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ほんとのほんとのほんとのほんとにいいんだろうか

 なにはともあれ試験だ。

 ほんとのほんとに妃殿下になってしまうのだし、ビリから何番って成績じゃ困る。

 ガリガリガリガリ勉強して備えた試験は学年ごとに分かれて、朝から晩までびっしり、計3日間行われた。

 校舎が使えなくなって、仮住まいだから仕方ないけど、最後はもう体力が限界でヘロヘロになった。


 一週間ほどして返ってきた総合点は、去年の秋学期の53位から上がって42位だった。

 私の学年は200人くらいだから、悪くはないんだけど微妙……

 一度くらいは、成績が張り出される総合30位以内に入ってみたいけれど、順位にこだわるよりも、卒業までに「コレが得意」ってちゃんと言えるようなものを見つけることを考えた方が良い気もする。


 ヨハンナはまたまた全科目満点の総合1位で、先生方は無の表情になっていた。

 解読されにくいように仕掛けを色々入れたゾーディア卿の暗号だって、一晩で解いちゃうんだもの。

 リングア・グノシアと違って、試験問題は公正に作らないといけないんだし、ヨハンナの筆記試験満点は止められないと思う。


 試験が終わって、終業式があって。

 卒業式はあったけれど、学院舞踏会はまだ先代皇帝陛下の喪中だからナシ。

 年越しの大舞踏会もナシ。

 年明けのデビュタント・ボールはあるけれど、規模を縮小して成人した令息令嬢とその家族のみとなったから、私達は関係ない。


 でも、社交シーズンではあるから、地方の領主貴族たちも一斉に帝都に集まってきた。

 ご挨拶やらなにやらのため、男爵家に戻る。

 アルベルト様は嫌がったけれど、ディアドラ様が実家とのつながりも財産だから、私は養女になってそれほど年月が経っているわけでもないし、男爵家でも過ごした方が良いとおっしゃってくださった。


 というわけで、年が明けた気がしない新年を、主に男爵家で過ごしているうちに、皇家と男爵家の折衝が終わった。

 皇太子殿下の立ち会いの下、アルベルト様とディアドラ様、男爵家の間で合意事項をまとめた覚書が取り交わされ、婚約内定が成立する。


 席上、お祝いに一杯だけ乾杯、ということで、アルベルト様は父さんの赤の貴腐ワインを抜いた。

 1本しかないし、毒味もしなきゃで量が少なくなってしまい、「味見」って感じだったけれど、皇太子殿下も「珍しい上に、なかなか美味しい」と褒めてくださって、嬉しくてちょっと涙ぐんでしまった。


 婚約発表は、予定どおり6月の終わり。

 結婚式は、来年の1月終わり。

 結婚後は、アルベルト様は魔導研究所の特別顧問になり、帝国大学で魔導考古学の研究を続けながら、当面は今の小宮殿に引き続き住む。


 私はアルベルト様の奥さんをしながら、魔導省の非常勤研究員という立場で「ライト?」の定式化などをしていくことになった。

 妃殿下も、それぞれ自分が得意なことで公務をすることが求められる。

 多くの方が慈善活動をされているけれど、私の場合、お茶会や舞踏会を開いて寄付を募るとか、慈善団体の理事をするとかより、「ライト?」をたくさんの人が打てるようにするのが、一番の貢献だよねってなったのだ。


 皇家と男爵家は、親戚としての正式なつきあいはナシということになった。

 これは、やたら人数が多い皇家と親戚としてつきあおうとすると、大貴族でもない限り冠婚葬祭の負担が大きすぎるので、下位貴族の娘が妃殿下となった場合によく設けられる条項だそうだ。


 私の持参金としては、私の地元の村外れに男爵家が持っている土地に小さな館を建てていただくことになってしまった。

 アルベルト様は村に行く時は野営するっておっしゃったけれど、実際に身一つで行けるわけじゃない。

 来月、挨拶に行くときは、村の手前の町の宿屋に泊まるとしても、村に護衛や随行する人たちと一緒に泊まれるところを作ってしまった方がいいということになったのだ。


 その他、皇族の体面を保つために支給されるお金を使える範囲とか、子供が出来た場合、私が先に死んだ場合、アルベルト様が先に亡くなった場合などなど色んな状況を網羅した取り決めが続く。


