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ノルンとふしぎなものがたりたち

ノルンとふしぎな雪のゆめ

掲載日:2021/01/06

 ノルンはふしぎな女の子。

 青いお空にお魚をえがいてみたり。

 風と追いかけっこしたり。

 いろんな色の葉っぱでお花を作ってみたり。


 みんな、ノルンのことをこう言います。

 ノルンはふしぎな女の子。


 でも、ノルンにもふしぎに思うことがありました。


 それは、ゆめです。


 ゆめを見るのは、ねむっている時だけ。

 だいすきなキャンディをいっぱい食べられる時があります。

 おきにいりのお人形さんとおはなしできる時があります。

 こわいかいじゅうに追いかけられてしまう時があります。


 朝になったら、いっしょに住んでいるマイヤーおばさんに、ゆめのおはなしをします。

 おばさんは、楽しそうにノルンのおはなしをきいてくれるのです。


 ときどき、なんだかとてもかなしくなって、泣いてしまう時があります。

 そんな時は、朝をまたずに、マイヤーおばさんのベッドに向かいます。

 マイヤーおばさんは、ほほえみながら、こう言ってくれるのです。


「ノルン、あなたはひとりじゃないわ」


 そうして、朝までいっしょにねむってくれます。


 すると、朝にはゆめをわすれてしまう……


 そんな時、ノルンはすこしさみしい気もちになるのでした。



「こんやは、どんなゆめを見るかしら?」


 まどからまんまるお月さまを見つめながら、ノルンは言いました。

 こたえは、だれももっていません。

 ゆめは、いつだってねむってから分かるのですから。

 ノルンがゆめのことを考えていると、ドアを小さくノックする音がきこえてきました。

 マイヤーおばさんです。


「ノルン、ねる時間よ」

「はぁい。おやすみなさい、マイヤーおばさん」

「おやすみ、ノルン。いいゆめを」

「おばさんも」


 おたがいのおかおは見えなかったけれど、ふたりはにっこりとわらいました。

 ノルンはおふとんにもぐります。


「いいゆめを、おやすみなさい、みんな」


 小さくつぶやいたノルンは、ゆっくりと目をとじました。



 ゆっくりと、ゆっくりと。

 ノルンは、あるいていました。

 きづいた時には、しらないところにいました。


「あれ? ここはどこ?」


 あたりをキョロキョロと見まわしてみます。葉っぱのおちたたくさんの木が、ノルンをとりかこむように立っています。

 どうやらここは、森の中のようです。

 町からいつのまにはなれてしまったのだろう。

 ノルンはすこしこわくなりました。


「どうやったらおうちにかえれるのかしら?」


 来た道が分かりません。

 木と木のあいだに、目じるしのようなものもありませんでした。

 心ぼそくなりました。泣いてしまいそうです。

 でも、ノルンが泣きだす前に、だれかの泣き声がしました。


「えぇん……ひっく……ひっく……」

「だれ?」


 泣き声がするほうへとあるいていくと、とても小さな女の子が、おひざをかかえて泣いていました。


「どうしたの?」

「ひっく……ひっく……」


 ずっと泣いている女の子のよこに、ノルンはそっとすわりました。


「あなたは、ひとりじゃないわ」


 ノルンのことばに、女の子はやっとおかおを上げました。


「きみは?」

「わたしは、ノルン」


 ノルンはほほえみました。

 女の子もわらいました。


「あなたのおなまえは?」

「スノース」


 とても小さな女の子はこたえました。


「スノース、いいなまえね」

「ありがとう」

「どうして泣いていたの? スノース」

「じつは……おとしものをしてしまったの。あれがないと、とてもこまるの」


 スノースはまたうつむいてしまいました。

 ノルンは、スノースがかわいそうになり、手をさしのべました。


「わたしもいっしょにさがすよ!」

「いいの?」

「うん!」

「ありがとう! ノルン!」


 スノースは、立ってもノルンのはんぶんくらいでした。

 こうして、ノルンは小さな女の子のスノースといっしょに、またあるきはじめました。



 ノルンはききました。


「おとしものは、どんな色をしているの?」

「色はないのよ」

「どんなかたちをしているの?」

「かたちのないものなの」

「えっ? それじゃさがせないわ……」


 ノルンはおどろき、かたをおとします。

 スノースは言いました。


「でもね、ノルンもきっと見たことがあるものだわ」

「へっ? なんだろう?」


 そんなふしぎなものがあるのかしら?


