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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

一緒に逝きましょう?

作者: RYUUSEI

投稿2作品目です。

文章、内容ともに稚拙かと思われますが、よろしくお願いします。

なお、作者は乙女ゲームをやったことはありません。ギャルゲーはありますけど・・・

 あぁ、やっとこの時がきたわ。


「ジュリエーヌ・アハトワス、ユリーナに嫌がらせをしていたな。貴様の様なものとは婚約破棄だ。」


 終業式に集合教室で起きる、悪役令嬢であるジュリエーヌ・アハトワス伯爵令嬢の断罪イベント。なかなかフラグが立たなくて焦ったけど、ここまできたと思うと嬉しさのあまり顔がにやけてしまいそうだわ。これで私は愛しいファルコ様と一緒になれる。だって私はこの世界のヒロインなんですもの。



 私が乙女ゲーの『秘密の花壇で華と語らう』という世界に転生したと気付いたのは、舞台であるフォーツ学園の入学式。檀上に在校生の生徒代表で挨拶をする攻略対象者のファルコ様を見て気が付いたの。そして、自分はこの世界のヒロインであるユリーナ・ディエラー男爵令嬢であることも。

 

 ヒロインであるユリーナは、幼少のころから家族と接することが少ないため寂しい思いをして過ごしていく。きっかけは、ユリーナが4歳のころに大好きな母を病で亡くなってしまうから。そして母を亡くした父は悲しみを紛らわすために領地経営にのめりこんでいくの。また、跡継ぎである5歳上のやさしかった兄は父以上に母を忘れるかのごとく座学と習い事へと熱中していく。

 家族はその様な状態になってしまったためにユリーナはかまってもらえず、将来は貴族の誰かに嫁ぐためにと日々淑女としての教育を受けていくことになる。だけどある日、母が愛した庭の小さい花壇の事を思い出す。走って向かった小さな花壇は綺麗な花々を咲かせていたとは思えないほどに荒れており、自身の心を表してるかのように感じてしまうんだけど、母との幼い思い出がよみがえり花壇に花を咲かせようと孤軍奮闘していく。そして、その花壇を母の生前と同じように綺麗な花を咲かせていく過程で、父と兄と少しずつ接していくようになり、やがて一緒に花を愛でながら母との思いでを語るようになる。

 そして月日が経ち14歳になったころ、兄が卒業した学園であるフォーツ学園に入学することになる。

 ここまでは『秘密の花壇で華と語らう』が始まる前の設定だったけれど、私が過ごしてきた生い立ちを同じだった。ならば、この先も同じかもしれない。

 

 私が知っている通りであれば、入学当初、周囲の人達が仲良くなっていくのに対して、ヒロインは周りにうまく馴染めず、友人がつくれないでいた。そんな中で幼少期を思い出し、現状を変えたくて花壇を作り始める。その後、花壇の手入れやお花を咲かせていくうちに攻略対象者と知り合っていく。

 攻略対象者は全部で4人。

 国の宰相を多く輩出してきたとされる名家の公爵家嫡男で、2個上の学年で主席。周囲からは必要な時以外喋らないとされている無口なファルコ・ラルムルト。

 国で今最も影響をもつとされている商家の次男で、1個上の学年に所属しており、巧みな話術で周りを魅了するローリオ・フェルド。

 平民でありながら国の騎士団の副団長に幼いころから師事し、騎士団に入団することが見込まれている、同学年の熱血でひたむきなマッティ。

 このフォーツ学園でゆくゆくは学園長まで上り詰める教師で、ふわふわと天然な感じがするアーロフ・ベティア。

 この4人はそれぞれ悩みを持っている。ファルコ様は自分のお家の立場を理解されているからこそ、安易に発言しないようにしているために周囲の人と距離を置いている。ローリオは商家の跡取りではないから、家に対して自分が有益だと示すために話術で商売になるようなことを探している。マッティは将来入団する騎士団が、貴族の後継者から外れた次男、三男達が多いことに不安を抱えている。そして、アーロフ教諭はこの学園に自分が新任として配属されたときに起きた不祥事が元で、生徒たちを導いていくことに対して自信を持てないでいる。

