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17.『だがそれがいい』と言わせていただくのです!

 夜、アルベルト様に、体調を崩したと聞いたけど、大丈夫ですかって「手紙鳥」を出したけれど、お返事はなかった。

 「手紙鳥」は戻っては来なかったから、ご覧にはなったのだと思うけど……


 翌日、ヨハンナと生徒食堂でお昼にミートボールスパゲティを食べながら、エドアルド様に魔法を習うことになったこと、ウィラ様と取り持ってほしいと言われたことなど話した。


「かわゆい系と見せて実は腹黒貴公子という展開ですか!

 これも一つの王道なのです」


「そのへんはよくわかんないけど、エドアルド様、見かけほど『精霊様』って感じじゃないと思うよ……

 て、こんなこと話して、がっかりさせた?」


 話してしまってから、エドアルド様に萌え転がってたヨハンナが幻滅しやしないかと気になった。


「『だがそれがいい』と言わせていただくのです!

 魅了持ちを疑われるレベルで美しい少年が腹黒!しかも婚約者のウィラ様に執着!

 ウィラ様が男性として意識された暁には、溺れるように寵愛する溺愛コースまったなし!

 王道王道アンド王道なのです」


 いい笑顔でヨハンナは親指を立てた。

 心配しなくてもよかったっぽい。


「……ん?『魅了持ち』てなに?」


「魔法の一種なのです。

 眼を合わせて特定の対象に魔法としてかける邪眼の一種と、魅了体質と言うべき、無差別に周囲の人を魅了しまくるのとあるのです。

 邪眼は禁呪扱いですね。

 かけられたら術者の言いなりになってしまいますから」


「ほへー……

 禁呪って、使ったらダメってこと?

 使ったらどうなるの?」


「普通に、邪眼を使えないようにして牢屋なのです」


 無情にヨハンナは言った。

 使えないようにするって、どうするんだろう……ちょっと聞くのが怖い。


「ええええ……

 わ、私、大丈夫かな!?

 知らずに使っちゃいけない魔法使って牢屋送りになったら辛い……」


 自分でもよくわかんないうちに魔法が発動してしまって、魔獣を倒してしまったのだ。

 またあんなことがあるとは思わないけど、ちょっと不安……


「んー……禁呪って言われてるのは、魅了、洗脳に代表される精神操作系ですね。

 色々やっかいなので、発動そのものが法律でNGとされているのです。

 諜報機関などではこっそり使われているのではないかとも思いますが、たとえ上の命令で使ったとしても、表沙汰になったら術者がヤバヤバです。

 あ、そもそも魔法で器物を壊したり人を傷つけたら、普通に罪に問われるですが」


「それはそうか」


 とりあえずそんなことをするつもりはないので、大丈夫なはず……


「それで、ウィラ様とエドアルド様のこと、どうしたらいいのかな……」


 ウィラ様は、儚げなエドアルド様は辺境伯の任に耐えられないだろうから、婚約解消してほしいと強く思ってる。

 エドアルド様はウィラ様ラブなので、もちろん結婚したい。


 ちなみに昨日はあれから、エドアルド様の怒涛のウィラ様語りがやばかった。


 初めて会った時、将来の婿の来訪にテンション爆上がりした辺境伯(スーパーミハイル様みたいな人らしい)がエドアルド様とお兄様をまとめて高い高いしまくって2人とも眼を回しかけてしまった。