 さっきまでガッカリしていたノルンでしたが、スノースのこたえにワクワクしてきました。

 ノルンとスノースは、木のかげや、石のうしろなど、ていねいにさがしました。

 でも、森は、とてもひろく、なかなかスノースのおとしものが見つかりません。


「どのあたりでおとしたの?」

「ごめんなさい、ノルン……お空からおとしちゃって、どこにおちたのか分からないの」

「えっ⁉ お空⁉」


 ノルンは上を見ました。

 お空は木のえだにふさがれて、見えなくなっていました。

 あたりはすっかりくらくなっています。

 どんどんさむくもなっていました。


「さむいね……スノース、だいじょうぶ?」

「わたしはへいき。ノルンは?」

「う、うん。わたしも、へっ……へっくっしょん!」


 へいき、と言いたかったけれど、体はすっかりひえてしまっていました。


「たいへん! でも、ごめんなさい、ノルン。わたし、あったかくすることはできないの」

「だ、だいじょうぶ。あっ! スノース! 体がひかってるよ!」


 ノルンがスノースを見ると、かのじょの体がキラキラとかがやいているではありませんか。


「どうしたの⁉」

「ノルン! ちかくにあるわ!」

「えっ?」

「わたしのおとしもの、きっとこのちかくにあるんだわ!」


 スノースがはしりだしました。


「あっ、まって! スノース!」


 ノルンもはしります。

 たいようのひかりが当たらず、まっ黒だった木々が、だんだんと白いひかりにつつまれていきます。


 なんだろう?


