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魔法学園

「これより、フィーリア・エル・テスラとレイ・リアード・ノヴルの

仮想空間魔術試合をはじめます!両者、位置についてっ!」


まばゆい金髪をなびかせた友人ルナが、

明るくまるで試合の司会者のようになりきって言い放つ。


ーー巫女は誰にでも平等でなければいけないよ。

強者であると驕ってもいけない。皆に平等に幸せと安寧をあたえるもの、

皆を魔獣から魔女から守る役目がある。それが巫女だよ。ーー


フィーリアは巫女のまとめ役・・長老さまの言葉を思い出しながら、

仮想空間に思念を飛ばすための魔法陣に足を踏み入れる。


魔獣の跋扈する世界から、魔獣を統べる魔女達の支配から皆を守るために

巫女の一族は結界を張って、魔法王国アモーレを築き上げた。


「ルールは先月と一緒でいいよね。両者、試合前の感想をどうぞ!」


ルナが学園指定の制服のネクタイを外してマイクのように持ちながら問いかける。

爛々と白金に光る瞳がまるで獲物を狙って離さない獣眼のようだ。

女児の制服のスカートがふわりとなびく。


「ルナ、仮想空間の空きを待つ生徒たちが増えてきたよ。

前置きが長すぎ。僕は面白いけど、レイもお怒りだ」


ルナの後方からやや急かす声がかかった。

声をかけたのは少年スィノ。

同じく学園指定の男児制服、ブレザーにワイシャツにネクタイにズボンといった格好だ。

緑髪に黒縁のメガネがその奥の翡翠色の瞳を際立たせる。


「・・別に怒ってはいない。が、この試合は絶対、勝つ。」


やけにフィーリアをにらみつけるように闘志を燃やしているのは

今回の試合の相手、レイだ。

藍色がかった蒼い髪に切れ長の漆黒の瞳の美青年。

フィーリアと同じく仮想空間に飛ぶための片割れの魔法陣に移動した。

かもしだされる冷酷な雰囲気でフィーリアを威圧する。


「・・レイ、私は・・」


貴方を傷つけたくない・・。


フィーリアは顔を上げていいかけて、やめた。


巫女は平等が信条。レイだけに遠慮なんかしちゃ、だめだよね・・。

レイに勝ってレイのプライドをまた傷つけることになっても、

傷つけたくないからって手を抜いたりしたら怒るよね・・


「うーっスィノのケチーッあたしたちだって待ったじゃん!

それに待ってるんじゃなくてこの試合が見たいだけじゃない?」


ルナが周囲を見渡して言う。

フィーリア含めて、

四人はアモーレ王国最高峰の魔法学園フォークス高等部所属の学生だ。


高等部一年に進級した四月下旬、

先日、毎月行われる学園の魔法試合に見事優勝を果たしたフィーリアだったが、

フィーリアに一歩及ばず負けたレイが、毎月しつこく仮想空間での試合を強要する。


すでに仮想空間を映し出すモニターの前に他の生徒が集まりだしていた。

毎月恒例行事と化したこの試合を知ってのことだろう。


「もう二人は準備オーケー?

じゃあ、魔法陣を作動させるよ!」


ルナの言葉に二人はうなずく。


ルナは床に膝をつき、二つの魔法陣に掌で触れた。


ルナの手のひらに魔力が集中する。


「!!」


ルナの気迫が伝わった。


次の瞬間、空気が震えて魔法陣が光を放ち、

フィーリアとレイの思念は仮想空間に飛ばされた。




***



フィーリアはふわりとその場に降り立つ。

対峙する前方にレイが降りたった。


辺りは何もない草原。

さわやかな風が疑似的に凪いでいる。


魔法陣は踏み入れた者の仮の身体を仮想空間で創造し、使用者の思念体を同調させる。

つまり本物の身体は魔法陣に直立したまま。

仮想空間で、いくら魔法を使用して身体が傷つこうとも

本物の身体である実体は傷つかない。


それでも思念体は感じ取る。

魔法による体への痛みはなくても、

身体へ走った衝撃など感覚はまるで本当に魔法を受けたかのように。


仮の体の存続不可能にまで追い込むか、

意識を失わせ、魂と体の同調を妨げるかの二択で勝敗が決まる。


「今日こそは、お前に勝たせてもらう」


レイが言った。

と同時に手を正面にかざすと、火の魔法陣が現れた。


紅蓮の炎が草原を火の海と化し、フィーリアに襲い掛かった。




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