのは2回目だ。


 編入してすぐの時にお招きいただいて、なんで私を呼んでくださったのかと聞いてしまった。

 ギネヴィア様はフオルマという古い国の王太子と婚約していて、将来、王妃としていろんな人と接する練習のために、週3回、貴族平民関係なく生徒を招いてお茶会をしているんだそうだ。


 私はまだ礼儀作法が全然わかっていないし、めちゃくちゃ緊張したけれど、色々教えていただいてとっても楽しかった。


 あ。そういえば……


 先月末にギネヴィア様が婚約解消されたって聞いたんだった……!


 王太子に好きな人ができちゃって、そういうことになったらしい。


 それってギネヴィア様が振られたってことだよね。

 どうしよう、お茶会がお通夜みたいになってたら。

 やばい。私、そうでなくても空気が読めないのに……


 とか焦っていると、応接室に通されてしまった。


「あらウィルヘルミナ。

 ごきげんよう」


「ふおおおおおおお! まさかのピンク髪ツインテですわあああああ!」


 前髪は眉で揃え、豊かな巻き毛のつやつや黒髪を下ろした、人形のように可愛らしいギネヴィア様が声をかけてくださったところに、かぶせるように丸眼鏡をかけた小柄な女子生徒が叫んだ。

 栗色の髪をおさげに編んで、焦げ茶の眼がくりっとしたかわいらしい感じの子なんだけど……

 ギネヴィア様はにこにこと眼鏡の子を見守っているからいいのかな?


 ピンク髪って私のこと、だよね??

 確かに赤みがかった淡い金髪で、光の加減によってはピンク色っぽく見えるけど……「ついんて」ってなに?


「ヨハンナ、落ち着け」


 濃い緑の髪をポニーテールにしたお姉さまが、呆れたような顔で丸眼鏡の子に声をかける。

 この方は編入したての私でも知っている。


 3年生のウィラ様。

 180cm近い長身で、騎士を目指す男子にも負けないほど、武勇に優れた辺境伯の跡取り娘だ。

 切れ長の眼に金色の瞳が印象的なしゅっとした顔立ちで、めちゃくちゃ美人な上にめちゃくちゃ男前でもあり、学院一女子生徒にモテている。

 寮で同室のリーシャが熱狂的なウィラ様ファンで、隙あらばウィラ様の素敵エピソードを語ってくるので、春季の武術大会での圧倒的な活躍から、平民の女子生徒が貴族の男子生徒にウザ絡みされているのをスマートに助けた話からなにから、私も覚えてしまった。


 テーブルにはもうお二人いらっしゃった。


 輝くような赤毛を巻いてハーフアップにしたお姉さまと、神秘的なミッドナイトブルーのストレートの髪を背に流したお姉さま。


 赤のお姉さまはあでやかなタイプ。

 ……あと、少し身を乗り出したらテーブルに載りそうな勢いのおっぱいが凄い。


 青のお姉さまはクールな美人タイプ。


 どちらもタイプは違うけれど綺麗な人だ。

 お二人とも貴族、しかも良いところの令嬢っぽい。

 確か、ウィラ様と一緒に談笑してるところを見かけて、美人の友達は美人なんだなって思った記憶がある。


 そそくさと1つだけ空いている席に着こうとして、しなきゃいけないことを思い出した。


「本日はお招きありがとうございます。

 ベルフォード男爵が養女、ウィルヘルミナと申します。

 この秋に編入した1年生です。

 皆様、よろしくお願いいたします」


 微笑みを浮かべて、制服の裾をつまんで、右足を斜め後ろに引き、左足を軽く曲げたカーテシーってポーズを取る。

 軸がちょっとぐらついたけど、笑顔でごまかす。


 初対面の上位貴族がいる時は、こうやってカーテシーつきで自己紹介をすると、ホストが席を勧めてくれる流れになるのでそこで座りなさいと、自己紹介なしにいきなり座ってしまった前回、ギネヴィア様に習ったのだ。

 まだまだダメダメだけど、前回よりはマシだったはず!!


「こ、このカーテシー…!!

 不慣れだけど、愛嬌でごまかしちゃえ☆みたいなお茶目パワーがMAXだわ!!

 完璧じゃん!鉄板じゃん!満貫じゃん!もう絶対ヒロインじゃんなのです!」


 あばばばば!

 丸眼鏡の子に色々バレてる。

 ……怒られてるわけではなさそうだけど、なに言ってるかちょいちょいわからない。


 ギネヴィア様が苦笑を浮かべて、とにかくどうぞ、と空いていた隣の席を示してくれた。


「は。失礼しました。

 空前絶後に人跡未踏なヒロイン降臨でついテンションが上りすぎ……

 わたくし、ゲンスフライシュ商会長が娘、ヨハンナ・ゲンスフライシュと申します。

 授業がかぶってないのでお初ですが、ウィルヘルミナ様の同級生なのです」


 眼鏡をくいっと直しながら、ヨハンナ様が自己紹介してくれる。

 1学年がだいたい200人、8つのクラスに分かれているから、同じ学年でも知らない人の方がまだまだ多い。


 でもヨハンナ・ゲンスフライシュって名前、聞いた覚えがある。


 ……編入した時に廊下に張り出されてた、春季の成績リスト1位、しかも筆記試験科目は全教科満点の人だ!

 1位の人ですよね満点凄いですね!と言うと、でゅふふと照れられた。


「私はウィラ・パレーティオ。パレーティオ辺境伯の長女だ。

 ヨハンナはなんというか、……本の世界に住んでいる子なんだ。

 あまり気にしないでやってくれたまえ」


 ヨハンナ様の向こうに座るウィラ様も、自己紹介してくれる。

 はう……落ち着いたアルトのお声もかっこいい……


 続いて、赤のお姉さまがゲルトルート・ジンメル侯爵令嬢、青のお姉さまがエミーリア・デュルクハイム伯爵令嬢と名乗った。

 ギネヴィア様が2年生、ウィラ様、ゲルトルート様、エミーリア様は3年生で同学年。

 この学院は、4月始まりの春季秋季の2季制、16歳で入学して18歳で卒業だから、ギネヴィア様以外の3人のお姉様方は最終学年ということになる。


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☆★異世界恋愛ミステリ「公爵令嬢カタリナ」シリーズ★☆

※この作品の数百年後の世界を舞台にしています
― 新着の感想 ―
[良い点] 最初はヒロインが転生者なのかなと読み始めてみたら……これはヨハンナが転生者なのかな? しかも悪役令嬢っぽいギネヴィアは既に婚約破棄しているし…… ヨハンナが色々と暗躍しているのかな(。´…
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