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幕間 塔の研究室

 翌日の放課後、魔導研究所の研究室。


 今日は、魔力循環の練習だ。

 アルベルト様と向かい合い、ペンくらいの棒の端と端を持って、魔力を巡らせる。


 実はこれ、学院で1回だけ受けた魔法実習の授業で最初にやろうとして、大☆失☆敗した練習だ。

 自分の中で魔力を巡らせるというのは、領主様に習って、一応出来るようになってはいた。

 授業で、まず他の人と手をつないで2人の間で巡らせる練習をしなさいと言われ、生徒同士、手近な人と組になって始めているところに、「あなたはこっちへ」と呼ばれて、先生と手をつないだら、先生がいきなり倒れてしまったのだ。


 なんでも私は、相手の魔力を「吸いすぎる」らしい。

 自分ひとりで巡らせるのも、魔力を効率的に使う修練には良いらしいけれど、他の人と巡らせた方が、より効果的だということで、アルベルト様の魔力を吸いすぎないよう、魔力を通しにくい物質で作られた棒を挟んで試してみている。


 今のところ順調で、アルベルト様の魔力?なのかな?とにかくなんか温かいものがちゅるちゅると左手から入る感覚があり、心臓、丹田、頭を経由して右手から出ていってる。

 本当は脚にも回らないといけないのだけれど、一人の練習でもまだ出来てないので……


「というわけで、また大変なことになってるんですよ。

 伯爵令嬢が人前に口に出来るレベルの、私への悪口ってなんかありますかね……」


 一度巡らせ始めると、勝手に巡り続けるので、ぶっちゃけ暇だ。

 お買い物イベント発生の顛末をアルベルト様に説明してご意見をうかがってみた。


 またわけがわからないことになってるなとアルベルト様は笑って、ふうむ、と考え込まれた。


「『魔導球を3つも割りやがって!』とかかなぁ……」


「そ、それはもう言わない約束じゃないですかああああ」


 魔力量測定用装置の魔導球、学院のを1つ、研究所のを2つ、私は割っている。

 領主様に請求が行くことはなかったから良かったけど、お高いものらしい。

 ていうか、結局いまだに測定できてないのよね。


 アルベルト様は、魔力の量が多すぎるのもあるけれど、光属性の魔力の性質そのものが今の測定方法に向いていないんじゃないか、次は誰もいない荒野みたいなところで思いっきり魔法をぶっ放して、その結果から推測した方がいいんじゃないかとおっしゃっている。


 といっても、村祭の時に襲ってきた魔獣をどうやって倒したのか全然覚えてないし、その時放ったはずの魔法をどうやってまた出せばいいのか、まだ見当もつかないんだけど。


「『光属性だからっていい気になって!』」


「それはアリかもですね!

 特別扱いで学院に入ったのに、まだ『ライト』と『手紙鳥』しか使えてないくせに、とか?」


 自分で言って、魔法の修行がなかなか進んでないのを思い出して、ちょっとしょんぼりする。


 「ライト」は明かりをつける魔法で、領主様に習った。

 いかにも光魔法っぽいけど実は無属性だ。

 魔力の低い平民でも、しっかり練習すれば手元を照らす程度の明かりなら出せたりする。

 私も打てるようになったのはよいけど、目がどうかなるかと思うくらい眩すぎたので、この間アルベルト様に指導してもらって、普通の明かりレベルに落としたり、遠くに出せるようにしたところだ。


 村祭りの騒動以来、魔力はめちゃくちゃ多い(はずだ)し、レアな光属性だし、貴重な存在だと色んな人に言われているけど、全然結果が出せてないのよね……


「う。魔法絡みはやめよう。

 学院の指導力と、俺の分析能力の問題になってしまいそうだ」


 瓶底眼鏡をかけたアルベルト様も少しうつむいた

 あれ、今ちょっと、普段見えない眼が見えたような……?

 群青の瞳に金色が?と思った瞬間、は!とアルベルト様が顔を上げた。


「『この下剋上ヒロイン気取り!』

 これでどうだ!!」


「それです!!! アルベルト様、さすがです!!!」

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☆★異世界恋愛ミステリ「公爵令嬢カタリナ」シリーズ★☆

※この作品の数百年後の世界を舞台にしています
― 新着の感想 ―
[一言] もう、将来のロマンスグレーに賭けるしか…というか、段々と燻銀に成っていく僕を見て、とか。 それにしても研究所のほのぼの雰囲気いいですね。しかし下克上ヒロイン気取りってw ピンク髪をツインテ…
[良い点] 今日のディナーは牛肉の赤ワイン煮でしたか、いいですね。元気に飛び出すマッシュルームが目に浮かび微笑ましかったです。エミーリアの「実は」展開も否定され、当日のリハーサルも入念に行われています…
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