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お、俺は、ミナにたぶらかされたのか!?

 ヨハンナが心ゆくまで堪能したところで、ついでにちょろちょろっと他のところも見て回る。

 地下の、鬼ほど書類が積み上がっている倉庫を扉口からそっと覗かせてもらったり、エルスタルやカイゼリンなど初期皇族の資料が収められている2階へ上がる階段も見るだけ見る。

 階段の突き当りには、大きな魔石がいくつもはめ込まれてる青銅の扉があり、魔力を流して開くのだと教えてもらった。


 落ち着いた感じの休憩室でお茶をいただいて、ヨハンナを送っていく。

 道中、ヨハンナは、アルベルト様と私を例の豪華分冊本で取り上げるのはどうかと言い出した。

 豪華分冊本、後半はギネヴィア様とかエドアルド様とか、大活躍した人に一人ずつ焦点を当てる巻を出すそうで、一冊まるごとアルベルト様と私ってことになるらしい。


 なにそれ!?

 そんなの買う人いる!?

 

「皇弟殿下と農家出身の男爵家の養女が婚約など、一般の帝国貴族からしたら驚天動地の話なのです。

 皇家と親しい大公家、公爵家あたりならば、徐々に内々の事情は伝わるでしょうが、皇家から遠い家からすると、なんぞ??となること必定なのです。

 学院に子供が通っていなければ、前々からギネヴィア殿下がミナを引き立てておられたことを知る機会もないですし。

 となると、ミナを世間知らずの皇弟殿下をたぶらかした毒婦と思い込んで、ごちゃごちゃうるさいことを言い出す輩が発生するのが人の世の常なのです」


「ええええええ……毒婦!?」


「お、俺は、ミナにたぶらかされたのか!?

 ……うん、たぶらかされたな。

 めっちゃたぶらかされてる……」


 なんでかアルベルト様、ふしゅーっと赤くなって、ぶつぶつよくわかんないことを言っている。

 そのへんまるっと無視して、ヨハンナは私に向き直った。


「学院でも、ファビアン殿下と仲睦まじくされるヒルデガルト様の陰口を叩きまくった者もいたではないですか。

 直接絡んでくるのならミナの無窮のヒロイン力で粉砕すればよいですが、ベルフォード男爵家へのウザ絡みには対応しづらいのです。

 ウザ絡みが起きにくくなるよう、アルヴィン殿下とミナは結ばれるべくして結ばれ、皇家のお許しも得た公明正大なる婚約なのだと、婚約発表の前後に帝国中に知らしめた方がよいのではありませんか?」


「あああああああ……

 そっか、そういうこともあるんだ……」


 腑に落ちた。

 恥ずかしいとか言ってる場合じゃない。


「領主様と奥様にご相談しないとだけど……

 アルベルト様、この話、のっかっちゃう方向でもよいですか?」


 前のめりにアルベルト様にお願いする。

 ふごごごご……と、アルベルト様は唸り声を漏らして渋った。


「そうした方が良いのは理解できる。

 だが、魔導研究所のことをあんまりおおっぴらにするのは……」


「そのあたりは、どういう風に書けばよいのか、宮廷庁と調整しながら企画を詰めますので、ご心配なく!なのです。

 まずは殿下のお許しを頂戴できれば。

 企画が通りましたらば、半日ほどお時間頂戴して、ミナと一緒に取材に応えていただき、あとは内容確認を2往復くらいですかね。

 挿絵も何点か作らせていただきますが、取材と一緒に下絵を作成いたしますです。

 別途、ベルフォード男爵夫妻など関係者の皆様に、同じようにコメントを頂戴したいと存じますが」


 そこまで手間でもないっぽい。

 領主様と奥様のお手をわずらわせるのもなんだけど、やらずに絡まれまくるよりはマシだ。


「アルベルト様、いいでしょう?

 領主様にお許しをいただければだけれど……」


 ね?ね?とアルベルト様におねだりすると、アルベルト様はしぶしぶ頷いた。


「そうだな、そういうことなら……」


 ヨハンナがにんまりした。


「きゅふふ……!

 ついに、帝国にもリアルピンク髪ツインテヒロインが、みなぎって大!降!臨!!なのです!

 この機を逃さず、ピンク髪ヒロイン小説フェアもぶっこんでブームを仕掛けていくのです!

 まずはピンク髪ツインテヒロインの開祖であるアイリス先生に『乙女座の淡き星影』新装版発行のお許しを頂戴するとして……

 あ。ミナ、話が決まったら、新装版の帯にコメント貰えるです?」


「ええええええええ……」


 ヨハンナ、めっちゃ話を膨らませていくつもりだ!


 ついでにヨハンナは、今まで幽霊同然だったアルベルト様も「魔導考古学のアルヴィン殿下」として広く知られるようにしたいと言い出した。

 ゲンスフライシュ商会が月1で開催している身分不問のサロンで、魔導考古学についてアルベルト様が初心者向けに話すのはどうかとか、一般向け教養書のレーベルで入門書を出さないかとかぐいぐい交渉する。


 アルベルト様は、魔導考古学のようなマイナー学問に興味を持つ人はいないだろうとか、論文はたしかに書いてるけど一般向けの本とか無理だとか色々理由をつけて逃げようとした。

 ヨハンナは、一つずつ丁寧に反論し、耳慣れない学問を広めていくには、研究者だけで盛り上がるのではなく一般の人に布教するべきだと主張した。

 そうしてこそ、情報提供や調査の協力もスムーズに得られるし、優秀な若い人材も入ってくる。

 研究の予算だってつきやすくなる。

 それには、皇族であるアルベルト様が先頭に立たれるのが一番良いのだと例の立て板に水で説得した。


 あっという間にアルベルト様は押し切られ、宮廷庁とか他の研究者と相談しながら前向きに善処しまくることになったあたりでヨハンナのおうちに着いた。


「本日は諸々ありがとうございました。

 今後ともよろしくお願いいたしますなのです」


 ぴっと敬礼すると、ヨハンナは降りていった。

 またねーって手を振って、皇宮に戻る。


「……凄いな、ヨハンナ嬢は。

 あ。今後ともギネヴィアをよろしく頼むと言おうと思っていたのに言いそびれた……」


「放っておいても、ヨハンナはギネヴィア様をもりもりお助けするので大丈夫です。

 凄いんですよ、ヨハンナは……」


 なんだか今後も「男爵家のためなのです」「魔導考古学のためなのです」で、想定外の仕事ががんがん来そうな予感がする。

 というか本の帯って……なにを書けばいいの??


 魂が抜けた感じで、くへーっとお互いよりかかりあって呆けてしまった。


アイリス先生「今更また新装版!? そんなの売れるのかしら…」

ヨハンナ「3人のその後を描いた短編などおまけとして頂戴できれば、鬼売れ待ったなしなのです!」


ゲンスフライシュ商会は、特典商法を編み出した…!


いいね&ブクマありがとうございました!

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☆★異世界恋愛ミステリ「公爵令嬢カタリナ」シリーズ★☆

※この作品の数百年後の世界を舞台にしています
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[一言] 途中まで、頭のイイハナシダッタノニナー?
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