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なぜバレないと思ってらしたの?

 そんなこんなで12月に入り、学院の武術大会が、帝国騎士団の武道場を借りて行われた。

 去年は生徒しか観戦できなかったけれど、貴族なら観覧してよしってなったから、大きな闘技場が大入り満員でめっちゃ盛り上がる。


 リーシャは今年は準決勝まで勝ち上がり、3位決定戦も激戦の上勝った!

 リーシャいわく、今年はウィラ様がご覧になっていないので、緊張しなくてよかったとのこと。

 いや、観客は去年の10倍くらいいるんだけど……


 セルゲイ様は弓術部門で安定の優勝。

 修羅場をくぐったせいか、セルゲイ様も雰囲気が変わられて、イケメン度が上がりまくっている。

 決勝戦では、的のど真ん中に全部当てて、大騒ぎになった。

 騎士団入団内定待ったなしだ。


 ウラジミール様は、残念ながら総合部門2回戦敗退。

 総合部門は、武器は近接武器ならなんでもありってことになっているけれど、さすがに槍で出場したら有利すぎて勝負にならないので、フルーレで出場されてたし。

 槍部門があったらいいのにね……

 でも、魔獣襲来での活躍以降、めちゃくちゃウラジミール様のファンが増えてて声援が凄かった。

 とりあえず、お祭りクッキーを差し入れしておいた。


 びっくりしたのがエドアルド様も出場されたこと。

 試合用の片手剣よりも短い、いつもの山刀を模した剣で戦われて、準々決勝まで進まれた。

 一回戦とか、秒で相手の腕をすぱーんと打って勝っていて、なにが起きたのか全然わからなかった。

 今年は準備が間に合わなかったけれど、来年は片手剣で挑戦するそうだ。




 さー後は試験だってなっていたら、1月末に学院の魔獣襲来に関連した叙勲を行うと公示があった。

 学院の生徒で、魔獣と戦った人はみんな授与されるので大騒ぎだ。


 私が頂くのは「カイゼリン桃花章」。

 カイゼリン勲章というのは、魔獣との戦いで功績があった女性に授与されるもので、7種の花の名前がついている。

 桃花章は上から4番目。

 ギネヴィア様には上から3番目の「カイゼリン百合章」が授与されると聞いて、なんで一番じゃないの??ってなったけれど、上2つは長年の功績を称えるもので、最初に与えられる勲章としては最上位とのとこだった。

 勲章、複雑怪奇すぎる……

 今回、桃花章を頂くのは、枢機卿鳥に炎と氷の矢をがっつりねじ込んだアントーニア様、数式魔法を組み上げたアデル様、私の3人で、私も入れていただいていいの??ってなった。


 ヨハンナも、「桃花」の次の次に当たる「カイゼリン藤花章」を頂くことになった。

 ヨハンナの場合は、授与後は呼び方が「デイム・ヨハンナ」に変わるそうだ。

 「レディ」は貴族籍を持つ女性への敬称なので、平民の女性で勲章を得た人は、「デイム」と呼ぶらしい。

 デイムになると帝国図書館の貴賓用閲覧室を使えるようになるとかで、ヨハンナはテンションぶち上げていた。


 皇家が喪中なので、年越しの舞踏会は行われないけれど、1月末だと先代皇帝の崩御から半年経つので、ほぼ喪があける。

 魔導騎士団主催の舞踏会も、叙勲式の後に大宮殿で行われることになった。


 となると、ドレスどうしよーっ!?てなる。

 

 アルベルト様はお祝いに自分が贈ろうと言い出し、ディアドラ様もおっしゃってくださり、先代バルフォア公爵からもお話が来てびっくりしたけれど、結局男爵家で作っていただくことにした。

 お申し出は大変ありがたい、嬉しいことだけれど、まだ婚約が公表されていないのだから、ドレスのような高価なものを贈っていただくいわれがない。


 嫁入り支度がすべてガラテア様のドレスの仕立直しというわけにはいかないし、ならば婚約式や嫁いだ後も着られるようなものを一着作ろうと奥様はおっしゃった。

 スタンダードなデザインのクリーム色の舞踏会用のドレスと、揃いの上着、それに付け外しのできる裳裾を作っておけば、夜の正装としても昼の正装としても着回せる。

 てことは普通のドレスよりお高いんじゃ…ってなったけれど、娘に十分な支度をするのも、貴族として大事なことだからと奥様にきっぱり言われて、お願いするしかなくなった。


 その代わりにと言ってはなんだけれど、勲章と一緒に頂戴する恩賜金の半分を、男爵家の奨学金基金に寄付させていただくことにした。

 領都にある商学校や農学校に進学したいけれど、学費や寮費を出すのが難しい家の子に勉強してもらうための基金で、男爵家だけでなく、領にゆかりのある商会などが折々寄付して運用しているものだ。

