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またたきをとどめて  作者: kirinboshi
第三章 才能開花
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第五節 美術部員の謝罪

有華と真剣に話し合った翌日のことだった。


時間は昼休みに差し掛かっていた。

澪と有華、千夏の三人は机を引っ付けてお弁当を食べていた。

楽しく談笑しながら食べるお弁当は格別だ。

しかし、食べ終わりかけた時、入り口からゾロゾロと入ってくる人たちがいた。

澪はその姿を見るとにわかに緊張した。

それは、澪に厳しい言葉を投げかけた同級生の美術部員たちばかりだったからだ。


澪に向かってくる相手に千夏は警戒しながら「なに?」と驚いていたが、有華は同じ部員の面々を静観していた。


「戸川さん、すみませんでした!!」


口を開いた美術部員から出たのは、謝罪の言葉だった。

澪は一瞬、何を言われているのかわからなかった。一様に皆、腰を折って澪に謝って教室から静かに出ていく。ふざけているわけでもなく、正式な謝罪みたいだ。

澪は部員たちに「は、はあ……」と答えることがやっとだった。

同級の美術科、美術部員の田代という男が最後に残った。


「もう、自分ら、戸川さんに何も言わないので安心してください」


澪は言葉もなく、首をただ縦に振ることしか出来なかった。

田代が教室を出て行ったところで、澪は有華を見る。

有華が何かをしてくれたのだと思ったのだ。


「私?私、何もしてないよ、いや、マジで」


有華は真顔でそう告げる。有華は嘘をつかない性質だから本当のことだろう。

澪は少し思案した。

清川先生に言われたのかな?


澪はそう考えたが、そんな作為をする先生にも思えない。そもそもあの先生に「美術部に入れ」と言われたから、美術部員に目をつけられたのだ。


美術部員たちが謝りに来たことで、澪の心には平穏が訪れた。

もう、あの雀を描いた一件で誰かに責められることは無くなったのだ。

美術部とのわだかまりが無くなったのである。


かといって、また美術部に出入りする勇気はない。美術部入部希望もなく、それは失礼すぎる行為だろう。

これはそろそろ一人で勉強に本腰を入れるべきかと決意しかけた。数学は相変わらず理解出来ないが、英語は美術部で少しずつ勉強することで理解が及んできた。


そう、学生の本分は勉強。


好きではない勉学だが、澪はそう自分に言い聞かせていた。英語でもっといい点を取れば、文系の私立大学でいい所に入れるかもしれない。

大学で特にしたいことはないが、そう目標をさだめようかと思っていた。


ところが、放課後、帰る準備をしていた澪をまた、訪ねる人がいた。

それはあの、鉛筆画しか描かない、寡黙な来栖先輩だったのである。


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