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16.いきなり愛称呼びはない(2)

 魔石が輝いて、円錐の頂点からまっすぐ天井に、細い光が伸びた。

 光は天井に円形に広がって、ゆっくり回転しながら広がっていく。


 不思議な模様が天井に現れた。

 真上にまっすぐ伸びた光を中心に、白く輝く円が広がる。

 白い円の直径は1メートルくらい。


 円の外側は、ふるふると動く赤・緑・青・黄の4色で縁取られているのだけど、青だけ幅がかなり太く、1.5メートル近くある。

 黄がそれに次いで、青の半分くらいかな?

 赤緑青黄の4色で塗り分けた円の真ん中に、半分くらいの大きさの白い円があるという形から、赤と緑が欠け、黄色が半分欠けているようにも見える。


「無属性が真ん中の白、外側の赤が火、緑が風、青が水、黄色が土を表すんだ。

 僕は水属性がそこそこ、あとは少し土がある程度だから、こういう感じになる。

 あと、無属性もそれなりにあるから、真ん中の白い部分が広い。

 公爵家の人間としてみると、ぱっとしない感じかな」


 青の部分を指しながら、エドアルド様は説明してくれた。

 平均的な平民だと、無属性魔法を表す白い円が半径30cmくらいの大きさで投影されるそうだ。

 ていうかこれ、属性と魔力量を一気に測れてめっちゃ便利なのでは!?


「円錐の尖ったところからかなり強い光が出るから、顔に向けないようにね」


 ほい、と渡される。


 はい、と手のひらに乗せてみた。

 見た目よりも全然軽い。


 びゃーっと強い光の柱が天井に伸びる。

 天井に光の円が広がっていく。

 天井の大きさを越え、壁の上の方まで輝きが広がり……


「レディ・ウィルヘルミナ!?」


 エドアルド様が大声を出して、はっと私は手元を見た。

 ずぶずぶと、円錐型の魔石が手のひらの上で沈んでいく。

 溶けて、私の身体の中に……入ってきてるの??

 生温かい、どろりとしたものが触れているような感触がある。


 怖い!と反射的に手を振ると、溶け残った円錐の先がコロコロと床に転がった。

 溶けかけた魔石の名残か、きらきら光る粒が散る。


「ああああああああ、三日三晩かけてこの形に削ったのに……!!」


 エドアルド様が円錐の先を追いかけて床の上に這い、どうにか拾ってそのままがくりとうなだれた。

 まさかのエドアルド様お手製だったの!?


「な、なんかその………すすすみません………

 あたためるとか、魔力を吸うとか、そんなこと全然考えずに、手のひらにただ乗せただけだったんですけど……!」


 この展開、学院でも魔導研究所でもやらかしてるけど、やらかす度になんて言っていいのかわからなくなる。

 いたたまれなくなって、90度というか120度くらいに頭を下げて思い出した。

 こういう時こそ正座だ!

 びゃっと床の上に正座して、額が床につくくらい、深々と頭を下げた。


 エドアルド様は、身体を起こして三角座りになると、「作り方はもうわかってるんだし、気にしなくていいよ」と投げやりに手を振った。


「そうか、魔導球3つ割ってるって、こういうことなのか……

 いや、これは僕が甘かった。

 下手なことを教えて事故でも起きたら大変なことになるし、これだけポテンシャルがあるのに魔法を怖がられてもかなわないし、慎重にならざるをえないな……」


 そこまで言って、はっとなにか思いついたようにエドアルド様は顔を上げた。


「違う違う違う!

 君が今ぶっこわしたのは、辺境伯領の戦力を底上げするために3年かけて開発した、僻地でも手軽に魔力測定ができる新型魔力測定結晶『プリズム3.0』!

 僕のウィラ様への思いの証なんだ!!」


「ええええええ……」


 さっきと違うことを叫ばれて腰が引ける。

 そんなこと言われても、言われたとおりにしただけなのに……

 半泣きになっている私に、エドアルド様は膝で這い、要するにはいはいしてるくせにキラキラオーラ全開で迫ってきた。


「僕にわびる気持ちがあるのなら!」


「……あるのなら?」


「ウィラ様との仲を取り持ってくれたまえ!!」


 はぁ!?


「取り持つって……お2人はもう婚約してるじゃないですか!?」


 全力で突っ込むと、しょんもりとエドアルド様はうなだれた。

 くっそかわいい……


「……あの方は僕のことを、かわいい弟、なんなら『妹みたいなもの』としか思ってないんだ……」


 うつむきがちに、床に指先でぐるぐる円を描きながら、言う。


 あざとすぎるでしょおおおおおお!

 わかっててやってるでしょおおお!

 でも……でも、ちょう可憐……!


 確かに、傍から見ても、ウィラ様はエドアルド様のことを大事に思われてるけど、男性として意識されているかといえば、「されてない」方に2人を知る人全員が賭けると思う。

 賭けが成立しない。


 そもそも、自分と結婚したら、エドアルド様の人生が大変なことになるからって、婚約解消を申し出てくれるようにして欲しいってウィラ様に言われてる。

 裏を返せば、エドアルド様には辺境伯の役目は重すぎる、無理だと思ってるってことだよね……


 エドアルド様は、こちらをちらっと上目遣いに見た。


 あざとすぎるでしょおおおおおお!(2回目)

 わかっててやってるでしょおおお!(2回目)


「……前向きに善処させていただきますです……」


 かくりとうなだれて、呟くしかなかった。

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☆★異世界恋愛ミステリ「公爵令嬢カタリナ」シリーズ★☆

※この作品の数百年後の世界を舞台にしています
― 新着の感想 ―
[一言] ミナが逆に取り込まれてるんですけど( ;´Д`) エドアルドに約束させられてしまっているんですけどぉ(;゜Д゜) エドアルドは実はミナが婚約破棄の刺客と勘付いているのでは(。´・ω・)? …
[良い点] 呪文がお洒落でお湯を沸かす時に使いたくなりました。魔石や魔具の説明もとても分かりやすかったです。盗聴防止はミナの侍女候補勧誘の話をするためだったのでしょうか。エドアルドさまのきゃわわ素振り…
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