 男爵家に少しでもご恩返ししたいってずっと思っていたけれど、直接お金をお渡しするのもおかしいし、そもそも受け取っていただけない。

 恩賜金についても「これからお金はいくらあっても足りないのだからとっておきなさい」と言われたけれど、そんなことを言っていたらいつまで経ってもお返しできないままになりそうで、半分泣き落とした。

 ご恩返しというには全然足りないけど、ちょっとだけ気が楽になった。


 奥様は、エスコートの方が問題だとおっしゃった。

 婚約は内々定という段階なので、おおっぴらにできない。

 公式な舞踏会のパートナーは婚約者がいれば婚約者、いなければパートナーのいない兄弟か親戚、家族ぐるみでつきあいがある幼馴染などなど同世代の男性になるのだけれど、男爵家のお義兄にい様はお二人とも既婚だし……

 

 ディアドラ様にご相談したら、アルベルト様を呼んできなさいって話になって、呼ばれてきたアルベルト様は話を聞くなり、即、自分がエスコートすると物凄い勢いで主張された。

 婚約の公表は、先代皇帝陛下薨去の喪が完全に明けてからだけれど、すり合わせはだいぶ進んでいるので、年明けすぐにでも覚書の取り交わしをして「内定」とし、事情をそこはかとなく大々的に周囲に撒けば問題なかろうとおっしゃる。

 ほんとは、私の両親に挨拶してからという順序を踏みたいけれど、往復で1ヶ月近くかかるし、舞踏会の準備もあるわけだから、時間的に厳しすぎる。

 私の父さんと母さんには申し訳ないけれど、帝都の貴族社会に、アルベルト様と私の間に誰かが入る余地はないとさっさと示したいともおっしゃった。


 アルベルト様にエスコートしていただいて舞踏会!

 夢みたいだ!


「父と母は、男爵家の判断に従うと言っているので、順序が逆になっても許してくれると思いますけれど……

 でも、正式発表前にエスコートしていただいても大丈夫なんですか?」


 なにしろ皇弟殿下と名ばかり男爵令嬢という取り合わせだ。

 ある意味、すっごい横紙破りをするのだから、慣例は踏まえた方がよいんじゃ?って気もする。


「そうね……公表してからの方が望ましいのは望ましいけれど。

 内定を間に合わせれば、大丈夫かしら」


 ディアドラ様的には、ギリギリでアリかな?というご判断のようだ。

 

「エミーリアが、叔父様をお見かけして色めき立っている令嬢もいると言っていたから、もう決まった相手がいるのだと早めに示した方が良いかもしれませんしね。

 でも叔父様、ミナをちゃんとエスコートできます?

 ダンスや礼法の練習から、逃げ回っていらっしゃるそうじゃないですか」


 ギネヴィア様は、アルベルト様をじろっと流し目で見やる。

 アルベルト様はびくうっとなった。


「なぜバレた!?」


 両手をびゃっと変な風に挙げたまま、固まっている。


「なぜバレないと思ってらしたの?」


 ギネヴィア様は素で返す。

 礼法やダンスの教師も、ディアドラ様が手配した人達だもんね……

 当然、ディアドラ様達に報告されてるってことだ。


「練習しゅる……」


 アルベルト様、かわゆくしおれてて超かわゆい。


「だったら、学院の試験が済んだら、アルベルト様と一緒に練習してもよいですか?

 私も、ダンスや礼法、まだまだまだまだですし……」


 ディアドラ様は、「ミナは十分令嬢らしく動けていると思うけれど、アルヴィンのためにそうした方が良いわね」と頷いてくださった。


 ついでに、婚約が内定したら、親しい人には言っても良いので、エミーリア様とオーギュスト様に早めに打ち明けて、一度アドバイスをいただこうってことになる。

 礼法やダンスの教師は、人に囲まれたときの逃げ方までは教えてくれないから、とギネヴィア様は笑っておっしゃった。

 オーギュスト様ならめっちゃ慣れてそうだ。


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☆★異世界恋愛ミステリ「公爵令嬢カタリナ」シリーズ★☆

※この作品の数百年後の世界を舞台にしています
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