屋台号の停泊地
よう!
俺はラーメン屋台をやってる者だ。今じゃ、“異世界”で出店してて、愛車の軽トラとセットで『異世界ラーメン号』なんて、呼ばれてる。
異世界に来たら、贔屓にしてくれよな!?
野外イベント会場から80台の屋台が一斉に召喚されて、早1カ月…
何とか街に入り、行商ギルドに加入した80人。
10台でキャラバン組んでな、いろんな国の街町…
村とかを巡ってる。
国を大きく移動する時は、80台で連なり大移動だ!
圧巻だぞ~。
何せモンスターが出る異世界だ、移動には危険が伴う。
異世界はな、言語チートで言葉は通じたが、治安は最悪だ。イスラム圏の紛争地帯並みと思ってくれ。ま、俺も紛争地帯には行った事がないから、お互いに想像だけどな。
こっちは、ろくな法律なんてない王政の国々がほぼ全てだし、危機管理は必須だぞ。
まぁ、俺達にはチートな屋台号80台がある。
Sランクの地竜だって、トップスピードで当たれば、負けたりしねぇよ!
屋台号には、不壊性能があるからな~。
でも空飛ぶドラゴンには、さすがに手が出せねぇよ。
自動車ベースの屋台しかないんだ、飛行機ベースの屋台があったら、良かったんだが…
地竜の骨からは、良い出汁が出るし…
あのチャーシューは最高傑作だったんだぜ!
牙や鱗や皮は売りさばいて仕入れ資金にしたがな。
骨も売れって各ギルドの圧力がハンパなかった。冗談じゃねぇよな!?
骨は出汁に使う、1択だせ!
異世界人との文化のギャップは大きかった。
愛用のトンカチで叩き割って、寸胴鍋に入れたら、崩れるように気絶してよぉ~。
オーバーアクションだよなぁ!?
そう思うだろ、日本人なら。
ドラゴンもさぞや良い出汁が取れるだろうし、チャーシューは…
想像でヨダレが垂れそうだ。
今は小麦の良い産地でもある帝国の帝都で出店してる。
小麦はな、他の屋台号の店主も材料にするやつが多いからな。
海辺の国で海産物を大量仕入れして、米を求めてエルフの里に行き、そして良質小麦の産地で人口も多い帝国に来たんだ。
帝国の帝都に出店した初日の閉店間際に、勇者2人が来たんだ。
迷わず注文して、食べる途中から号泣…
食べながら泣くと、誤嚥や窒息のリスクが高いからな!?
食べるか、泣くか、どっちかにしねぇと…
「おぃ! 弟には連絡したぞ。
予定は3週間後だったが、スケジュール変更したからな、来週ここに来る。
カレーはな、日本風のもインド風のもメニューにあるからな。好きなだけ食えるぞ!?」
「「あ゛、あ゛りがどうございまず!!」」
「おぅよ… 兄ちゃん達は、甘い物は好きか?」
涙と鼻水とヨダレで、くちゃくちゃな顔の兄ちゃん達に、若干…
いや、かなり引きぎみになりながら、聞く。
仕事終わりに、皆で集まって食べるんだ。
今日の賄いはクレープ号だったハズ…
「この5年…、果物以外の甘味は無かったです」
「その果物も、甘味は薄くて、酸味やえぐみが強くって…」
あ、また泣きそうになった。
「日本のスイーツを食わしてやるよっ。
泣くなよ、兄ちゃん達…」
備品のティッシュを差し出すと、豪快に鼻をかんだ。
屋台号の閉店作業をしたら、助手席に兄ちゃん達を乗せた。
2人乗りだから、3人だとギュウギュウだ。
交通法もな、異世界にはねぇよ。
下町の安いがまあまあな宿に車を向ける。
宿の裏の空き地も借りてて、10台の屋台号が停車中だ。
「遅いよ~、ラーメン屋さ~ん!
で、クレープ、何食べる?」
「悪ぃな、クレープ屋!
ちょいと訳ありさんを連れて来た。コイツらにも食わしてやってくれ!」