表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

203/235

メモが追いつかない!

「えええええっと……

 皇家とのつながりでしょうか?」


「正解。同じ家格で家の古さも同等なら、皇家とのつながり、具体的には現在の皇帝に血が近い方を優先。

 同じ親等であれば、皇子から血を引いている者が優先で、後は母親の立場や皇位継承権は考慮せず、生まれた順で判断します」


「ああ……それで、皇族方は男女別にナンバリングして、名前に併記するんですね!」


 アルベルト様は、14代皇帝の第23皇子だから14th-m23。

 ギネヴィア様は、15代皇帝の第8皇女だから15th-f8。

 ナンバリングは『皇族譜』の一覧表に書かれているし、『貴族年鑑』の貴族の系図の注記にも入っている。

 どの皇帝の何番目の子の血を引いているか、手軽に示すための工夫だったのか。

 母親が皇妃かどうかとか、皇位継承権を持ってるかどうかは関係なく、生まれ順だけっていうのは逆にびっくりだけど、そのへんの要素を入れると半端なく面倒になる予感しかしない。


「そう。それでも決められない場合ならば、血の重なり具合を見て判断します。

 古い家なら、複数の皇子・皇女を経て、父系でも母系でも血がつながっていますからね」


「さすがにそこまですれば、普通は差が出ますよね??」


「現在は、完全に同格と言える組み合わせはありません。

 過去にはありましたが」


 ジェラルディン様は、ヨハンナ並みの立て板に水で、実際に発生してしまった例をいくつか挙げた。

 メモが……メモが追いつかない!


「では、レディ・ウィルヘルミナ。

 A伯爵は古い領地貴族ですが、政府の役職にはついていない。

 B伯爵は比較的新しい宮廷貴族で、現在は外務副大臣。

 この場合はどうしますか?」


「ええええええ……っと!?

 家の新旧と、宮廷での役職のどちらを重くとるかってことですか??」


「そうです」


 爵位と皇帝とのつながりの強さで判断するのが基本なのだけど、政府での役割とか個人が挙げた功績、大公家・公爵家など有力な家とのつながりなどなどの要素も考えなければならないのだ。

 爵位と血筋以外の部分については、招いた側の立場によって評価は異なる。

 たとえば、上のお題だと、招いた側がA伯爵と同じく家柄が古い領地貴族ならA伯爵を優先するけど、息子が外交官だったりしたら、やっぱりB伯爵を優先したい。

 でも、B伯爵を優先したら、当然A伯爵は「うちの家の方が古いのに!」ってなるので、正解は「一緒に招いたら、不満が出そうな組み合わせは避ける」だった。


 こんなの、一発でわからなくても、仕方ないよね!?


 ついでに言うと、当人同士・家同士の確執、派閥、改革派か保守派かといった価値観の違いなどなどで、混ぜるな危険!ってなる取り合わせはたくさんある。

 そのへんを踏まえてお客を呼び、それなりに納得できる順序で並んでもらわないと、秒でとんでも晩餐会になってしまうのだ。


 とまあ、最初にいくつか架空の問題を解き、それから実際にある家を例にして、順番の組み方を教わっていった。

 学院で知り合った方々の家名も、ちょいちょい出てきた。

 単に「伯爵家の方」「子爵家の方」「男爵家の方」としか思っていなかったけれど、色々色々あるんだと知って、なんだか微妙な気持ちになってしまった。


「晩餐会のホストって、大変なんですね。

 友達同士でも、互いに序列をつけなければならないだなんて。

 舞踏会やガーデンパーティなら、並んで入場なんてないのに……」


 つい、ぼやいてしまった。

 いくらなんでも複雑すぎる。


「ホストもゲストも、そちらの方が気楽な面はあるでしょう。

 どんなに気をつけても、揉め事になる時はなりますしね。

 では、なぜ晩餐会をわざわざ開くのだと思いますか?」


「ええと……まずは、もっとも格式の高いもてなしになる、ということですよね」


 ジェラルディン様は頷いてくださるけど、「正解」は頂戴できない。


 バルフォア公爵家の晩餐会を思い出しながら、必死に考える。

 舞踏会ではいろんな人と挨拶して、おしゃべりも結構するけど、基本的には立ち話だ。

 晩餐会は、着席して2時間近くかけて食事をするから、席が近い人とじっくりお話できる。


「……舞踏会よりも確実に、つなぎたい者同士を引き合わせることができる、ということですか?

 席を向かいや隣同士にするとかで」


 アルベルト様と私の結びつきが、最初は腑に落ちていなかったフランシス卿は、初めてお会いした叙勲式の舞踏会では、軽くご挨拶しただけで、あとは言葉も交わさなかった。

 バルフォア公爵家の舞踏会でも、特にお話していない。

 でも、6月の晩餐会では、向かいの席だったから、ある意味逃げ場もないし、前から気になっていた私の魔力についてお訊ねになった……ってことだよね?


 ジェラルディン様は、軽く首を傾げた。


「引き合わせたい者がいるから、晩餐会を開くとは限らないでしょう。

 『互いの絆を、より深めるため』と言った方が、より多様な状況に対応できるのでは?」


「あああああ……そ、そうですね」


 焦りながら、頷いた。


「あの、1つ質問をしてもよろしいですか?」


「どうぞ」


「私が婚約した時は、殿下の後ろ盾であるバルフォア公爵家が私の養家であるベルフォード男爵家を招いて、晩餐会を開いてくださったのですが、同時期に、跡取り娘のアデル様が婚約したフィリップス子爵家は、ガーデン・パーティで婚約披露をしたんです。

 私達の場合は、皇家とベルフォードは親戚付き合いをしないことになっていますから、大々的なお披露目をしなかったんだと思うんですけど、晩餐会と舞踏会、ガーデン・パーティの使い分けって、どうなるんでしょう?

 晩餐会が一番格式が高くて、次が舞踏会、ガーデン・パーティは一番カジュアルなのかな?と思うんですが、それで合っていますか?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

☆★異世界恋愛ミステリ「公爵令嬢カタリナ」シリーズ★☆

※この作品の数百年後の世界を舞台にしています
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