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15.これって『真実の愛』のためなんですか?(1)

 日曜の夜にやばいやばいと予習復習に励んで、ギリギリに起きた月曜。

 午前中の授業を終えたところで、ギネヴィア様の侍女がランチを一緒にどうかと呼びに来た。


 悪役令嬢連合協議会の緊急ミーティングかな?と思いながら、食堂の個室に行くと、ギネヴィア様と……エドアルド様がお待ちだった。

 昨日の今日でいきなり!?とびっくりしながら、慌てて自己紹介をして席に着く。


 間近で見ても、エドアルド様はやっぱり「精霊様」だった。

 毛穴とかないんじゃないかという勢いのすべすべお肌に、ほのかに憂いを秘めたような紫の瞳。

 ……この方、おヒゲとか生える日は来るんだろうか……


 だいぶ学院のキラキラに慣れたと思ってたけど、ギネヴィア様のキラキラとエドアルド様のキラキラで、もうまばゆくて仕方ないのですががががが!


 席は3つしか用意がない。

 ウィラ様達やヨハンナは?と思っていたら、さっそく前菜が運ばれてきた。

 いつも個室では一皿ずつ持ってくるのに、スープとメインも一緒に並べられて、あれ?ってなる。

 戸惑っていると、ウエイターが下がったタイミングで、侍女も退出した。


「ミナ、週末はお疲れ様でした」


 なにがなんだかわからない私に、召し上がりながらどうぞ、とギネヴィア様は微笑んでくださった。

 とりあえず前菜の鳥のガランティーヌを食べ始めるけど、エドアルド様がいらっしゃるところでエミーリア様の顛末の話をするのもためらわれるし、ありがとうございます、と頭を下げたものの後が続かない。


「レディ・ウィルヘルミナは、昨日、ウィラ様と図書館にいらしたよね。

 ウィラ様とは仲が良いんですか?」


 優しく微笑んで、エドアルド様が訊ねた。

 お声は思っていたほど高くはない。

 アルトのウィラ様より低いくらい?

 明るいけど深みがあって、すっごく癒やされる感じの声だ。


「あ。ええと……

 私、もともとは農家の娘で、春に領主様の養女になったところで、貴族の方が普通にできることがなんにもできないので……

 ウィラ様に乗馬を教えていただくことになってるんです」


 ものすごく言い訳がましい説明をしてしまった。


「なるほどね。

 乗馬は僕も好きだよ。

 そのうち、一緒にできるといいね」


 こちらを見て、にっこり微笑まれる。

 キラキラの奔流で、内心ひああああってなったけれど、ギネヴィア様、お姉さま方の令嬢修行のおかげか、「ええ、是非」とにっこり返しできた。


 ギネヴィア様!私これでも頑張ってるんです!


 しばらく、ウィラ様の話が続いた。


 お二人は子供の頃に婚約されたそうだ。

 元はと言えば、エドアルド様とウィラ様の曽祖父様同士が学院で大変仲良くなり、子供ができたらぜひ結婚させようと盛り上がったけれど、お祖父様の代では双方男の子ばかり、でもお祖父様同士も婚約者ぐるみで仲良くなって、次代こそはと盛り上がったけれど、お父様の代でも巧く合わなかったそうだ。

 例によってお父様同士も大親友となり、辺境伯家にウィラ様、公爵家にエドアルド様のお兄様、次男のエドアルド様が生まれた。

 ようやく年齢の近い男女の組み合わせができ、ウィラ様9歳エドアルド様6歳の時に婚約ということになったらしい。


 そんなわけだから、子供の頃から年に1度はパレーティオ辺境伯領へ遊びに行ったり、ウィラ様を帝都にお招きしたりと、交流を深めて来たそうだ。

 エドアルド様、ほんとは私より1つ下だけれど、1年だけでもウィラ様と学院で過ごしたいと飛び級で入学されたそう。


 その割には学内で一緒にいらっしゃるところをあんまり見たことがないような、と思っていると、ギネヴィア様が学院ではどうしているのかお訊ねになった。

 エドアルド様が入学されてすぐ、お二人が立ち話をしていると、かなりの見物人が出てしまい、ウィラ様が大変恥ずかしがられて、学院では週一度、個室でランチを一緒に食べるくらいにしているとのことだった。


 なるほど。

 ウィラ様お一人でもきゃいきゃい群がられがちなのに、「精霊様」も一緒じゃ、そりゃ通りがかった人は足を止めちゃうよね……


「ところで今日お招きしたのは、ミナの魔法の勉強の件なの。

 魔導研究所の担当の方が体調を崩されてしまって」


 3人ともそろそろ食べ終えるというあたりで、ギネヴィア様はさらっと話題を換えられた。


「え!? アルベルト様、どうされたんですか!?」


 フォークを取り落としそうになった。

 アルベルト様、どうしちゃったんだろう。

 土曜の夜の出来事のせいなんだろうか。

 ギネヴィア様は、私を落ち着かせようとするように、ふんわり微笑まれた。


「いえ、そんな大変なお病気ではないそうよ。

 ただしばらく、お休みということになるから……

 その方が復帰されるまで、エドアルドにミナの面倒を見てもらおうという話になったの」


 はいいいいいい!?

 普段なら叫んでしまうところを、どうにか飲み込んだ。

 魔導研究所の研究員や、学院の先生に引き継がれるのならわかるけれど、なんでエドアルド様に!?


 びっくりしてる私に、エドアルド様は頷かれた。


「殿下、場所は学院の実験室でよろしいでしょうか」


 私が来る前に、エドアルド様に話は通っていたらしい。

 そちらでよろしいでしょう、とギネヴィア様は頷かれる。


 あれ?私が魔導研究所に行くことになったのって、こっちで先生に見てもらうのが難しいのと、あっちなら万一魔力暴走が起きても防御設備があるからって言われてたけど、学院でもいいの?

 今まで聞いていたことと違う。


 なにをどう聞いたらよいのかわからなくてまごついていると、とりあえず今日の放課後に実験室で今後の詳細を相談するということになり、エドアルド様は、午後の授業の準備があるのでお先に、と席を立たれる。

 私は、デザートが来るからと引き止められた。

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☆★異世界恋愛ミステリ「公爵令嬢カタリナ」シリーズ★☆

※この作品の数百年後の世界を舞台にしています
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