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境界人の軌跡  作者: 吉杏朱音
序章 公爵家の養子
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三幕 王城へ行く前に

ちなみに、イスズリーは見た目と年齢が合わない、この小説ではよくいるやつだったりします。

 次の日、ラハールさんの言っていた通り、使者と名乗る男が来た。


 男は乗ってきた四人乗りの馬車に兄、私、ルルリアを乗せ、男が操縦席に乗ると馬車はすぐに出発する。


 それは、操縦席にはもう一人いたことを意味するが…それを知ったのはかなり後の事だ。この時の私は初めて乗る馬車に感激し、ルルリアは初めて見、初めて乗る馬車に嬉しそうな顔をしている。兄は乗ったことがあるのか特に反応はない。


 私は馬車を見たことはある。だが、それは貴族の馬車を遠くから、である。おまけに私が小さいころで詳しくは覚えていない。そういうことをルルリアに話すとそれでも前に見たのならすごいよ、と目を輝かせて言うのだった。


 ちなみに兄は何をしていたかというと、唯一持ってきていたトランクを空いている自分の横に置いていた。昨日、私とルルリアが寝ている間に用意していたのだろう。


 馬車はでかい屋敷の前で止まった。屋敷の旗には家紋らしき紋様が描かれている。そして、使者は私達に降りるように指示を出す。私たちが降りると執事さんとメイドさん達が大きい戸の前に立っていた。


「お待ちしておりました。」


 そう言って、頭を下げる執事さんに私はアワアワしてしまう。その反応を見たメイドさんが


「リカードさん。お嬢様が困惑しております。頭をあげましょう。」


と言ってくれたのでリカードと呼ばれた執事さんがやっと顔を上げた。初老ぐらいだろうか。


 ふと、私は執事さんの顔に火傷の跡があることに気付く。右目から鼻にかけて変色しているのだ。だが、出会ったばかりの人に聞くのは憚られた。私がじっと見ていると


「おや、この目の傷が気になるのですか。」


と、彼から聞いてきた。私がうなずくと、


「軍にいたときに少しあったんですよ。」


と、言った。それ以上は今は聞き出せないだろう。これ以上は聞くなと言わんばかりの口調だった。



 執事さんに案内され、私達は応接間に案内された。私はここまで広い家を見たことが無い。


 どうして私達なんかがここまでされるのかわからないが、王命と何か関わりがあるのだろうか。応接間には、二人の人影があった。一人は兄より年上か同じぐらいの年齢だろうか。もう一人はルルリアと同じぐらいに見えた。


「初めまして。私はアビス・デル・サリヤという者だ。父が留守にしているのでね。私が代わりに挨拶させてもらう。」

「僕はイスズリー・デル・サーチャというよ。横の奴の弟だ。」


二人はそれぞれ名乗る。弟の方はニヤニヤとしながら言い、この反応に私は少し生意気そうな印象を受けた。


「僕達デル公爵家が君たちの養子縁組の相手なんだ。ニコラス君は学生の頃から成績優秀者として知られているし、高等学院へ行けるだけの頭があった。アスカさんは僕達が養子にするだけの価値があるし、ルルリアさんは独り立ちにはまだ幼い。まあ、父の考え方はそんなところかな。だからこそ、国が動くように頼んだみたいだね。そっちのほうが面倒も無いから。」


 そう言うアビスさんは右手で自分の胸部分を触り、その部分のシャツを掴んでいる。顔はやや険しそうだ。それを見ていたイスズリーが呆れながら、


「兄上は良心の塊のような人だしな。俺と違って。」


と私達に言った。その発言に私は納得する。恐らく彼は国や公爵家のためなら自分の感情はともかく、動く人なのだ。ただし、人が物のように扱われるのは良心が痛むのだろう。と、アビスさんが


「僕は彼らには彼らの生活があるとは言ったんだけどね。」


と、小さい声で言った。ただ、この声を聞いたのは彼と一番近い所に座っていた私の他には横の席のイスズリーだけだったと思う。



 私達はこの後、王宮の謁見の間に行くらしいので、それなりの服を着て行かないといけないそうだ。そのため、兄は持ってきていたトランクの中から外交省の役人の服を出して着る為に、私とルルリアは公爵家の用意した服を着る為に三人それぞれが別行動である。



