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没入 (お題 : 森、地平線、輝く枝)

ある夜、男の子が目を覚ますと、部屋中に光が満ちていた。光源は木の小枝である。男の子は眠そうに目をこすりながらそっと部屋の外に出た。部屋の左右から寝息が聞こえる。両親が睡眠中であることを察し、手に小枝を握り締め、慣れた動きで家の外へと脱出した。


今日はいつもより出遅れてしまい、男の子の中で焦りが生まれていた。小枝の光を頼りにして、男の子は暗闇に閉ざされた森へと駆け込んだ。無造作に絡み合う木の枝をかきわけて、体のあちこちに擦り傷を負いながら、無我夢中で突き進んだ。しばらくして小枝の光が小道を浮かび上がらせた。目的地は近い。男の子の足取りは段々と軽くなっていった。と同時に、小枝の光が徐々に明るさを強めていった。その明るさには柔らかな温もりが含まれていて、男の子はちっとも恐怖を感じなかった。やがて小道の先に切り株が見えてきた。小枝の光は限界まで強まり、男の子は目を覆いながら突っ走った。切り株に到着すると、男の子は切り株の中心に開いた穴を目がけて小枝を突き刺した。と、次の瞬間、小枝を中心に強烈な光が四方八方に拡散した。男の子は両手で目を覆ったが、光は男の子の中へと無造作に侵入した。ついに男の子は光と一体となった。


男の子の周りの景色は蜃気楼のように揺らぎ、さらに耳鳴りや目眩をもたらした。やがて景色の揺らぎはすうっと収まり、身体器官も正常にもどった。あたりは緑一色の芝生で覆われており、見渡す限りの地平線である。男の子は深呼吸をし、ヘルメットを装着した。そして体に不相応な大きめのバイクにまたがり、エンジンを唸らせた。目指すは地平線。誰もいない巨大な空間で爆音を轟かせ、男の子は大きな快感を味わった。すると、また男の子に光が直射した。男の子はしばらく光の中を彷徨い歩いた。そして目を見開くと、そこは深海だった。檻の中にいる男の子は、檻ごと海のより深い地点へと沈んでいった。体が深いところへと没入する感覚、深海の神秘的な光景、今にも襲いかかってきそうな巨大サメの迫力、すべてが男の子にとって新鮮であった。そしてまた光に覆われた・・・


朝、目を覚ますと、男の子は切り株のそばで横たわっていた。眠そうに目をこすりつつ切り株に突き刺した小枝を引き抜き、来た道をゆったりと戻っていった。男の子はなんとも言えない満足感を胸に抱きながら、小枝を大事そうに握り締めた。



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