10.5小さな皇帝の鶯
本日2度目の更新です。今回は皇帝こと不知火薄暮くん視点です。
今回のは少し(?)暗いお話かつ、淡々としています。そのうち改稿するかもしれませんが。
お前誰だ。
最近俺 不知火薄暮は、とあるクラスメイトに対しいつしかそう思うようになっていた。
☆
鶯宮色葉、その名前を知らぬものはこの学園にはいないだろう。鶯宮色葉といえば、自己中心的な考え方と傲慢な態度。しかし、頭はパーなバカ。そんなイメージだ。
鶯宮色葉は、あの鶯宮と呼ばれるよき人格者、樹様と華世子様の娘であり春宮と名高い世色季様の妹でありながら、その性格の悪さから学園中から嫌われている。
そんな、鶯宮色葉が最近様子がおかしいのだ。いや、まるで中身が変わってしまったかのようだった。
カエルを可愛いと言ったり、柴田先生の授業でちゃんと答えられたり、まるで別人だった。そのことは、柴田先生もだし、春海桜子を含めたクラスメイト全員がそう思っていた。
☆
「……くん、薄暮くん!」
「……、あ、実美か。」
放課後の生徒会室。仕事の終わった俺はいつの間にか寝てしまっていたようで。
今俺の前にいるのは花澤実美。傲慢な性格になっていた俺を正しい道に導いてくれたこの学園の女子生徒だ。実美は俺だけじゃなくて、柴田先生や朝衣雨など様々なクセの強い人達を導いており、実美に恋をしている俺のライバルは多い。
実美はとても素敵な女性なのだ。
でも、なんだろう。最近、俺のこの思いは偽りのような気がしてしまう。なにか、心の中に突っかかる物がある。
「もう!話しかけても返事してくれないから心配しちゃったよ!」
「……、すまない。」
「もう!薄暮くん、無理しちゃダメだよ!」
実美がそう言ったとき、とある小さな女の子を思い出した。その子は俺に向かって……
『はくぼくんががんばっているのは、いろはがしってるよ!だからね、えっと、たおれちゃうぐらいまでがんばらなくていいんだよ?』
俺は、小さい頃周りに認められたくて頑張っていた。けど、結果は全てが空回り。不知火の跡取りとして周りから失望されたくなくて、その時の俺は愚かで周りが密かに俺を心配してくれていたことに気づいていなくて……。ある時、無理をしすぎて倒れてしまった。そんな時、ちょうど不知火家に訪問しに来ていたとある少女が俺にそう告げた。その子は、俺の婚約者だった。婚約者の彼女は俺の努力をちゃんと知っていて……。俺は彼女が好きだった。
でも、俺は、俺は、年を重ねる度に努力以上の結果が出て来て、天狗になって、傲慢になった俺は、努力しても結果のでない彼女を嘲笑って。そして、俺はそんな彼女が自分には相応しくないなどと言って、婚約を解消して……。
「薄暮くん?」
どうして、俺は忘れていたのだろう。彼女は、鶯宮色葉は俺の唯一の理解者だったのに。
「薄暮くん!?どこに行くの!?」
俺は立ち上がり荷物を手に取り上着を羽織る。家に帰る電話を入れ、校門へと急ぐ。後ろから実美が俺を呼んでいるけれど、家に帰って確かめたいことのある俺は一度も振り返らなかった。校門でイライラしながら、車を待つ。やっときた車に乗り込み、家へと急いでもらった。
☆
「何を今更言っているの?色葉ちゃんは確かに貴方の婚約者でしたが……?それがどうかしたのですか?」
「母さん、もう一つ聞いてもいいか?」
「……?ええ、どうぞ?」
俺は家に帰ると、母に頼み両親の秘蔵の『薄暮たん成長過程メモリアル』(俺のアルバム)を見してもらった。(親バカなんだよ(苦笑) )
そこには、笑顔で写る今よりも幼い鶯宮色葉とそっぽを向きながらも照れている小さな俺がいた。ページをめくっていけば、どんどん俺と笑顔の少女の距離は広がり、いや、それだけじゃなくて、どんどん少女の顔からは笑顔ではなく悲しそうな顔が増えていった。
そんな写真を見た俺は母親に『俺とこの子は婚約者だったんだよな?』と尋ねてみたのであった。
「母さんは、彼女の悪い噂を聞いたことは……?」
そう俺が尋ねると、それまで穏やかにお茶を飲んでいた母さんは、突然ティーカップをソーサーにガシャン!と激しい音をたてながら置いて、
「それは、色葉ちゃんが悪女っていう噂かしら!」
と怒りを滲ませながらそう言った。
「あ、うん……。それ。」
俺は、普段穏やかな母さんが怒るのに少し驚き恐れながらもそう言った。
「そんな噂、ぜっっっったい嘘よ!偽りよ!」
「……どうして母さんはそう思うんだ?」
すると、母さんはキッと俺を睨みつけてきた。怖っ
「薄暮!あんた、もしかして忘れたの!?それに、あんた花澤実美って女に惚れてるらしいわね!」
「……え、あ、はい!」
「……はぁ、我が息子ながら情けない。本当にいい女が分からないなんて……」
「(ムッ!)なんだよ、母さん!学園内で鶯宮色葉は、傲慢な態度ばかり取っていたし、実美をイジメていたんだぞ!」
「……。」
俺が反論すると母さんは黙って、俺の手元の『薄暮たん成長過程メモリアル』を手に取ると、
ドカッ!
