異世界クレープ号
僕はクレープの移動販売をしてる、通称“クレープ屋”。
愛車のワンボックスカー“クレープ号”と異世界に来てしまった。
元々、日本でも各地に移動してクレープの販売をしていたんだ、異世界に来てもそんなに変わらない…
いや、変化があった!!
まず、仕入れが楽になったし、安くなった。
移動販売車の燃料費が0なんだ!
魔力で動くから、ガソリン代の負担がなくなったんだよ!!
それから、調味料が無料だ!
何かスキル? とか言うので、無制限に無料で作れる!
チョコソースや、生クリームや、ジャム…これも調味料にスキルは判断してるみたいで、凄いコストダウンだ。
さすがに生地に使う小麦とか、惣菜クレープにハンバーグの肉とか、レタスやトマトは仕入れないといけないけどねっ!
海辺の町でマグロも仕入れて、アイテムボックスになった冷蔵庫に大量保管した。ツナは手作りの力作さ。
ラーメン屋さんが、20代前半位の男性達を連れて来た。
何でも5年前に召喚された“勇者”と“賢者”らしい。
勇者の青年は、白く輝く鎧に、白いマント姿。
勇者の証と“聖剣エクスカリバー”を自己紹介の時に見せてくれた。
賢者の青年は、反対に黒いローブ、黒いブーツ姿。
150cm以上あるゴツゴツした杖を持ってて、何処の魔法使いだって雰囲気だよ。
2人共、日本でだったら痛々しいファッションだけど、ここは異世界だしね。
この1カ月間で僕も、こういったファッションの人に対する耐性が高くなった。
ラーメン屋さんは自己紹介前に素早く、イチゴ生クリームを注文。
既に食べ終わってる。
ラーメン屋さん、結構な甘党だよね。惣菜クレープは頼まないんだよ。
「マンゴー生クリームをお願いします」
「僕は、ミカン生クリームで」
「了解。ちょいと待ってね」
生地は錬成ボールに小麦を入れてスキルで作るんだ。
少し寝かせてから、熱した鉄板に乗せ、手早く薄く伸ばす。
タイミングを見てヘラで離して、ひっくり返す。
それを2枚。
1/6スペースに生クリームをしぼる。
缶詰めのマンゴーをスライスして乗せ、マンゴーソースをかけて、半分に折ってから左右を折り畳む。
紙でくるんで完成だ。
ミカンの缶詰めと、ミカンソースに変えて、もう1つを手早く作る。
「はい、どうぞ」
果物の缶詰めは、僕のスキルが“調味料”扱いしてくれてる。ラーメン屋さん達の“調味料”では、出てこないんだ。
これが一番チートだと、僕は思うんだ。