第一話6話『竜を祀る村』
目的地の村の住人らしき若い男に見つかってしまった。
勇者がなんと説明したものか、と迷っていると、
「私たちは西のスーバリ王国から来ました。大陸を守護する竜ヴァルト様に会いに来たのです」
と、ミルが即座に説明してくれた。
勇者たちの身分を隠した上で、嘘にならない目的をよく思いつくものだ。
実際のところ、守護竜ヴァルトには会えればいい、程度にしか考えていなかったが。
ミルの説明を聞いた上で深く頷いた村人はこう言った。
「そういうことでしたら、私たちの村に案内いたしましょう。守護竜を信仰する者でしたら、誰であろうと歓迎します」
予想してはいない話だったが、第一印象は悪くなさそうだ。差しあたっての問題は何とかなったと考えていいだろう。
村に入ってからの言動も気にしなければならないので、まだ少しも気は抜けないが。
村に入ると、意外にも勇者たちよそ者に対して村人たちの反応は好意的だった。恐らくだが見回りの若い村人が選別役として旅人を見極め、そこから他の村人がどのように対応するのかを決めているのだろう。
勇者たちを歓迎する村人たちはしきりに守護竜について勇者たちに語った。
ヴェルドニア大陸を守護する竜は、現在は守護竜ヴァルトのみであるが、かつては5頭いたという。これに関しては、ヴァルト自身も多くは語らなかったが、かつてヴェルドニア大陸を5頭の竜が守護し、数百年前ヴァルトを除く4頭の竜は自らこの大陸を去り、現在はヴァルトのみであると実際に聞くことができた。
この村ではヴァルト単体ではなく、5頭全て合わせた守護竜そのものを崇拝しているようだ。
『竜はすばらしい。人間を超越した圧倒的な力を持っている』
『4竜がこの大陸を去ったのは、竜が総力を挙げずとも問題ないほど人間が力を付けたからだ』
『大陸を去った4竜は今もこの大陸を見守っているのだ』
『守護竜ヴァルトは風の竜と言われているが、数日前の突風も関係があるのだろうか』
村を挙げての歓迎の宴も落ち着いた頃、勇者たちが最初に出会った村人たちが話しかけてきた。
「そういえばあなたたちはスーバリ王国から来たんですよね?数日前スーバリ王国の騎士団が村に立ち寄りまして、勇者たちが魔王を倒したと聞いたのですが、あなたたちは何か知りませんか」
ネイクは宴が始まってすぐにどこかに行ってしまったため、勇者の近くにはミルとセズしかいない。
正直に話すか、それともはぐらかすか、重要な選択を迫られていた。




