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7.迷宮の封印解除2

「こんにちは~ごめんください! 迷宮管理協会から来ました伊東です」

「山野紅葉さんはご在宅でしょうか?」


「あっ来たみたい」


 紅葉が迷宮管理協会に電話してから、もう一月が経とうとしていた。

 先週は封印解除前の下調べと称して、迷宮管理協会から地区担当者が二人訪ねてきた。

 紅葉には何をしているのか理解出来なかったが、二人は洞窟周囲を色々確認して帰っていった。


 今日はいよいよ封印解除する段取りとなっている。

 紅葉の担当となった伊東が時間通りにやって来た。

 

「はい! 今行きます」


 縁側でのティータイムを切上げ、紅葉は声のした表玄関へ外から向かう。

 

 玄関前に見た目三十代位の男性が立っていた。

 サンダル履きでツナギ姿の紅葉を見て、一瞬たじろいだかに見えたが、直ぐに爽やかな営業マンスマイルを取り戻した。


「こんにちは山野さん。昨日お電話しました伊東です。お会いするのは、先週振りですね」

「あっ、こんにちは伊東さんお久しぶりです。今日はよろしくお願いいたします」


 伊東は懐から名刺を取り出し、あらためて担当になった伊東ですとご丁寧な挨拶をする。

 自分もつい最近まで同じ事をしていたなと、紅葉は会社員時代を懐かしく思った。

 名刺を受け取った紅葉に、伊東は提出する書類がいくつかあると言ってきた。

 

「伊東さんお手数ですが、中で受け取ってもよろしいですか?」

「あっはい。それは構いません」

「ではこちらにどうぞ」


 その場で受け取るのも失礼かと思った紅葉は、自宅に上がってもらうことにした。


「ばあちゃんもちょっといい?」

「どうしたと、紅葉ちゃん」

「何か提出書類があるらしいよ」

「ほうそうかい?」

「伊東さんに話聞くから、ばあちゃんも一緒に聞いてもらえる?」


 祖母はお茶の準備に一旦その場を離れ、紅葉は伊東を茶の間へ案内した。


「山野さんへ提出いただきたいのはこちらです。内容はほぼ一緒ですが、提出先が異なりまして」

「ああこれは、見事に縦割り行政ですね」


 伊東は苦笑いしながら三通の封筒を差し出してきた。

「ははは……行政は本当にそうですね。横の連携が無い……こういう情報は共有化すべきだと思いますね」

 

 国土交通省、厚生労働省、防衛省ですか……迷宮管理って結構大事なんだな。

 書類の説明を一通り聞き、話は今日のメインイベントに移る。

 封印されている間の、迷宮の状態が気になっていた紅葉は、伊東に聞いた。

 なんでも封印処置が施されると、迷宮は休眠状態になるとのこと。

 その間、中に存在しているもの……生き物などはいわゆる冬眠状態となっているらしい。

 それを聞き内心ほっとする。


「紅葉ちゃん聞いて良かったとね。ばあちゃんも気になってたが安心したと」


 いざ中に入ったら、死屍累々の如く横たわっているでは……と想像し結構怖かったからだ。

 もっとも、迷宮に吸収されるため、その辺に転がってはないですね……と伊東は話を続けた。

 封印解除後、その辺に生き物がごろごろ横たわっている様を想像していた紅葉は、胸を撫で下ろした。


「では山野さん。貴方をこの復活させる迷宮の管理人として登録します。最後にもう一度伺いますが変更はないですね?」

「はい。変更はありません。お手数ですがこのまま手続きお願いします」


 伊東の念押しに紅葉は祖母に顔を向けると大きく頷かれたので、紅葉は身が引き締まる思いで伊東へお願いした。


「では山野さんには、登録するにあたりこちらに血をいただきますね」

「えっと登録に血が必要なんですか?」

「はい。そうなんですよ」


 伊東は鞄から四角い小さな箱とリトマス紙の様な物を取り出した。

 リトマス紙には、許可を得て採った紅葉の血を垂らし四角い箱に仕舞った。

 

「では、書類の件は終わりましたので、洞窟の前へ移動しましょうか」


 伊東に促され、紅葉と祖母静子は伊東の後に続き、洞窟前に移動した。

 到着すると伊東は四角い箱は再び鞄から取り出し、その手に掲げる。

 すると四角い箱は僅かに発光すると、ふわりと浮かんだ。


「あっ浮いた!」

 紅葉が驚いている瞬間、洞窟に向かって飛んでいったかと思ったら、吸い込まれるようにして消えて行った。


「ありゃ無くなってしまうたわい……」


「無事登録完了いたしました。これから二、三日掛けて迷宮は紅葉さんを管理人として認識するようになります。」


 伊東はそれだけ伝えると帰って行った。

 


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