 私はニ階の向かい側の部屋に案内された。部屋は木で作られた家具が並んでいて、落ち着いた雰囲気を醸し出している。


 私がじっくり見ていると、ここまで案内してくれたメイドさんが右の扉の前へ行くように促す。私がその前に来るとメイドさんが扉を開けた。


 中を見た私は唖然とした。扉の向こうは服が沢山並んでおり、見えなくなるまで続いている。私はここまで服が沢山あるのを見たことが無い。


「こんなに沢山あるんですね。メイドさん、これはどれぐらいあるんですか?」


と聞くと、


「これでも少ないほうです。確か、百着程だったはずです。」


と、教えてくれた。私はこの言葉にまた唖然とした。


 で、思った。おい、少ないだと?多いだろ。私なんかは持っていた服の数はたったの三十着だぞ。三倍ぐらい差があるじゃねーか。


 まあ、そんなことはメイドさんには言わないが、公爵家の力を垣間見る機会にはなった。貴族、すごいわ。



 メイドさんに、黄色いリボンがひらめくややヒラヒラした服を選んでもらい、着せてもらった。


 いつもは自分の服は自分で着るため、すごく不思議な気分になった。着終わった後、よく似合うといってくれた。


 というかどうしてサイズピッタリなのかしら。この家、女の子がいたのかしら、と思ったがそれも些細なことだ。


 その後、私の黒い髪にいい香りがする香水をつけてくれた。何の香りか聞いてみると、青い薔薇の香りだと教えてくれた。青い薔薇は高級品として扱われるのでまず、民間では買えない。


 なので初めて嗅いだと言うと、でしょうねと苦笑いで返してくれた。まだ未成年なので化粧はいいでしょうと、メイドさんは言って私に立つように促す。私が立つとメイドさんは、


「ロビーに案内します。」


と言って歩き出す。私は慌てて追いかけた。



 ロビーには、兄やルルリアが既にいた。兄はヒラヒラした灰色のシャツに黒いベストを着、黒いズボンを着ている。靴は此処に来たときと同じ、茶色の革靴だった。


 一方、ルルリアは白いワンピースで私と同じ色の髪は三つ編みに結われ、二つに分けられており、頭には赤い花が添えられていた。私は階段を下ると兄をスルーして、ルルリアのところへ行く。ルルリアはつまらなそうな顔をしていたが、私が来ると駆け寄ってきた。


「お姉ちゃん、かわいい。それにいい香りがするー。」


 そう言って私に抱きつこうとするが、アビスさんが来たので私はルルリアを静止し、アビスさんの方へ向かせる。


「準備が終わったようだね。私達はこれから王城へ入城する。これは王命にも書いてある通りだ。それから、女王陛下の居る謁見の間に入る。王城まではまた馬車での移動だ。着いたら父がいるから父が案内するだろう。」


 アビスさんはそう言い、ちょうど止まった家紋が描かれた馬車に乗る。私達も後ろに止まっている、前の馬車と全く同じようにしか見えないデザインの馬車に乗った。乗ると、イスズリーが居たので驚いたが、どうぞと促したので後ろの兄を乗せるためにイスズリーの横に座った。


 さあ、王城へ。イスズリーはニヤリとしながらそう呟いた。

補足

ここまでの登場キャラの容姿

アスカ…黒髪で肩までの長さ。瞳は青い。母親の生き写し。

ニコラス…焦げ茶の髪で髪質はふんわりしている。瞳は青い。母親似。

ルルリア…黒髪でロングヘアー。普段は髪を一つにまとめている。瞳は緑。父親似。

母親…黒髪でロングヘアー。普段は髪を三つ編みにし、一つにまとめていた。瞳は青い。ぱっちりとした目を持っている。

父親…焦げ茶色の髪で髪質はふんわりしているが、やや白髪が目立つ。瞳は緑。ややタレ目。

アビス…赤い髪で瞳は黒い。少しツンツンしている。

イスズリー…赤い髪で瞳は茶色い。目が吊りめ。

ただし、まだ父親、母親の名前は明かしません。

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