 その時、ウィラ様が辺境伯を叱って止めてくれ、優しくて、凛としたご様子を好ましく思ったそうだ。


 2回目に会ったときはウィラ様のお母様のお葬式の時。

 身も世もなく嘆かれているウィラ様を見て、この方をお守りしたいと強く思ったそうだ。


 この頃までは、お兄様のもとにウィラ様がお嫁入りされる雰囲気で、将来のお義姉様として歓迎しつつ、なにか心に引っかかっていた。

 夫人が亡くなった後、辺境伯は後添いを娶ることを拒み、結局一人娘となったウィラ様にエドアルド様が婿入りすると決まる。

 それを知らされた時の、天にも上るような嬉しさで初恋と自覚したこと、婚約式でのウィラ様のお美しさ、帝都での初デートと話は延々続き……


 危うく夕ご飯を食いっぱぐれるところだった。

 ほんとギリギリだった。

 これ絶対、ことあるごとに語りすぎて周りの人に「はいはい」とスルーされるようになっちゃって、思う存分語れる相手を探していたパターンだ。


「ゲルトルート様、エミーリア様の先例からして、婚約解消にこだわる必要はないと思うのです。

 エドアルド様には辺境伯の責務を担う十分な資質があることを、ウィラ様にお示しいただければよいのではないでしょうか。

 示せなかったら、ウィラ様を諦めていただくということになるですが」


 ヨハンナの考えは、まずはエドアルド様のご要望を聞くという方向のようだ。

 ウィラ様を溺愛しまくるエドアルド様が見たいという欲がちょっと透けて見える気もしないでもないけど、2人が納得して将来を選べればよいのだからいっか。


「具体的にはどういう……?」


「要は魔獣を討伐しまくれればよいのです。

 ウィラ様と迷宮にでもいって、無双していただければよいのではないでしょうか」


「迷宮って、魔獣がやたらめったら湧く古代遺跡、だったっけ?」


「それですそれです。

 学院からでも、歩いて1時間半くらいのところに一つあるのです。

 もともと、その遺跡から古代魔法文明を研究するために魔導研究所が建てられ、後に学院も作られましたので」


「え、そうなんだ!

 学院が先で、おまけで研究所を作ったのかと思ってた」


「入学式の時に学院長が延々語ってたのです。

 ……そっか、ミナは編入なので、あの悪夢の入学式に出てなかったのですね……」


 よっぽど話が長くてしんどい式だったのか、ヨハンナは恨めしげな顔になった。


「えーっと、それじゃ明日の放課後、ウィラ様に乗馬を教えていただくからその時にお話すればいいかな。

 ウィラ様がOKだったら、明後日、魔法の練習の時にエドアルド様にお話するっと……」


「いい感じなのです!

 ミナも同行することになるでしょうから、装備の用意もしないとですね」


 やっぱりそうなるのか。


「あそこは踏破されまくって、そんな強い魔獣はいないのですが、結構歩くですからね。

 春季に遠足に行って大変だったのです……」


「ウィラ様、エドアルド様、私の3人は嫌だなぁ。

 土曜にエミーリア様とオーギュスト様と私の3人で帰った時めっちゃ辛かったし。

 ヨハンナも行こうよ……」


「え〜……体力全然ナシナシ民にはきっついのです」


 ヨハンナは露骨に厭な顔をした。


「最悪、私がおんぶするから!!

 だって、流れによっては2人にした方がいいことだってあるでしょ?

 もう一人いれば、二手に分かれましょってできるじゃん」


「それは否定できないところですががが。

 そもそも、エドアルド様のお姿を眼にすると、つい萌え転がってしまう問題もあるのです。

 私は『美青年こそ男性美の至上』派なのに、エドアルド様の可憐さが強烈すぎていかんともしがたく……

 ままま、同行者は要検討ということで先送りなのです」


 一度行って相当懲りたのか、ヨハンナの意思はめっちゃ固い。

 困った。なんとか口説き落とすネタを考えないと……

評価&ブクマ、ありがとうございます!


ショタっ子大好き貴腐人のクラリッサ様がどっかの園遊会で、エドアルド君(10歳)を見かけて鼻血噴いてぶっ倒れてしまい、すわ魅了持ちかとエドアルド君がガチで検査されたというエピソードを入れようかと思いましたが、巧く入りませんでした…

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☆★異世界恋愛ミステリ「公爵令嬢カタリナ」シリーズ★☆

※この作品の数百年後の世界を舞台にしています
― 新着の感想 ―
[一言] 今回の魅了やら邪眼やらの話は…… アルベルトの眼鏡はやはり(。-`ω-) そう言う事なのかなぁ(。´・ω・)?
[一言] いっぱいいっぱい気になる点、伏線に布石、あった気がするのです、が! 後書きのクラリッサ様エピソードで腹筋崩壊、色々な事が頭からぬけました!
[良い点] 魅了の話が出たのは今後の伏線だろうかなどと、ついつい勘ぐってしまいます。スーパーミハイルな辺境伯もインパクト強くて気になりました。エドアルド様の止まることを知らない熱愛っぷりもいいですね。…
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