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実は、エドアルドもだ

 ついでにオーギュスト様は、令嬢の褒め方をもう少しどうにかしましょうとにこやかにおっしゃり、例としてエミーリア様を褒め称えた。

 頭の先から足元まで、つらつらつらつら美辞麗句が流れ出て、「もっとおっしゃって!」と扇で口元を隠して笑っているエミーリア様以外びっくりだ。


 ポイントとしては、たとえ褒めるつもりでも、お胸についてなにか言うのは危険すぎるのでNG、眼は褒めるべきだが、唇を褒めると下心があると解釈されやすいので避けた方が良い、とのことだった。

 顔立ちや身体そのものよりも、着こなしや所作、ダンスをなるべく具体的に褒めた方が喜ばれるとか。

 エミーリア様は、髪型、ドレス、アクセサリーなど、その日、気合を入れたところに触れてもらえると嬉しくなるものだと補足してくださった。

 女性同士で褒め合う流れになることもありそうなので、速攻メモしておく。


「あの……

 わたくしも、オーギュスト様に褒めていただいてみたいのですけれど……」


 こそっとミカエラ様がおっしゃった。


 もちろん!とオーギュスト様はめっちゃミカエラ様を褒め称えた。

 白馬の王子様系キラキライケメン貴公子に、髪もお顔もドレスも仕草も褒められまくって、ぽわぽわぽわわわっとミカエラ様は赤くなられる。


 それにしても、エミーリア様を褒めた時と、表現が全然かぶってない。

 決り文句を繰り返しているのではなく、その人その人の個性をよく見てその場でおっしゃってるということだ。

 アルベルト様も辺境伯閣下もたまげていた。


「やっぱり帝都の貴公子は素敵だわ……

 来た甲斐がありました」


 褒めまくられの余韻にうっとりと浸っているミカエラ様に、オーギュスト様が笑って手を差し出した。


「レディ・ミカエラ。

 そうおっしゃるのはまだ早いですよ。

 ぜひ、一曲おつきあいください」


 キラキラ大増量でオーギュスト様がお誘いされる。


「嬉しい!

 でもよろしいんですか?

 オーギュスト様はエミーリア様と婚約されているのでしょう?」


 憧れのキラキラ貴公子にダンスに誘われて、ミカエラ様はぱああっと笑顔になったけれど、戸惑ってオーギュスト様とエミーリア様を見比べた。


「いやいやいやいや。

 普通は婚約者がいても、他の女性と踊るものです。

 もちろん、婚約者を放って何曲も踊るのは好ましくないですが」


 婚約者がいたら踊りませんというのが帝都の舞踏会の常識だと思われたら困るとばかりに、オーギュスト様が強めにおっしゃる。


「そうですわ。

 婚約者以外とは踊らないだなんて、そんな変わり者はアルヴィン殿下くらいですもの」


 エミーリア様に睨まれて、アルベルト様が首をすくめる。


「実は、エドアルドもだ」


 パレーティオ辺境伯が無の表情でおっしゃって、えええええええ!?ってなった。


 エドアルド様、辺境伯領で何度か舞踏会に出席されているのだけれど、ウィラ様以外とは全然まったくさっぱり踊らないのだそうだ。

 もちろん、挨拶や会話はしっかりされていて、女性陣とは主にウィラ様の話で盛り上がっているらしい。


「それで問題になっていないんですか?」


 びっくりしたアルベルト様が訊ねる。


「なっていない。

 皆、踊らないのが自然なことのように思っている。

 今日も踊ってはいないんじゃないか?」


「確かに、レディ・ウィラ以外の令嬢と踊っていらっしゃるところはお見かけしていませんね」


 オーギュスト様が頷く。

 アルベルト様は、「もしかして俺はエドアルドに弟子入りすべきなのか?」とかぶつくさ言っている。


「どうしてなのです?

 婚約者以外とも踊って、社交をする方がよいのですよね?」


 少々混乱気味のミカエラ様が、皆にお訊ねになった。


「エドアルド様は、学院でも『ウィラ様が好きすぎる系貴公子』と言われている方なので……」


 としか言いようがない。


 辺境伯閣下が深々とため息をついた。

 仲が悪いよりは良い方がいいのだろうけれど、ああも溺愛ダダ漏れだと男親としては微妙なお気持ちなのだろう。

 

「ままま、そういう例外もありますが。

 基本は踊るものなんです」


 オーギュスト様が脱線した話を元に戻し、そういうことならと、ミカエラ様はオーギュスト様に手を預けた。

 凝った裳裾を引いて、ミカエラ様はフロアの真ん中に堂々と向かう。


 このあたりは、おっとりされているようで、やっぱり大公家の方だなと思った。

 私だったら、変に注目を集めてしまったら、なるべくすみっこでこそこそしてしまいそう。


 曲の途中だったけれど、するっと組んで、お二人は踊りだした。

 

 ミカエラ様、とにかく姿勢が綺麗で、踊りだすとお美しさが増し増しだ。

 またオーギュスト様のリードが良いから、どんどん笑顔になられて、もうキラッキラ。

 周りも注目しはじめる。


 良かった!

 あのままミカエラ様がお帰りになるようなことにならなくて。

 オーギュスト様とエミーリア様にほんと感謝だ。




 2人を見守りながら、辺境伯閣下とエミーリア様は、帝都の貴族社会の動向やらあれこれお話されていた。

 初耳のことが多くてほえーっとお聞きしているうちに、曲が変わって、は!?ってなる。

 おととしの学院舞踏会の夜、ギネヴィア様のお使いでアルベルト様に届けた「ベルジェの卵」が奏でたワルツだ。


 アルベルト様を見上げると、同時に気づいた様子で私をご覧になった。

 この曲で、アルベルト様と踊りたい。


「ミナ、踊りたいのなら踊っていらっしゃい。

 また後で会えたら、話しましょう」


 もじもじしていると、エミーリア様が勧めてくださって慌てて立ち上がった。


明日、2回更新で完結です!

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☆★異世界恋愛ミステリ「公爵令嬢カタリナ」シリーズ★☆

※この作品の数百年後の世界を舞台にしています
― 新着の感想 ―
[良い点] 仕草や気合を入れてオシャレしたところを褒める…本人の頑張りが美に繋がったところを認めてもらえる…すぎょい…オーギュスト様、すぎゃい…そして語彙力もすばら…。
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