「痛っ!!な、何すんだよ!」
『薄暮たん成長過程メモリアル』(の角)で俺を殴った。
「あ、ん、た、は、ね、バカかっ!」
「!どういう意味だよ!」
「彼女が傲慢……?そんなわけ無い!もしそうだったとしても、あんたが色葉ちゃんにケチつけられるの?あんたの傲慢さで、あの子との婚約を解消したのに?
色葉ちゃんが花澤実美とやらをイジメていた?あんた、ちゃんと色葉ちゃんの言い分を聞いたの?どうせ、花澤実美とやらの話しか聞かなかったんでしょう?物事は客観的に見なさいと教えているのに!この、バカ息子!
はぁ、わたしは疲れたわ。『薄暮たん成長過程メモリアル』はそこの棚にしまっておきなさい。じゃあね。」
母さんはすごい剣幕で俺に怒鳴りながらそう言うと、自分の部屋へと向かって姿を消した。俺は、母さんに言われたことに頭を殴られ、しばらく呆然としていた。
☆
俺は間違っていたのか?俺は……。
そんな考えばかりが頭を巡る。
今のクラスは春海の計らいで、鶯宮色葉に優しいクラスになっている。学園中から嫌われている鶯宮色葉は、きっと精神を病んでしまったのだ。だから、あんな別人に……。
あれ?どうして、どうして、小さい頃の笑顔の彼女は、悪女になったんだろう。小さな俺が知っている彼女は、平凡だったけれど決して他人をバカにしなかったし、むしろ自分の平凡さを嘆いていた。他人を羨みながらも、他人にはいつも同じ態度でいた。
あの時、そうあの時、
「鶯宮、お前最低だな。」
「人間として終わっているよ。」
「こいつが可愛そうだと思わないのかよ!」
「お前にいいところなんてないな。」
「御家族にも迷惑をかけているというのに、自分は関係ないとでも」
「彼女をイジメていたのはお前なんだろ!?」
「……。」
実美に惚れた俺たちが、鶯宮を責めたとき、彼女は何か言おうとしていた。なのに、なのに、俺は……?
グラッ
「うわっ」
いきなり、目が廻った。そんな俺の目には
『はくぼくん!(ニコッ)』
笑顔の少女が。でも、少女はどんどんとぐちゃぐちゃになって、そして、世界は暗転した。
◆
俺は、目を開けた。
「……ど、どうして……!」
「い、いろはぁ!!!」
「…………ハハ、ゴメンゴメンゴメン」
「色葉ちゃん……?」
「……。」
黒と白の幕が張り巡らされ、1箇所に花が飾られ、その花の真ん中には眉を下げながらも困り顔で笑う鶯宮色葉の写真。
喪服を着た彼女の両親は泣き叫び、兄は力なく笑っている。俺の母さんは呆然と立ち尽くし、父さんは手で喪服を握り締めながら無言だった。
学園関係者として参列する奴もいてその数は決して少ないとは言えないだろう。
その中には、柴田先生も春海も朝衣も……色々居る。そして、花澤実美も居る。
「……自殺ですって……」
「……まあ、そうですの?」
「イジメられていたという噂よ?」
「これで、鶯宮の汚点がなくなりましたな」
「おい、黙ってろよ。本家の御家族はその汚点が大好きらしいからな」
「しかし、自殺か」
「もう少し、マシにしんでほしいものだよな」
彼女が自殺した?どうして?学園でのイジメで?
「……、薄暮くん。」
「!、実美か。どうした?」
呆然としていた俺の腕を掴んできたのは実美だった。
……彼女に一つだけ聞こう。
「実美、鶯宮色葉はお前にとってなんだった?」
すると、彼女は
「……親友だよ……?」
口を三日月にしながら、そう答えた。
◆
「おい、春海。」
「なんでしょうか、不知火様?」
俺は、春海桜子に話しかけた。
「俺と、クイズ大会に出ないか?」
「……?なぜですの?というよりも、そもそも参加人数は3人ですわ。1人足りませんわ」
「……、鶯宮色葉が出たがっているとしても?」
「……!そうんなんですの?なら……(ポッ)」
ちなみに、春海は鶯宮色葉大好きっ子である。春海が言うには、
『まず、あの見た目ですわ!令嬢というのにふんわりとした感じが食べてしまいたい!次に、話す時に人の目が見れないとこ!今話題のコミュ障ってやつですわ!それに……(以下略)』
(俺が、じゃあどうしてイジメていたのかと聞いてみたところ、『好きな子ほどイジメたいじゃありませんか!でも、最近は自重することにしてますわ!精神を病まれた鶯姫も萌えますわ!はっ、でもこれ以上病まれては……ダメですわ!』とのことだ。あと、鶯姫とは鶯宮色葉の尊称らしい)
鶯宮色葉がクイズ大会に出たいことは、少し前に知った。放課後の図書室でブツブツとそんなことを呟いていたからだ。
今、俺が鶯に抱いている気持ちは幼い頃と同じものなのか、それとも罪悪感なのかよくわからないけれど、ただ一つだけ言えるのは、俺を許してくれなくてもいいから自己満足だけれど-------俺は君に幼い頃の恩返しがしたいんだ。
本物の鶯宮色葉が自殺した理由はイジメよりも、何度も同じことを繰り返していたことが原因となっています。そして、鶯宮色葉が自殺してしまったあと宮本色葉が彼女の中身となったのでした。




