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またたきをとどめて  作者: kirinboshi
第二章 美術部
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第七節 咲が丘高校美術部とは

居心地の良い美術部に放課後お邪魔して二週間が経った。澪はゆるくあたたかな部内の雰囲気にすっかり居心地の良さを感じていた。窓から差し込む陽だまりの中で、澪はうーんと伸びをした。その様子があまりに吞気だと感じたのか、有華は澪の体にチョップする。

地味に痛いチョップに澪が唸りつつ大げさに体を曲げていると、


「連れてきてなんだけど、この美術部コンペの時はピリピリしてるからね」


と有華が言った。


「……コンペ?」


うん、と有華は続けて説明してくれた。コンペはコンクールに出す絵を決めるため、美術部で定期的に行われるらしい。これは単なる行事などではないらしい。コンペでは清川先生が全ての絵に目を通す。いつもは清川先生にスルーされがちな下位部員たちも見てもらえる絶好の機会らしい。もし、そこで評価されれば、美術部内での立ち位置も変わるし、コンクールに出すことが選ばれたあかつきには、全国の猛者と同じ舞台で評価の場が与えられる。


有華は目をキラキラさせながら語っている。澪はインターハイのようなものかな?と若干、理解が追いつかない思いがしていた。

そして、話はこの咲が丘高校美術部の歴史にまで及んだ。有華の熱っぽい語りが止まらなかった。


咲が丘高校は、元々、普通科だけしかなかったらしい。その時代に清川先生こと清川夕慈は生徒としてこの高校に在籍していた。高校生でありながら、清川先生は美術の数々のコンクールで賞を取り、若干、十七才で美術バイヤーから絵の買い付けまで来るというモンスター高校生だったらしい。そして、華々しく活動を続けた清川先生の後に憧れて入学する生徒がいたらしく、のちの美術科創設に至ったらしい。美術科創設時に咲が丘高校は清川先生を早々に着任させたかったらしいが、そのころ先生は世界中を飛び回る前衛芸術家として忙しく、正式な着任は、利き腕の損傷後だったらしい。


絵が描けなくなった先生だったが、それでも指導力を買われてこの高校に着任した。それから美術科は次々と美大進学者や、デザイナー、漫画家や芸術家を生み出し、普通科や他の科がありながら、美術系高校のトップクラス高校になった。


有華はそう澪に教えてくれた。なんとなく知っていたこともあったが、清川先生がこの高校の出身者だったとは知らなかった。

自分が育った高校で教鞭をとるなんて漫画みたいだなぁ、と思いながらどこか遠くのおとぎ話のように澪は聞いていた。


澪がこの高校に入った動機は女子テニス部が強いことだけだったからだ。

気のない澪に有華は自分の話が無視されていると感じて再び澪にチョップをくらわせた。


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