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え。あれ聞こえてたんですか……

 2人ともさっぱりしたところで、寮のラウンジのようなところで、またお茶を飲んでくっついて休む。

 そんなに広くはないけれど、大きなソファがいくつか置いてあり、部屋の隅にお茶も大きなポットで用意されていて飲み放題だ。


 しばらくして、天幕を片付けたり、あちこちに連絡を出したりしてた、エドアルド様とジャレドさんがやってきた。


 アルベルト様は、改めて、なにがどうなってこうなったのかとエドアルド様に訊ねた。


 エドアルド様は、オーギュスト様の知らせで、研究所の様子を双眼鏡で確認し、これは最悪、装置アパラートの暴発から研究所崩壊もありえると、本館の後始末は副学院長に丸投げして、急行してくださった。

 そして、アルベルト様の魅了の件をご存知なかったので、平気で私達のところに飛び込んでしまったのだ。

 傍に寄ってもエドアルド様が大丈夫だったので、これは完全に魔力がなくなって、魅了も起きなくなってるんだってなって、研究員総出で魔石をかき集めては私を魔石で埋めて魔力を吸わせまくったらしい。


「そんなことをしていたら、殿下とレディ・ウィルヘルミナから白い絹糸みたいなものがしゅるしゅる出てきて、2人の身体をぐるぐる巻きにして、繭みたいになったんですよ」


「「ほへー……」」


 アルベルト様と顔を見合わせる。


「こんな現象、誰も見たことも聞いたこともないし、なにが起きるかわからないから、帝都に運ぶのも怖いということになって、さっき申し上げたように、とりあえず天幕の中で観察してたんですが。

 繭の中ではなにが起きてたんですか?」


 逆に聞かれたアルベルト様は、私の方をちょっと見て、はて?と首を傾げた。


「なんと言うかこう……

 砂漠みたいなところにミナといる夢を見ていたような……」


 だめだこりゃとエドアルド様とジャレドさんは私の方を見た。

 期待されても困る。


「私も、アルベルト様が出てくる夢を見てたのかな……

 あ!そうだ!

 エルスタルの彫像に光弾ぶっこんだ気がします!」


 夢を見ていたような感じはあるし、ついさっきまでわりと覚えていた気がするんだけれど、もう全然思い出せない。

 エドアルド様とジャレドさんは、めちゃくちゃしょっぱそうな顔をした。


「てててていうか、私、意識があったのってエドアルド様がいらした時くらいまでなんですよ。

 後のことは、ついさっき、目が覚めるまで全然さっぱりなので……」


 アルベルト様がぼへーと首を傾げる。


「俺がまともに意識があったのは、コントロールできなくなった時までだなぁ……

 ああ、ミナが来てくれて、泣いてたのはぼんやり覚えてる。

 なんとか起きて安心させなきゃって焦ったけど、どうにもこうにも……」


「え。あれ聞こえてたんですか……」


 なにそれ恥ずかしい。


 ぼわっと赤くなってしまって、アルベルト様も赤くなって、2人でふしゅふしゅになっていると、ジャレドさんはハァァァァと盛大なため息をついて私達を睨んだ。


「そんな感じだと、報告書に書けるのは、

(1)『繭』のサンプルは回収できず、成分もなにもわかりませんでした!

(2)引きこもっていた当人は心当たりがなく、意図的に形成したものではないなどと供述しています!

 ……くらいですかね」


 供述って、犯罪じゃないんだからとアルベルト様が半笑いで突っ込んだけど、スルーされた。


「で、『繭』から出てきた時の所見としては、

(1)致命的なレベルの魔力切れを起こしたはずが、普通に喋れて飲み食いして、自力で歩けるほど元気!

(2)生傷が治ってないから時間が止まっていたかも!

(3)でもどうしてそうなったのか、まったくわからない!