 そんな4人の攻略対象者と学園の裏庭に作った『秘密の花壇』にて綺麗に咲いた花々を愛でながら悩みを聞き、時には喧嘩したりと語らいながら、愛をゆっくりと紡いでいく。


 逆ハーエンドのない乙女ゲーだったけれども、でてきたキャラの見た目や設定が私好みだったから夢中になってやりこんでフルコンプしたわ。それに物語の途中までは全員同時に攻略が進められたので、他のゲームと比較するとやりやすかったわ。あれ?そういえばこのゲーム誰に勧められたのかしら?思い出せないわ。まぁ、いいわ。それよりもせっかくヒロインに生まれ変わったって気づいたのだから、攻略対象者達を落として逆ハーを楽しみましょう。最後に誰とエンディングを迎えるかは、同時攻略しながら決めればいいわ。


 攻略すると決めたならば、最初に花壇を作らければいけない。何故ならば、ゲームのタイトルにある『秘密の花壇』を作り多種多様な花を咲かせていくことによってフラグが立っていくから。

 買った当初はまさか花壇から作らないといけないとは思わなかったけどね。ただこの最初の花壇作りだけども、作ろうとすることによってフラグが2つ立つわ。アーロフ教諭に『秘密の花壇』を作っても問題ない場所の確認の確認のために、商人のローリオ様は咲かせる花の種を購入する時に。花壇ができてからは咲かせる花によって、ファルコ様とマッティ君のフラグが。

 



 花壇を作った後の攻略は順調に進んで行ったわ。そして、私はファルコ様を選ぶことに決めたの。だって、ゲームの時と同じエンディングをむかえられるのなら、豪華な結婚式に裕福な暮らし、傍らには優しくって頼りになるイケメンの旦那様を選んじゃうわ。

 だけど、予想外のことが起きた。断罪イベントを起こすためには、ファルコ様の婚約者である悪役令嬢のジュリエーヌにいじめてもらわないといけないのに、全く何もしてこないの。

 この断罪イベントはファルコ様ルートのみ起こるイベントで、これを起こさないとヒロインはラストで日陰者にされてしまう。嫌よ、日陰者なんて。他の対象者達は、それぞれの婚約者や幼馴染に別れを告げたことをヒロインに告げて、愛を告白してエンディングへむかっていくのに。でも、断罪イベントの時は攻略対象者が全員そろっていたから、ファルコ様ってやっぱり凄い方だと思えてしまうのよね。

 フラグを立てるために自作自演も考えたけれども、まずはジュリエーヌをあおってみることにしたの。イベントには無かったけど、ファルコ様との仲を見せつけることによって。

 最初は手を握り、腕を組んでみたりとしていただけど、効果がなかったから、最後にはキスをしてみた。そうしたらやっとキスをした次の日から、少しずつだけれど、物がなくなったり傷つけられるようになっていった。だけど、ここ最近水をかけられたり、棚が倒れてきたり、階段から突き落とされそうになったのはビックリしたわ。本編ではそんな描写なかったし。

 でも断罪イベントには持ち込めたし、これで安心できたわ。

 


「伯爵令嬢ともあろうお方が嫌がらせをするなんて、どういう教育を受けてきたのですか」

「ユリーナさんがどんな思いで嫌がらせを受けてきたと思っているのですか」

「ユリーナさんは僕が守ります」

「アハトワス卿には私から貴様の所業を伝えてやる」


 あぁ、ファルコ様、ローリオ様、マッティ君、アーロフ教諭。あなた方にかばわれてると思うと、うれしくてどうにかなってしまいそうだわ。でも、顔に出ないように我慢しなくては。


