課長のいたずら
あぁ、今日もやってきた。
「何食べてるの?」
「見てわかりませんか。お昼ごはんです」
「私の分はないのかな?」
「ありませんって」
いつも言ってるじゃないですか。これ毎日言ってますよ。
ボクは覗きこんでくる課長の顔を見て、ひとつ溜め息をつく。
「それおいしい?」
「ええ、まぁ。自分で作っておいて言うのも変ですが」
「私の分はないのかな?」
「ありませんって」
何度言わせるんですか。全くもう。
「課長のごはんはさっき渡したじゃないですか」
「うん、そうなんだけどね」
「それ食べてくださいよ。他人のもの食べようとしないでくださいよ」
そろりと伸ばされた課長の手を、やんわりと押し戻す。
「ちょっと課長」
「それおいしい?」
「だから課長」
「私の分はないのかな?」
「いや課長」
本当、困りますって。もうやめてくださいよ。
「課長のカリカリごはんはあそこにありますから、そっち食べてくださいよ」
「それおいしい?」
あぁ、もう。
え、ちょっと。今度は何ですか。急にボクの膝に乗らないでください。
ついでにとばかりに伸びしないでください。あと、爪痛いです。
「さあさあ」
「あの課長」
「撫でてくれ」
「え?」
「早く撫でてくれ」
「あぁ…」
しょうがないですね。頭ですか。
あ、違うんですね。すみません。
「ところでそれおいしい?」
「課長…」
暫くお昼ごはんは食べられそうにないな…。