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まずは、魔羆200頭倒してから、出直してきてください??

 特に私の場合、下剋上ヒロイン小説のあるある場面のように、知らない人に囲まれて詰められる事案が発生しないとも限らないそうだ。

 まーたまたと笑ったら、エミーリア様だけでなく、オーギュスト様も真顔だ。


「ええと……それって、私が毒婦的ななにかだと思いこんでどうこうってことですか?」


 そうそうそう、とエミーリア様が頷く。


「だから、ダンスを申し込まれてもよく知らない方は避けた方が無難ね。

 悋気りんきが激しい妻や婚約者がいたりして、誤解を受けると面倒だから」


「ええええええ!?

 婚約が内定している令嬢にも、ダンスを申し込んだりするのか?」


 アルベルト様がびっくりしてる。


「ダンスは社交の手段ですから、婚約していようが結婚していようが普通にパートナー以外の相手とも踊りますよ。

 同じ相手と何曲も踊ると、流石になにをしてるんだってことになりますが」


 オーギュスト様が、まずは落ち着けとばかりに説明してくださった。

 それでもアルベルト様、「手をつなぐし、身体も触れるじゃないかー!」とぷんすかしている。


「でも、少女小説みたいな嫌がらせってほんとにあるんですか?」


「ベルフォード男爵家は、まじめにコツコツというお家柄でしょう?

 上位貴族の分家でもないし、影でミナに嫌がらせをしても、自分の方が爵位が上だから泣き寝入りするだろうって勝手に思い込む人がいてもおかしくないと思うの」


「ええええええ……

 皇家がお認めになっていることに逆らうって、ヤバくないです?」


 確かに、とエミーリア様とオーギュスト様は苦笑した。


「もちろん、皇家の意向に表立って逆らうのは公爵家であろうが大公家であろうが、普通にマズいわ。

 でも、実家に害を与えるぞと脅して黙らせれば良い、バレなければ問題ないと考える人もいるのよ」


「なるほろ……」


 どす黒いな貴族社会!


「私としても、レディ・ウィルヘルミナとなるべく離れないよう殿下にはお勧めしたいですね。

 高位の男性がついていれば、ああいう手合いはなにもできませんので」


 オーギュスト様もさらっと「手合い」とかおっしゃる。

 なんだか実体験に基づいてそうな雰囲気だ。


「……もしかして、エミーリア様もそういう目に遭われたことがあるんですか?」


「わたくしは、化粧室で軽く囲まれて、嫌味を言われたくらいかしら。

 あ、化粧室でそういう事案が発生しがちではあるから、お化粧直しをする時も一人で行かないようにね。

 声をかけてくれたらつきあうわ」


 オーギュスト様が「あの時はすまなかったね」とエミーリア様に軽く頭を下げる。

 エミーリア様は、大したことではないからという風に手を軽く振って微笑みを返された。


 そういうものなのかとドン引きしながら、アルベルト様と「わかりました」と頷いた。


 それからエミーリア様とオーギュスト様は、速攻噂は回るだろうけれど、どうして婚約に至ったか、ぐうの音も出ないような理由も一緒に回れば、無駄な憶測を抑制できるだろうとおっしゃった。


「殿下はレディ・ウィルヘルミナとなぜ婚約されたのですか?」


 オーギュスト様がアルベルト様に直球でお訊ねになる。

 え?とアルベルト様が首を傾げた。


「なんでって言われても……

 ミナが大好きだから、結婚してもらうとしか……」


「ふひゃああああ!?」


 直球に直球を返したような説明に、ふっしゅふしゅになってしまう。

 アルベルト様は私の手をむぎゅっと握り、「だってそういうことだろ?」とか追い打ちかけてくる。


 エミーリア様とオーギュスト様は、めっちゃ生温かい眼で私達を眺めていた。


「……大変ご馳走様でしたとしか申し上げられませんけれど、その説明では、ミナが殿下をたぶらかしたと思われるのを防げませんわ」


「そうだね。

 ここはレディ・ウィルヘルミナの魔力と実績を強調する方向がいいんじゃないかな」


「それが一番わかりやすいかしら」


 オーギュスト様の提案に、エミーリア様が頷く。


 でも、アルベルト様は納得いかなさそうで、「魔力が凄いから、ミナを好きになったわけじゃないのに。ミナが可愛いから……いやそれもちょっと違うか。ミナがミナだから好きなんだよな俺は」とかぶつくさ言っているけど、完全にスルーされてる。


「じゃあ念の為、絡まれた時に煽り返す練習もしておきましょうか。

 とっさに言葉が出てこないと、相手をつけあがらせてしまうもの」


「はいいいい!?」


 名ばかりとはいえ一応令嬢なのに、「煽り返す練習」ってなんぞ??


「わたくしなら初手でがっつり行くけれど、ミナはあまり抉りこむようなことは言えないでしょうから……

 『私が殿下との婚約を皇家にお許しいただいたのは、魔獣をたくさん倒したからです。

  まずは、魔羆200頭倒してから出直してくださる?』

 くらいでどうかしら」


 エミーリア様の模範演技、扇で口元を隠す、例の悪役令嬢ポーズつきだ。

 オーギュスト様、めっちゃ笑ってる。


 えええええ……と、ドン引きしていると、「試しに言ってごらんなさい」とエミーリア様に促される。

 アルベルト様も面白がって、言ってみろ言ってみろと囃し立てられた。


「わ、私がアルヴィン殿下との婚約を皇家にお許しいただいたのは、魔獣をたくさん倒したからです!

 まずは、魔羆200頭倒してから、出直してきてください??」


 アルベルト様は「必死なミナがかわゆい!ヤバい!」と、なんかのたうち回ってる。

 エミーリア様とオーギュスト様には「棒読みね」「なぜ疑問形に?」と笑われた。


 このパターン、前にもあったよ!!


いいね&ブクマ、ありがとうございました!


以下、一応書きはしたけれど、エミーリア様は過去の武勇伝とか語らないタイプだよねと削除したやりとり。

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 ちなみにエミーリア様はなんと言い返されたのかと伺ったら、


「なんであなたなんかがオーギュスト様の婚約者なのよ」


 と言われたから、


「あの方と並んで一番釣り合うのが、わたくしだからと侯爵夫人にうかがったわ。

 妻より夫の方が明らかに美しいと、あとあとこじれるもとだからと。

 確かにあれだけ麗しい方だと、並の令嬢では少々塗りたくっても追いつかないものね」


 と返したのだと、淡々とおっしゃった。


 数多の令嬢の中でも、お美しさが冴えているエミーリア様に堂々とそんなことを言われたら、ぐうの音も出ない。

 ていうか泣く。

 ウザ絡み令嬢達、乙……ほんと乙……ってなった。

 いや、絡んだ方が絶対悪いんだけど!


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☆★異世界恋愛ミステリ「公爵令嬢カタリナ」シリーズ★☆

※この作品の数百年後の世界を舞台にしています
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