「フフフ……嫌がらせですか?」


 あれ?こんな場面ゲームであったかな……。


「ジュリエーヌさん、もしかして知らないふりをするつもりですか?」

「いいえ、自分がやった事に対しては認めますわ」


 あれ?なんでだろう……。


「自分がやった事?」

「そうですわ。確かにユリーナさんのものを無くしたり傷をつけたりはしました」


 なんで、体が重く感じるの……。


「けれど、あなたに水をかけたり、棚を倒したり、階段から突き落とそうはしておりませんわ」


 なんで、私の体はこんなに震えているの……。 


「ではあなた以外に誰が私にけがをさせようとしたって言うのよ」

「フフフ……ユリーナさん、周囲を確認して御覧なさい」


 その言葉を聞いてすぐ周りを見たら、いつの間にか秘密の花壇にいた。そして綺麗に咲かせていたはずの花々は真っ黒い霧におおわれていた。


「え?何で……?集合教室にいたはずなのに」


 わけがわからない。だって、先ほどまで集合教室にいたのよ。何でこんなところにいるの?断罪イベントにこんなものはなかったわ。


「フフフ……ユリーナさん、もう一度聞きますわ」

「え?」 


 なんでだろう……これ以上ここにいてはいけない気がするのは……。


「貴方は、私が水をかけたり、棚を倒したり、息が吸えないように苦しめたり、階段から突き落とそうとしたと言うんですね?」

「そ、そう……え?息が吸えないように……」


 どうしてそれを……震えが……止まらない。


「フフフ……あら?ユリーナさん、体が震えているわよ」


 何故だかわからない……わからないけど、怖い……怖いよ、怖いよ。


「フフフ……周囲の人とお話して、少し落ち着いたらいかがかしら?」


 そ、そうだわ、ファルコ様、ローリオ様、マッティ君、アーロフ教諭と話せばきっと大丈夫だわ。


「ファ、ファル……ヒィッ」


 声を掛けようとファルコ様の方を見たら。

 首があり得ない方向へねじ曲がっていたファルコ様がニタリと笑ってこちらを見ていた。

 助けを求めようと皆の方を振り返ったら。

 アーロフ教諭は潰れていて、体から骨らしいものが突き破っていた。

 ローリオ様は全身水浸しになっており、ぶつぶつと何か呟いている。

 マッティ君は苦しいのか首を必死でかきむしっている。そのせいで首からしたは真っ赤に染まっていた。


「な、なによ、これ……」


 怖い、怖い……頭では、ここから逃げろって……でも……足が……動かない……なんで……動かないの……


「フフフ……それにしても、死んでいる人間が婚約破棄って面白いわね」


 私の後ろからジュリエーヌの声が……聞こえてくる……。


「貴方もそう思いませんか?ユリーナ様」


 これ以上、彼女と話をしてはいけない、逃げないと、逃げないと……お願い、私の足、動いて、お願い……


「フフフ……ユリーナ様、人と話すときは、話す人と向き合ってお話しするべきですわ」


 いやだ、振り向きたくない……振り向いてはいけない……


「フフフ……ユリーナ様、だから、こちらを振り向いてください」


 なんで……なんで、彼女の方を振り向こうとするの……やめて、振り向かせないで……やめて、やめて……お願いします、やめてください……


 




 振り向かせられた私が見たものは黒い霧をまとい、首をつりながらこちらを見て笑っている彼女だった。



「な、なんなのよ、これ……こんなことはゲームで起きなかったわ……う、うそでしょ……なんなのよ……」

『フフフ……』


 逃げたい、ここから逃げたい……だれか……だれか……


「だ、だれか……たす、たすけて……たすけてよ……」

『フフフ……助けて……ね』


 そうです、お願いします、助けてください、お願いします、助けてください、お願いします、助けてください……


『フフフ……でもねぇ、あなたの周りの人たちはあなたを待っているみたいなのよ。だって、あなたを一生懸命に殺そうとしているんですもの』


 いやだ……いやだ、いやだ、いやだ、いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ


『ねぇ、だから貴方も一緒に逝きましょう?』


 そう彼女が告げた途端、黒い霧は虫のような形になって私に向かって飛んできた。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」











