王族の魔法剣士って言ったよね
トラックに轢かれたようだ.....
視界は赤く染まり、体は痛みの信号をあげている....
俺は藤沢善行35歳、アルバイトはしていたのでギリギリ無職では無い、もう一度言う無職では無い。実家が寺であり、父親は堅物。オタク文化にハマった俺の居場所はなかった。住職になるための修行に耐えかね、居場所を求めて.....家を飛び出したのは良かったが、世間にも居場所はなかった。飛び出して何年経ったのだろうか....結局定職にはありつけず貧乏生活を送る。女っ気どころか友人すらもいない、そんな中異世界小説に夢を見た。定番の剣と魔法の世界で、その世界の頂点、優れた剣技と魔法を操る魔法剣士になりたい。そして、王族になって人生スーパーイージーモードで高笑いしたい。
...、そんなことを思いつつ、ゆっくり瞳を閉じ意識を闇の奥へと......
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はっ!
目を開けると青空と海辺が広がっていた。目の前には机と椅子があり相当年の行った老人が座っている。感覚が視覚と聴覚に限定されていて不思議な... いや、体が無い、目と耳だけになったしまった?ともかく、状況から考えるに、死後の世界的な奴だろう、異世界転生小説にありがちな奴!
「お主よ..聴こーーいるか?」
テンションあがってきた中、老人が皺だらけの口を開く。滑舌が酷い、取り敢えず返事しとこう
「はい!」
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返事がない、ただの屍ではあるまい
「ねぇおじいさーん」
手をメガホンにして(にしたつもりで)もう一回繰り返した。
「なんじゃ?まあ聴こーてーーーじゃーーう。早速ーーじゃがーー異世界ーーでー剣と魔法ーーーー世界ーー 」
この老人、滑舌と耳両方悪い様だ。でも、異世界って単語は聞き取れたし、これは異世界転生チャンスっぽい!しかも、剣と魔法の世界!俺の望むやつ!。
後は、異世界転生の定番なら自分のスペックも選べるのだろう。
もう一回聞き返すのも申し訳ないし、ウッキウキで早くこの言葉を言いたい!ので言った。
「とにかく、最強な王族の魔法剣士にしてくれ!」
だが、このジジイ。剣と魔法の世界には飛ばしてくれたのだが、王族の魔法剣士を聞き間違えやがった!
目が覚めたら16歳の少年の体になっていた。そこは良し
自分のいる家やベッドがボロかった。なんか嫌な予感が...、でも貧乏王族もいるから良し
その後この少年が今まで歩んできた記憶が流れ込んできた。ここで両親が盗賊と判明、クソ
その記憶には、魔法の才能がない事を示唆するものが含まれていた。おうふ、夢潰える。
ともかく、俺は盗賊として生きていく事が決まった。
おい、ジジイ。俺、王族の魔法剣士って言ったよね