 ほんとのほんとのほんとのほんとにいいんだろうかとあうあうする暇もなく、男爵家から小宮殿に通って、アルベルト様と一緒に立ち居振る舞いとダンスの特訓だ。

 ギネヴィア様も、舞踏会に向けて陛下とファーストダンスの練習をしているとかで、以前よりお父様にお会いできる機会が増えて、嬉しそうだった。




 新年のどたばたも少し収まった頃、エミーリア様とオーギュスト様が、アルベルト様の小宮殿まで私達の様子を見に来てくださった。

 アルベルト様と私の婚約内定にはさすがにびっくりしたとおっしゃりつつ、エミーリア様は、私をむぎゅーっと抱きしめて祝福してくださった。

 オーギュスト様は無事学院を卒業されたから、結婚の準備でお忙しいのかと思っていたけれど、式は来年の春なんだそうだ。

 見聞を広めるため、出仕する前に一年ほどかけて他国の親戚などを訪問されるとか。

 コンテ侯爵家では、昔からそういうならわしがあるらしい。


 アルベルト様にお二人のことは話しちゃってたから、「このクール系超絶美人がツルポチャ上等のオジサマ好き」とか「このやたら美美しい男が学院一のイケメン貴公子とかいう生き物」みたいな感じで、お2人に引き気味だったけれど、エミーリア様もオーギュスト様も社交モンスター。

 あれやこれやとお話するうちに、アルベルト様も打ち解けられてほっとした。


 まず、アルベルト様と踊るところを見ていただく。

 ダンス自体は大丈夫だけれど、混み合ったところで踊る時に気をつけないといけないことをあれこれ教わった。

 特にリードする男性は他の組とぶつからないよう注意しないといけないし、女性は男性のリードを邪魔しないよう気をつけなければならない。


 普通の舞踏会は、夜8時くらいに開場、高位貴族ほど遅めに来るので、揃うのが10時くらい、0時を回った頃から適宜自由解散で、終わるのは明け方。

 でも今回は午後に叙勲式があって、休憩時間を挟み、早めに舞踏会が始まる変則的なスケジュールになっている。

 長丁場なので、休憩のとり方や、はぐれた時の合流の仕方も教わった。

 コルセットをつけたままだとたくさんは食べられないけれど、ずっと飲み食いしないでいるとそれはそれで気分が悪くなったりしやすいので、ちょこちょこ飲んだり食べたりした方がよいらしい。


 あと、私がアルベルト様を友達や知っている人に紹介することもあるだろうから、どうするのが良いか、ディアドラ様にしっかり確認しておくようにと言われた。

 貴族が皇族を知らないのは、かなり非礼にあたる。

 でも、アルベルト様はまだまだ顔が知られていないから、この人誰??ってなられても仕方ない。

 紹介するよう求められる前に「魔法を教えていただいている、魔導研究所のアルヴィン皇弟殿下です」とかなんとか、ちょっとぼかした形で先手を打つくらいしか思いつかないとエミーリア様はおっしゃった。

 それって先手を打ちそびれたら、面倒なことになるってことじゃ……


 さらにさらに、人に囲まれた時や話したくない人に絡まれた時の逃げ方、酔っ払いにすみやかにご退場いただく方法等々、華やかな舞踏会らしからぬ方向にお話は転がっていった。

 こんなの、礼法の先生じゃ絶対教えてくれないやつだ。

 なんか舞踏会って、もっとキラキラしたものだと思ってたんだけどどどどど……


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☆★異世界恋愛ミステリ「公爵令嬢カタリナ」シリーズ★☆

※この作品の数百年後の世界を舞台にしています
― 新着の感想 ―
[一言] これアレですね。 観光地旅先実践編:スリに遭った時、タクシーの選び方、人種差別の深度やタブー発言などなど。 美々しい歴史ある観光ガイドブックには載っていない、生の観光地での身の振り方レッスン…
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