『運命の終わり』
やった、のか───?
実感はない。
達成感など──あるわけがない。
文字通り死に物狂いで、命がけだった。
だが、これで───ようやく、念願が叶う。
「っはー!疲れた………」
魔導士のセズは、そう言って倒れ込んだ。
「あはは………本当にね」
修道女のミルは、座り込んで苦笑いした。
「死んだかと思ったな」
騎士のネイクは、疲れを隠そうとしない。
本当に、よく生き残ったものだ。
だが、これで───ようやく、世界が平和になる。
ヴェルドニア大陸に存在する5つの国の中でも最大の規模を誇るスーバリ王国は、500年もの繁栄を築いていた。
しかし20年前、何の前触れもなく現れた魔王は、配下の魔族を率いて5国の内1国を陥落させ、そのまま自身の支配下に置いた。
その後王国が主導し結成した4国の連合軍は3年に渡り7度の遠征を決行するがいずれも失敗に終わった。
人々は絶望したが、まだ完全に希望を捨てたわけではなかった。
なぜならば、7度目の遠征が失敗した直後、予言があったからだ。
『貴き血脈に光の力を持つ御子が誕生する。かの御子こそ、魔王に打ち勝つ者である』
王国はその予言を信じ、御子が育つのを待つため、遠征を廃止し、王国を守ることに専念した。
その後王族や貴族、騎士団の関係者に重点を置き彼の勇者を探したが、予言の御子は見つからなかった。
しかしかの御子は、国民はおろか魔王、当の御子本人すらも知らない内に、確実に力を蓄えていた。
後に勇者となる少年の力が人々に知れ渡ったのは、魔王が現れてから19年の月日が流れたある日のこと。
遠征廃止から16年間一度も王国への侵入を許さなかった魔物の侵入を許してしまったのだ。
ほとんどの国民はすぐに逃げ出したが、一部避難が遅れた人々に付き添っていた修道女が襲われた際、勇者が誰も知らなかった力を発揮し、魔物を撃退した。
その後勇者は、王に魔王討伐を託され、信頼できる仲間たちと共に旅立っていった。
勇者が王国を旅立ち1年後、長い旅の果てに魔王は勇者に倒された。
魔王との戦いの後、魔王城を脱出した勇者たち4人は、騎士団が構える野営地まで辿り着き、そこでようやく腰を下ろした。
「魔王城なら、珍しい魔導書が沢山あるかと思ったけど、全然そんなことなかったわね」
疲れ果て倒れ込んだセズだったが、もう起き上がり戦利品の魔導書を開いている。
「どんな魔法が書いてあったんだ?」
と聞いたのはネイクだ。
ネイク自身は魔法をほとんど使わないが、魔王城の魔導書にどんな魔法が記載されているのか興味があるのだろう。
「貼りつけの魔法。入れかえの魔法。捨ておきの魔法。原形術式はこのくらいね。全部子どものいたずら程度の効果しかないけど」
それを聞いて、ミルは微笑んだ。
「そうは言っても、魔法研究の役には立つんでしょう?」
ミルの質問にセズも笑顔で答える。
「それはもちろん。実践的じゃない魔法はあっても、研究の役に立たない魔法はないわ」
セズの魔法に対する意欲と敬意は流石と言う他ない。
だが、今は休息を優先するべきだろう。
セズ自身もそれを分かっているのか、魔導書に一通り目を通した後は、魔導書を閉じ、再び横になった。
「とりあえず今日はもう休むけど、みんな回復したら王国に帰るのよね?」
ああ、王国に帰るのは1年ぶりか。本当に長い旅だった。
では、今日はもう眠って休むとしようか。
また明日。
本作品はプロローグ、一章、二章、三章、エピローグでの構成を予定しています。
また、作中で登場する用語の解説も必要に応じ投稿する予定です。
では、次回更新をお待ち下さい。