(4)しかも十数メートル離れると、いきなりぶっ倒れそうになる! こいつら2人一組で魔力が巡ってるんじゃ?」


 どんどんジャレドさんの声が大きくなっていって、ひあってなった。


「こんなめちゃくちゃな報告書があるかあああああ!!

 ねーよ!

 絶対にねーよ!

 何回書き直しても、絶対突き返されるうううう!!」


 キレ散らかしたあげくむせび泣くジャレドさんを、エドアルド様が「皇家に関わるとよくあること」「レディ・ウィルヘルミナと関わってもよくあること」と雑に慰めた。

 すっかり仲良くなってるなこの人達。


「えっと、その……なんかすみません。

 あの、ところで……ギネヴィア様やみんなは、大丈夫なんですか?」


 気になっていたことを、こそっと訊ねる。


「あー……

 あの後、魔導騎士団が来てくれて、みんな帝都に移動したんだけど……」


 エドアルド様は視線をそらした。


「まず、両殿下はご無事だ。

 魔力切れからも回復されたと伺っている。

 あとの人達は……これを見てもらった方が早いかな。

 後ろの方にリストがある」


 がさがさっと、ローテーブルに置いてあった絵入り新聞を渡された。

 魔獣襲来から4日後の日付だ。


 一面は、魔獣襲来の規模がざくざく説明されていて、本館から遺跡方向を見た構図で、キング・ラシャガーズ以下地上型の魔獣が野原を埋め尽くし、空は人面鳥アルピュイアやワイバーンでやっぱり埋め尽くされてる感じの大きな絵がどーんと掲載されている。

 白黒の銅版画とはいえ、大迫力だ。

 

 いやちょっと、違和感がある。

 こんな風に魔獣が揃ってた瞬間って、絶対なかったよね??


 なんだかなぁと思いつつ、アルベルト様と2人で広げると、次の面からの見開きがすごかった。

 知りたいことは後ろの方に書いてあるって言われたのに、つい見入ってしまう。


 近衛騎士に守られて、極大魔法を詠唱するギネヴィア様とファビアン殿下の絵。

 空を例の超巨大魔法陣が埋め尽くしている。

 ヒルデガルト様のお姿は描かれていない。


 その絵とは別に、「麗しのギネヴィア殿下!」って感じのギネヴィア様の肖像画と、おすまししたファビアン殿下の肖像画。


 絵の間を埋めるように、戦いの様子がまとめられている。


 本館組の絵もたくさん掲載されていた。


 本館のバルコニーで、凛々しく指揮をとるエドアルド様の絵。

 凄い魔法を打つリュークス殿下の絵。

 きりっと弓を構えるセルゲイ様と、縦ロールをたなびかせて大魔法陣を展開しているアントーニア様の絵もある。

 馬上から華麗に火球を放つオーギュスト様の絵が、やたら大きい。


 そして数式魔法を放つ、ギネヴィア様とアデル様のお姿。

 ギネヴィア様、アントーニア様の直球すぎる魔法の名前は書かれてないあたり、新聞社の配慮を感じた。


 あとは、キラキラ感大炸裂でギネヴィア様を抱きとめるオーギュスト様の絵がどーん。


 このへんは、わりとそのまんまではあるのだけれど……


「なんですか、このクイーン・アルピュイアってやつ??」


 枢機卿鳥は、あの超特徴的な枢機卿の顔の部分はなかったことになって、やたらでかくて尾羽根が派手なだけの普通の人面鳥として描かれていた。

 通常の3倍の大きさの人面鳥が出現して、上位魔法を打ってきて大変だったと説明されている。

 枢機卿要素はゼロだ。


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☆★異世界恋愛ミステリ「公爵令嬢カタリナ」シリーズ★☆

※この作品の数百年後の世界を舞台にしています
― 新着の感想 ―
[一言] 枢機卿鳥は存在自体があれなので別なのに差し替えられた。ヒルデガルドが載っていないのはなんか思惑があるのかな。オーギュストとギネヴィア殿下のはエミーリアがオーギュストにどういった反応を示すか気…
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