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連鎖怪談  作者: mystery
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【連鎖怪談 其の五】〜置き去りの日本藤人形〜

ある日、宿泊客が帰った後にベットメイクの係りがクローゼットを開けたら、日本人形の忘れ物を発見しました。


でもこの人形、ちょっと変わっていて、一応、藤娘と言われる日本人形ですが、左の手に”藤の花”と”鎌”を持っているのですが…もう片方の右手は取れてしまったのか元々最初からありませんでした。


何よりも最も不気味だったのは人形の命とも言うべき顔が、何かで削り取られたような跡があった事です。

つまり顔の無い人形です。

皆、

「なんかイヤだな」

と言っていましたが、忘れ物は6ヶ月は保管しておかなければならない義務があるので、他の衣類や時計などの忘れ物と一緒に保管していました。


そしたら、メイク係り担当の中で気っ風がいいタイプの従業員が悪ふざけで、

「何怖がっているのよ、こんなの。何でもないじゃない!」

と人形を持ち上げて

「ホレホレホレ」

と調子に乗って、他のスタッフを怖がらせて楽しんでいました。


翌日、人形で悪ふざけをして遊んでいた従業員が真っ青になって飛び込んで来ました。

聞いてみると、家で育てていた菊の花が、全部バッサリと鎌で、花の頭から切り落とされていたそうです。

それで

「辞めたいんですけど」

と言い、その次の日から来なくなりました。


じゃあ、人形供養の寺に持って行ったらどうだろう?とオーナー(仮称 筒井)が言い出して、実際いざ行こうとすると、車のエンジンがかからない、クラクションが鳴りやまない、室内ランプが点いたり消えたり、ヘッドライトが点かないなど信じられないトラブルが立て続けに次々と起こって車が動かなくなってしまうのです。


こんな事が起こると、本当に何とかしなければいけないなという事になり、探偵に頼んでこの人形を持ち込んだ人を突き止めてもらいました。


そしてその人形の持ち主の家を訪ねて、

「日本人形を忘れていかれませんでしたか?」

と聞きました。

そしたら、その住人、一瞬、顔色を変えて

「申し訳ありませんでした。」

と、すぐに認めたのです。


さらに話しを聞くと、こんな事を言うのです。

「悪いとは思ったのですが、おたくさんで忘れ物処分してもらおうと思ったんです…でも、やっぱり戻って来ちゃいましたか…実はこの人形、うちの妻の怨念が全部入っているんですよ…」


直感的に、これ以上聞くと、引きずり込まれると思ったので、とりあえず引き取りに来てもらう事にして、その場を立ち去りやっと開放されました。


その帰り道、あの辞めたメイク係りの従業員の自宅にも行って、

「もう解決したよ」

と教えてあげたのですが、そしたら

「実はね…」

と言って、元従業員が背中をめくって見せるのです。

そこには鎌で斬られたような傷痕が、みみず腫れのようになって

”シネ”という文字が浮き出ていたのです。

さらにその右手には無数の”切る”、というよりは”削ぎ落とす”、という衝動に駆られたような痛々しいリストカットの痕が…


その時、筒井オーナーは自分の身にまとわり付く不穏な、ただならぬ空気を感じ取りました。

”自分の周りでうごめく顔と右手の無い異質な存在”に…


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