 ノルンが考えていると、ふっと、とてもあかるいところにでました。


「わぁあ!」


 そこにはまっ白な山がありました。

 ゆっくりあるくと、さくさくとなり、白い足あとができます。

 えだにかぶっている白いものを手でさわってみると、ひんやりとつめたくて、ノルンの手のぬくもりにそっととけていきます。


「これは、雪だわ!」


 そうです。あたりてらすほどのまっ白な山は、雪がつもったものでした。


「やっと見つけた!」


 スノースもうれしそうです。


「これが、スノースがさがしていたおとしもの?」

「うん!」


 スノースが雪山にちかづいたとたん、それはぶるぶると大きくゆれました。


「だれだぁ⁉ おれさまの作った雪山にさわるやつは⁉」


 大きな雪山だとおもっていたそれは、大きな雪男さんだったのです。


「おれは雪とさむいのがだいすきだ! この森をずっと雪のせかいにしてやるんだ!」


 雪男さんがそう言うと、さっきまでひかりにつつまれていたまわりが、とつぜんごぉごぉとふぶきになりました。


「きゃあ⁉」


 ノルンはふきとばされそうになり、木にしがみつきました。


「や、やめてぇ! 森はさむい時もあって、あったかい時もあるから、みんながくらせるのよ!」


 スノースが言いました。


「みんな? みんなだとぉ? みんな、おれのことがきらいだ。だからおれも、みんなのことがきらいだ!」


 雪男さんがさけぶと、またごぉごぉと風と雪がなりました。


「おれは、ずっとこの雪山にひとりでいるんだ!」


 雪男さんのことばが、ノルンにはかなしくきこえました。


「ひとりじゃ、ないよ」


 木にしがみついてノルンは、言いました。


「なに?」

「あなたは、ひとりじゃない!」


 ノルンはまた言いました。


「だって、わたしはあなたのこと、きらいじゃないもの」

「うっ、うそだ! いつだって、みんな、おれを見るとにげるんだ。こわがるんだ!」

「そんなこと、しているからよ!」


 スノースが言いました。


「雪のようせい、スノースのちからをこんなことにつかって、おともだちのノルンをいじめるなんて、ゆるさない!」


 スノースがふわりとお空にまい上がりました。

 さっきまでごぉごぉとふきあれていた風と雪が、スノースのまわりにあつまります。

 あつまった雪は、ぎゅっとかたくなり、大きな玉となって、雪男さんの上におっこちました。


「いでぇ……!」


 雪男さんは、くるくるとまわって、そのばにあおむけでたおれました。


「雪男さん⁉」

「あら……ちょっとやりすぎちゃったかな……?」


 ノルンとスノースが、あわてて雪男さんにかけよります。

 あたりはもうしずかな白い雪のせかいにもどっていました。


「あいでで……」

「だいじょうぶ?」

「ごめんなさい、やりすぎちゃったわ」


 しんぱいそうに見つめるふたりに、雪男さんはもうしわけなさそうなおかおをしました。


「おれのほうこそ、すまない。あたまがひえたよ」


 あたまをさすりながら、雪男さんは立ち上がりました。


「ほんとうに大きいのね」

「雪男だからな」


 にんまりとわらったおかおは、まるでお日さまのようでした。


「わたしは、雪男さんのこと、ぜんぜんこわくないわ」

「ありがとう、ノルン」


 雪男さんは、スノースを見ました。


「雪のようせいさん、これをかえすよ」


 雪男さんが手のひらをひらくと、そこにはなにもありません。

 ノルンも、雪男さんも、おどろいてしまいました。


「あっ、すまない! とけてしまったようだ!」

「いいえ、ここにあるわ」


 スノースが、雪男さんの手のひらにそっとじぶんの手のひらをかさねます。

 すると、きれいな雪のつえがあらわれました。


「すごい! これが、スノースのおとしものだったのね!」

「うん! ノルン、雪男さん、ありがとう! これで、この森に冬をとどけられるわ」


 スノースが、またふわりとうかびました。


「見つかってよかった!」


 ノルンがわらうと、雪男さんが言いました。


「こんどは、ノルンのさがしものを見つけたよ」

「わたしの?」


 こんどは、スノースが言います。


「そう。ノルンのかえり道」


 ふたりが、おなじほうこうをまっすぐしめしました。

 ノルンは、さみしくなりました。


「おわかれ、なのね」

「いいえ」

「また、来てよ」


 ふたりは言います。


「きみは、ひとりじゃない」


 ノルンはなみだをこらえて、わらいました。


 ノルンはゆっくりとあるきます。

 ゆっくりと、ゆっくりと。

 スノースと雪男さんにしめされた道をあるきました。



 朝が来ました。

 ノルンは、目をさまします。

 ゆめのじかんは、もうおしまい。

 ふと、まどの外を見ました。


「わぁ! 雪だ!」

 いつもはおふとんからなかなかでられないノルンも、この時ばかりはベッドからとびおきました。

 そして、首をかしげます。


「雪は、どうしてとけるのかしら?」



 あらあら。

 ノルンにまたふしぎなことがふえたみたい。


 ふしぎには、たいせつなさがしものが、いっぱいつまっているのかもしれませんね。




 ~おわり~

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― 新着の感想 ―
[一言] ノルンの活躍のおかげで冬がやってきましたね! そうして、新しい疑問ができた。 新しい疑問を解決するために次の夢にレッツゴーですね。 その夢でも新しい友達が増えるのか、それともまたスノースと雪…
[一言] 繰り返し出てくる「あなたはひとりじゃない」という言葉が、ゆっくりと染み込んでいくような、優しい物語でした。 ノルンはご両親ではなく、マイヤーおばさんと一緒に暮らしているのですよね。それが血…
[一言] とても楽しく読ませてもらいました! みんなが仲良くなれて良かったです(^^)
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