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モブでいいよ  作者: ふにねこ
第一章 出会い
41/202

七日に一度は悪巧み 5


「使命か愛かってことは他にもバッドエンドがあるんでしょ?」


 まずい方向へ行く前にアリスはさっさと話を戻すことにした。


「ありますよ~。恋愛ルートは基本、使命ルートよりは神力の設定が低いんです。だから恋愛が失敗でも封印できる場合もあります。あ、起きる事件は中身が若干違うだけで設定は使命ルートと同じです」


恋愛ルートのバッドエンド

 クリストファー第二王子

           婚約騒動→封印に成功するも女嫌いに。

           グレイ小隊長とのツーショットで終わり

 フェルナン侯爵

           魔王復活を望む秘密結社→封印に失敗し、侯爵が死亡。

           魔王軍との戦いに奔走する聖女。

 オルベルト聖騎士

           教会の派閥争い→聖女を旗頭に自らが派閥を作って教会のトップを狙う。

 ジャック魔術師

           魔王復活を望む悪の魔法結社→封印に失敗、

           聖女は魔王軍に寝返ったジャックの実験台


 隠れキャラ

  グレイ小隊長   魔王復活を望む悪の秘密結社→封印に失敗、

           二人とも復活した魔王によって死亡

  ランスロット副隊長

           魔王復活を望む悪の秘密結社→封印に成功

           小隊長として活躍する彼を匍匐前進しながら茂みの陰で見守る



「えっ、なにこれ。恋愛ルートのバッドエンドってこんなのだったっけ?しかも王子に至ってはまさかの路線変更?オルベルトが黒い。ていうかジャック、ぶれねぇ……」

「バッドエンドはともかく、ハッピーエンドは定評がありましたよ。甘々で糖度が高くて」

「……そんなうんざり顔で言われても困るんだけど。てゆーかさ、何がよくてこのゲームをやったの?」


 素朴な疑問にホノカはにやりと笑った。


「要所要所に腐女子を刺激するようなシーンやスチルが違和感なく入っていたので、製作者側に腐女子がいたんじゃないかっていう評判を信じて」

「うん、穂香ちゃんもぶれないね」


 趣味に走りがちな人間というのはぶれないものなのだなと感心するしかない。


「一応、クローディアさんとの友情エンドもありましたよ。封印に成功すると仲良くお茶してるスチルが出ます」

「失敗すると?」

「二人一緒に魔王軍の奴隷になるか、クローディアさんが死んで私だけが奴隷になります」

「ああ……うん、とりあえず神力をあげてノーマルエンドを目指そうか」

「はい!」


 達観したのか諦めたのか、どこか遠い目をするアリスにホノカは元気よく頷いた。


「とりあえず、神力が思うように上がらないのが目下の悩みなのね?」

「そうなんですよねぇ」

「肝心なことを忘れていたけど、タイムリミットはいつなの?」

「教会めぐりが始まるのは三か月後です。今の調子だと間に合いませんね。てへっ」


 久しぶりに殺意を覚えたアリスだった。


「……今までの三か月は何をやっていたの?」

「何って、アリス姉さんが見てきたことをやってきただけですけど」

「開き直ってないで、少しは慌てたら?」

「いやぁ、アリス姉さんなら何とかしてくれそうな気がして」

「そんな他力本願、速攻で川に流してこい」


 にべなく言い放ったアリスはこの数日間の授業内容を思い浮かべた。

 この国の歴史、マナーやダンス、魔法の練習。


「レディの教育を受けてる場合じゃないよね?」

「それ、クローディアさんとか王子に言ってくれると嬉しいです」

「まぁ、世界を救った聖女様が王子の嫁になったら王国としては万々歳だしね……」

「だーかーらーそれだけは嫌~っ!いいですか、アリス姉さん、合言葉はノーマルエンドですよ!」


 鼻息も荒く言い放つ美少女の姿を見ながら、このままだと確実にやばい、とアリスは思った。

 確実に封印が破れて魔王が復活する。


「ジャック様はなんて言っているの?」


 ホノカの魔法教育はジャックに一任されている。


「う~ん、前も言いましたけど、なんでこんな簡単なことができないのかわからないって不思議そうな顔をするんです。あの人って研究者であって教師じゃないんですよね」


 ホノカの目がノートに向けられた。

 アリスもつられたようにジャックの項目に目を向け、そしてため息をついた。

 バッドエンドで聖女を実験体にするような奴にまともな教育ができるはずもない。


「だよね……。どっちのバッドエンドも魔王軍に寝返っちゃうような人だもんね……」

「研究し放題っていうのは、彼のようなタイプにはたまらないですからね」


 ぶっちゃけ大好きな魔法の研究さえできれば王であろうが魔王であろうが関係ないというスタンスの人間だ。


「となると……ジャック様には教師としての自覚をもってもらうところから始めるわけか……やれる気がしない」


 テーブルに突っ伏してしまいたいのを我慢しながら、アリスは問題の人物を思い浮かべる。

 魔法使いとしては優秀だが、教え導くとは縁遠い性格。

 ホノカの様子を見る限り、師弟の相性はあまりよくなさそうだ。

 普段は理詰めなくせに魔法を使うことに関しては感覚的なジャック。

 普段は感情的で感覚的に行動するがなぜか思考は理屈っぽいところがあるホノカ。


「あれ、前にジャック様は長くても二年くらいって言ってたよね?」


 であった頃にそんな話をしたような気がする。

 しかしホノカは三か月後と言った。


「はい。私の修行に一年半かけて、残りの半年で教会を回る予定でした」

()()()?」


 ひしひしと嫌な予感が湧き上がってくる。


「ぶっちゃけ三か月後に敵対勢力のせいで封印が弱まるので、予定が前倒しになるんです。だからあと三か月で神力あげないと」


 嫌なことを聞いてしまった。

 本当に時間がない。

 アリスはしばらくお空を見上げていたが、すぐに現実に戻るべくののほんとしたホノカに視線を戻す。


「それがわかっているなら王子に話せばいいのに」

「どのルートに入るかで封印の弱体化や方法や勢力が変わってくるんです」


 ゲームの製作者が変なところにこだわりを持つのはわかってきたのでアリスはもはや何も言わなかった。




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