 ある日、学園の教室で首をつっているジュリエーヌ伯爵令嬢が遺書と共に発見された。

 遺書の中身は婚約者であるファルコがどれだけ大好きか、そんな大好きなファルコがユリーナと仲睦しくしていたことに対してどれだけ絶望したかと書かれていたらしい。


 そして、ジュリエーヌの自殺から4件の変死事件が起きた。

 最初は、準備室にてアーロフ教諭が倒れた棚の下で圧死していた。発見したのは担当授業なのに来ない教諭を探していた生徒たちで、ローリオは第一発見者だった。

 その次に剣術の朝稽古をしよう早朝に登校したマッティが、噴水の中で溺死しているローリオを発見した。

 そのマッティも発見から数日後の授業中に突如苦しみだし、保健室へ行った。その保健室へついて数分後にいきなり首をかきむしりだし絶命した。その場には体調の優れなかったファルコが保健室で休んでいたため居合わせることになる。

 そして最後にファルコは階段から落ち首の骨を折って死亡した。あり得ないほど首がねじ曲がった状態だったそうだ。

 死亡した4人はユリーナに懸想していたことは周知であったため、最初はアーロフ教諭をローリオが、ローリオをマッティが、マッティはファルコが殺したのではないかと。ファルコについてはライバルがいなくなったことによる安堵か、殺してしまった罪悪感にかられ心あらずで階段を踏み外したのではと噂された。一部では婚約者であったジュリエーヌが呪い殺したのではないかとも噂された。

 この後にユリーナ・ディエラー男爵令嬢は、終業式を前に失踪してしまう。実はこの4人を殺したので逃げたのでは?真相を知っていて誰かにさらわれたのでは?と新たに噂されているが依然として行方は分からないらしい。











 さらに数年後、このフォーツ学園ではある日を境に噂が流れ始める。


 前準備室だった場所では、何かがグシャッと潰れる音と野太い悲鳴が聞こえると。

 校門近くの噴水広場ではびしょ濡れの男がぶつぶつ言いながら徘徊しており、声をかけると噴水の中に引き込まれそうになると。

 保健室で人が苦しみの声をあげており、室内に入ると床が一面真っ赤になっていると。

 階段では首がねじまがった男が大きな声で笑いながら追いかけてくると。

 学校の裏庭からはこの世のものとは思えないほどの女性の奇声が聞こえてくると。

 そして……






「ねぇねぇ、このまえ先生が前準備室の前を通った時に男の人の悲鳴がしたんでですって。でも、悲鳴が聞こえてきた場所を確認したら誰もいなかったんだって」

「あら、そうなんですの?」

「それでね、それでね」

「フフフ……それでしたら、私も一つ知っているものがございますわ」

「え、どんな話?教えて、教えて」

「フフフ……ええ、よろしいですわ……」






 教室では首をつっている女性がにこやかな笑顔でこちらを見ながら




           『ねぇ

            

                    あなたも一緒に

            

                                  逝きましょう?』




と。





最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ご感想、アドバイスがおありになれば、どうぞよろしくお願いいたします。

心をえぐるような文言だけは、なにとぞお許しください。


補足

作品の補足というか、内容を思いついた経緯なのですが、婚約破棄といえば悪役令嬢。夏といえばホラー。よし、合体してみよう。という感じです。

それと七不思議になるように書かせていただきました。最後の方だけだと六不思議なのでは?と思われそうなのですが・・・


今後も何か思いついたら、また書こうと思っておりますので、よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] ホラー枠?と思ったらその他… 怖かったです。
[一言] ・・・実は、花壇があった場所が元々いわく付きの場所だった、かも知れませんね。(桜の下の死体みたいな感じ)
[良い点] やべぇ、こえぇぇぇ(((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル [一言] >最後の方だけだと六不思議なのでは?と思われそうなのですが・・・ 七不思議は最後のひとつを知ると、異世界に引きずり込…
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