鏡あわせの呪文
夢の幕間。しゃれこうべがしゃべっている。嗤っている。
父の帰りが遅いからか、かたかたかた。祖母の骨。
美しい少女が宿場町の灯りの下で、舞っている。寂しそうに哀しそうに。
街道沿いとは、死者が眠る場所だ。そうしてまた夏が来る。
ビードロころがしへやのかたすみにうずくまる赤い目をした鬼
夕日の差し込む部屋に赤い花を置いて想い人を殺す夢を見る深い闇
サクラの花びら白く冴え冴えと咲き我想う血の赤 薄暗がりの部屋水面より昏く抱きし闇掘った穴
灼かれる人影 荼毘に伏す血縁の 昏き闇にはらはらと桜の舞う はたで陀羅尼の御経流るる
海鳴りの 潮騒の 離島のあの洞窟で抱き合った宿世の血 まだ覚えし彼との朱い石の閨
畳の上 身の内の炎 蛇の如く身を焦がし燃やし 因果の巡り合わせとは言ったものよ
硝子細工の青い魚の影が畳に映りし 部屋の片隅にうずくまる青い目の鬼
女の幻 軽やかに夏の日陰に消えていく これは夢かうつつか 細い手首に桜貝のような肌の色
向日葵の向こうに炎天下の入道雲 切り取られた部屋の片隅に忘れらた故人の骨
サクラ舞ふ ふりみだした蓬髪の化け物 哀しくて哀しくて 人を喰らふ そんな夢を見る
サクラマイフ フリミダシタホウハツノバケモノ カナシクテカナシクテ ヒトヲクラウ ソンナユメヲミル
前の世は桜の化身 部屋に入りこんだ花弁 うすべにいろの 数日ほどの儚く散る魂
眠る胎児 母の声を想って怖いか
時
幾年もかかって 永遠の魂
夏が来る。
懐かしい道、夢の道。
いつか来た道、知らぬ道。
見知らぬ街で、君は、理由も分からぬ理由にて、姿をくらますだろう。
目眩の末の、脳震盪。
目覚めた先の、脆弱者の病院。
懐古の街角。風の通り道。
古い木の匂いに誘われて。ふつり────。息も、悩みも、途絶える。
石や硝子は、幾億年の夢を見ている。
夜になると、透き通ったところから、過去が滲みだして、私たちの脳に入り込む。
蛍石で出来たアンモナイトが、竹藪の中に大量に落ちていて、
そんなこともある、と、念仏の様に囁いている夢を見た。
路地裏の朝焼けを見ている。
路地裏は 謎 ノスタルジーという、懐古の秘密が 隠れている
頭をもたげて、佇んでいる(詩歌 :路地裏哀愁 懐古)
家の裏の川に、人魚が泳ぐ。
春の雲間から光が差し込み、木漏れ日のなか、綺羅綺羅とした流水の中、泳ぐ。
鱗が碧く光を反射する。
サイダーを差し出す。
朝焼けに、瓶の底までも綺羅綺羅と、それもまた、闇の内。
家の裏の蔵近くの川に、人魚が泳ぐ。
春の雲間から光が差し込み、木漏れ日のなか、綺羅綺羅とした流水の中、泳ぐ。
鱗が碧く光を反射する。サイダーを差し出す。
朝焼けに、瓶の底までも綺羅綺羅と、それもまた、闇の内。
涼やかな夏の、蔵の裏の川に、女鯉が泳ぎて、口から緑ゐロに近ひ砂金を吐く
櫻の木の下の、死体が、蘇りし……是、妙なるなり。仏の経を唱える。淡き夢見て、ゆめうつつかな
緑ゐロの、葉に、雫…ゆめであいましょう…
真言を、逆さの呪文にして造語を含めて唱えていたら、海がせりあがってきて、溺れそうになった。
白昼夢。
櫻の木の下の、蔵の隠し扉の奥に、秘密の巻物を隠しておいたんだ。
中には綺麗な昔の絵が載っている。
でも、この秘密の巻物を見ると、君は呪われて、鬼になってしまうよ。
とても、魔魅の力が強いから。蔵の呪いの巻物。
過去は、こちらが見ているとき、こちらを見ている。
いつだって、鏡あわせの呪文
このところ、故郷の夢を見る。
夏の暑い日、線香の匂いと念仏の声に誘われて入った小径で、自宅に墓を持っている家を発見。
木々に覆われ鬱蒼とした昏い家。
墓の前で、真っ赤な着物を着た老婆が、必死に手を合わせ念仏を唱えている。
それが、自分の祖母なのだ。そんな夢。
明け方に見る、竹藪のなかの水晶の、夢かな。
今朝も夢うつつ。口に含んだ水晶が、さもありなん、と、念仏を唱える夢。
仄かな、西瓜の味。
ひさしおの浅き夢みし明けの朝かな、宵にまで見るは、おまへの顔かな。
あさきゆめみし
昨日の夢を見る
過去は、色褪せたフィルムのなかに閉じ込められている。
西日射す蔵の中で、宝石の砕いた結晶みたいな埃の中、どこか他人みたいに微笑んでいる こんにちは。
あなたは、生きているみたいにひょっと、元気な顔を見せるんじゃないか ああ、今年も夏が近いです
昨日の夢を見る。
昔の思い出。
陽の差す座敷の昏がりで笑うあなたはあやしくてどこか懐かしい。
しゃぼんの匂いと、小さな玩具。
外に出たら止まれの標識の前で、履物をそろえて脱ぐ遊び。
駆けていくあなたは綺麗な着物を着ていましたね。禁断で秘密の呪文、通りゃんせを唄いながら
懐かしい宿場町の迷宮に迷い込んだ。
そこは、果ての見えない迷路。
電柱に逆さ文字を書くと、黒電話が鳴って鬼が湧く。
怖い怖いと泣いていると、鬼やらいがやってきて、密かに退治してくれる。
貰った風車は、良く廻るかい?彼らの悲しい宿世を君は知ったら、泣いてしまうだろう
宿場町の謎。
サイダー、入道雲、陽炎、炎天下の元、
誰の物か分からない麦わら帽子が道端に堕ちているのを発見する。
なぞなぞをしながら、影踏みをしていたら、知らない子が混ざってきました、
あの子は誰?ずいぶん前に亡くなった子。
此処は宿場町。亡くなった人が、ひょっこり現れる場所。
妖しい少年が舞っている。
夏の宵。夏の訪れは近い。
入道雲がもくもくと湧き立ち、金魚売りがやってくる。
竹藪の裏道では、狐の青年が獲物を狙う眼。
気を付けたまえよ。妖は夏になると現れる。
生者と死者の交錯する夏の妖しい煌めき。
美しくも糜爛な夏奇譚。
夢の幕間。しゃれこうべがしゃべっている。嗤っている。
父の帰りが遅いからか、かたかたかた。祖母の骨。
美しい少女が宿場町の灯りの下で、舞っている。寂しそうに哀しそうに。
街道沿いとは、死者が眠る場所だ。そうしてまた夏が来る。
このところ、故郷の夢を見る。夏の暑い日、線香の匂いと念仏の声に誘われて入った小径で、自宅に墓を持っている家を発見。木々に覆われ鬱蒼とした昏い家。墓の前で、真っ赤な着物を着た老婆が、必死に手を合わせ念仏を唱えている。それが、自分の祖母なのだ。そんな夢。