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モブでいいよ  作者: ふにねこ
第一章 出会い
42/202

七日に一度は悪巧み 6

「……全部攻略したんだよね?」

「はい。私のおススメは王子の恋愛バッドエンドです」


 グレイと王子の意味ありげなツーショット。


「何がこじれてそうなったのか、国民の一人としては聞くのが怖いよ」


 ホノカが話したくてうずうずしているのが見て取れるので、あえて聞かない。


「とりあえず、神力アップのために魔法の授業をなんとかしないと」


 ホノカが嫌そうな顔をしたが気が付かないふりをした。


「そういえば、恋愛ルートは神力が低くても封印は成功できたんだよね?」

「そこは王道、愛は勝つってやつですよ。手に手を取って二人で封印を成功させるんです」

「今からでも遅くない。恋愛ルートで行こう。そうだ、ホノカちゃんのおススメ、クリス王子ならやる気も出るんじゃない?成功しても失敗しても封印は成功するし聖女も生き残るし、無難な終わり方だよ」


 他人事なので、クリス王子が女嫌いになろうが路線を変更しようがどうでもいい。

 肝心なのは封印が成功して王都が平和でいられることだ。

 アリスの黒い笑みを見てホノカは眉をひそめて口を尖らせた。


「だーかーらーあの人たちと恋愛は絶対にしたくないって言ったじゃないですか」


 それができれば城から逃げ出したりはしないし、そもそも異性として好きだという気持ちが皆無だ。


「好きでもない相手となんで恋愛しないといけないんですか?」

「使命のために!失敗しても王子の恋愛観が変わるだけでしょ」

「アリス姉さん……黒すぎますよそれ……」


 呆れたようにホノカはアリスを見る。


「アリス姉さんだったらできますか?」

「うん、無理」


 ものすごく何か言いたげなホノカの視線から逃げるようにアリスはため息をつきながら愚痴をこぼす。


「はぁぁぁ、なかなか思うようにならないね。あの人たちは顔はいいんだから、穂香ちゃんをさっさと誑かせばいいのに」


 フェルナンをそそのかし、王子にホノカをたぶらかしてもらうのはどうだろうか。

 ふとそんな腹黒い事を考えてしまう。


「怖すぎますっ、やめて~」


 頭を抱えてうなるホノカからは恋愛というキーワードは見当たらない。

 こう見えてもホノカは馬鹿ではないし、イケメンに弱いわけでもない。

 邪な考えで口説かれればすぐに気が付いて拒否反応を示すだろう。

 汚れちまった大人の思惑は棚にしまうことにした。


「アリス姉さん、とにかく、今日はリフレッシュ!明日のために今日は楽しみましょうよ」

「はいはい。下町観光の続きに戻ろうか」


 はしゃぐホノカにほほ笑みながら、アリスはクローディアに出す手紙の事を考えていた。

 話を聞いてまず思ったのが、このままジャックに任せていたら上達しないのではないかという不安だ。

 そしてお嬢様教育よりも魔法教育を重点的に進めるとなればクローディアがいい顔をしないだろう。

 なのでフェルナンではなくクローディアに魔法の教師を探してもらうことにした。

 頼りにされていると思ってくれれば授業が減っても嫌な顔はされないだろう。


 あとはどうやって残りの時間が三か月しかないことを彼らに告げるのか。

 この世界はホノカの世界のゲームと酷似しているなんて言ったら絶対に信じてもらえない事だけは確かだ。


「……聖女様の力って封印のほかに何かないの?」

「何かといわれれば……まったく」

「えっ、まったくないの?回復とか強化とか補助系とか」

「ないですよ」


 アリスは愕然とした。

 聖女様のイメージからして回復魔術は外せないだろう。


「なんでないのっ」

「まぁ……あのバッドエンディングを作っちゃう人たちが作ったゲームですからね……」

「だったら黒魔術の一つぐらい使ってみろって話だよね」


 どうせならとことん突き詰めてほしいものだ。

 聖女とはかけ離れたチートな魔法の一つくらい設定してもいいはずだ。


「それだと友情ルートでクローディアさんが死なないじゃないですか」

「えっ、そんな理由なの?」

「クローディアさんは聖女の腕の中で死ぬんです。そのスチルも綺麗で感動ものでした」


 制作側はいったい何を、そしてどこを目指していたのだろうか。


「…………壮絶だね」

「びっくりしましたけど、これをしたいがために回復魔法がないんだなって納得もしましたよ」


 他人事のように話すが、へたをすれば現実になることをホノカはわかっているのだろうか。

 わかっているがあえて他人事にしている節がある。


「……とりあえず、クローディア様か王子に、三か月後に封印が汚されるって話はしておいたほうがいいと思う」

「え~。電波な痛い子だと思われちゃいますよ」

「アストゥル様だと痛い腹を探られちゃうから、王子がいいかな。ホノカちゃんの色香で奴を落とせ」


 悪役のような顔をしているアリスにホノカはおずおずと反論する。


「恋愛ルートに入りたくないんですけど」

「だよね……。もう面倒くさいからさ、夢のお告げでいいよ」

「アリス姉さん~真剣に考えてくださいよ~」


 拝むように手を合わせながら上目遣いにこちらを見るホノカ。

 無駄に顔がいいのでちょっとくらっとくる。

 美少女のお願いという破壊力に

 この手で彼らを篭絡して手綱を握ってほしいものだ。

 大根役者な彼女には到底無理な話だろうが。


「よし…………予知夢で押し切れ。アストゥル様が疑おうがこっちの本気を見せればなんとかなる」

「なんとかって……んなアバウトすぎ」

「あやふやな事は掘り下げると墓穴を掘るの。だからあやふやなままにしておけばアストゥル様だって突っ込みようがないでしょ」

「限りなく不安……」

「私も一緒にいるから大丈夫。計画を立てましょう。三か月後を信じさせて、それまでに神力を上げる」


 ホノカの眉が八の字になる。

 アリスはくすりと笑った。


「もちろん、おいしいケーキを食べながらね!」

「アリス姉さんっ、どこまでもついて行きますぅ~っ!」


 泣きそうな顔で笑いながら、ホノカは元気よく声を上げた。

誤字脱字の訂正をしました。

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