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土佐の高知は、今日も晴れぜよ!  作者: はちきん乙女
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高知弁ではなく、土佐弁と言いたい。

 いきなりですが、高知と聞いて、皆さんはどんなことを思い浮かべるでしょうか?

 鰹のタタキ? それともよさこい祭りかな? あるいは、やなせたかし(アンパンマンの作者です)とか、広末涼子とか、呑んべえの高知東生だったり?

 でもまあ、誰もが一番思い浮かべるのは、やっぱり去年の大河ドラマでも主人公だった坂本龍馬ではないでしょうか。

 もちろん、高知県民にとっても、龍馬は土佐を代表する偉人です。

 なんてったって、幕末の偉人の中では全国区の人気ですし、郷土の自慢で誇りです。随分前ですが、龍馬人気にあやかって、「高知空港」も「高知龍馬空港」へと名前を変えたほどですし、他にも「龍馬学園」(専門学校です)や、「龍馬タクシー」「龍馬観光」と、龍馬という名前を付けた会社や施設が県内にはたくさんあります。おそらく、高知で龍馬を嫌いだという人は、いないと言っても過言ではないでしょう。

 なので私、最初はとっても楽しみにしていたんですよ、NHKの「龍馬伝」。

 何しろ、あの福山雅治が主演ですし、脚本は「ガリレオ」の福田靖とくれば、当然話題にもなります。そして噂を聞けば、やはり関心も高まるものです。

 まあ、個人的にはそれほど福山雅治のファンではなかったので、正直言って「福山雅治が龍馬役ってのは、ちょっとイメージに合わないなー」とは思いました。でも、それで高知が話題になるのなら、高知県民としてはとっても嬉しい。なので、本当に楽しみにしていたんですよね、「龍馬伝」。

 でも、放送が始まってから二、三回目までを見たところで、私は見るのをやめてしまいました。

 なぜかと言いますと……。

 非常に言いにくいのですが、主役の福山雅治の土佐弁が、めっちゃ下手くそだったからなんです。

 あ、香川照之さんは、まあまあ上手でしたよ。宮迫くんもうまかった。あとはもちろんですが、高知県出身の島崎和歌子はお手本ものです(最終回までちゃんと見ていないので、中盤に出演された役者さんについてはよくわかりませんが、総集編とかでちらっと見た大泉さんと青木くんもまあまあ上手でした)。

 でも……福山は……残念ながら……下手。

 初回は家族で観ていたんです。でもね、もう、ストーリーより、福山の土佐弁の下手さの方が気になってしょうがない。

 さすがに製作はNHKで、おまけに大河ですから、台詞は間違いなく土佐弁なんです。が……、

「いんまの『おんし』のアクセントって、『恩師』に聞こえるがやけど(笑)」

「『違うぜよ』やのうて、『違うぜよ』やちゃ!(アクセントの違いを指摘)」

「そうちや、このアクセントなってないちや!」

 と、発音のほうがいけません。

「県外の人って、こんなんが土佐弁やって思うがやろうか?」

 シリアスなシーンでも、突っ込みの方が優先してしまい、

「ディレクターの人は、『ぜよ』つけたら何でも土佐弁になると思うちゅうがやないが?」

「ほんまに高知の人が方言指導をしちゅうがやろうか?」

「へたくそすぎ」

 ってな、按配で……。

 おかげで、作品が楽しめなくなってしまい、見るのをやめてしまったんです(実はここだけの話、終盤というか、最終回が近付くにつれ、やっぱり話の展開が気になって、ほんとは最終回の前の回とか、総集編とかを、ちらちら見てしまったんですけど 汗)。


 ところで、「龍馬伝」の終盤に出ていた青木崇高くん(後藤象二郎役)。なんと、役作りのために体重を徐々に増やし、最終的には15キロほど太ったそうなんですよ。確かに、大政奉還のシーンで見た青木くんの顔は、まるで別人のように膨らんでいましたよね。しかもあれが役作りだったなんて……。たった一年で15キロ増なんて、普通はそんなに簡単には太れません。しかも、元に戻すのが大変です。私は青木くんの役者魂みたいなものをひしひしと感じたんです。

 さらに、役者魂と言えば、高知県民として、TBSで放映されていたドラマ「仁」に坂本龍馬役で出演していた内野聖陽さんにもふれておきたいですね。この内野さん、龍馬役が決まってから、「より、龍馬に近づきたい。龍馬の育った高知を知りたい」と、ひと月ほど高知に滞在して、高知の空気を肌で感じたそうです。だからでしょうか。内野さんの演じる坂本龍馬は、高知県民もびっくりするくらいに、土佐弁が上手で(というか、むしろ完璧)、これまでの誰もが演じてこなかった坂本龍馬を演じていました。きっと、テレビの前で思わず唸ってしまった高知県民も多いはずです。

「うわっ、土佐弁うまっ!」

「そうながちや。土佐弁はこうでないといかん!」

 これまでに、数々の俳優さんが坂本龍馬を演じてこられましたが、これほど土佐弁を上手に喋られた方を、私は他に知りません。なので、内野さん演じる龍馬を見たとき、この役に懸ける内野さんの意気込みの凄さを感じずにはいられませんでした。

 で……福山さんに、話が戻るんですが……。 

 誰かの爪の垢を煎じて飲めとまではいいませんが、福山さんも役者のはしくれ。そして主役を張っている以上は、もうちょっと土佐弁を上手に喋って欲しかったと、そう、思うわけなんです。 

(福山さん、すみません。あなたが嫌いなわけではありません……ファンの皆様ごめんなさい 陳謝)。


 ただ、「こればあこきおろしちょいて、今さら福山さん弁護するがか?」と言われそうですが、大河の主役ってのは登場回数も多いですし、出演が決まってからは撮影前に取材やポスター撮影などなど、他の出演者よりはあきらかに忙しく、しかも長丁場ですから、体調管理も大変ですし、役作りに割く時間が他の出演者より少ないのも事実でしょう。だから、しょうがないって言うか、土佐弁がうまく喋れないのも当然っていう部分もあるんですよね。

 だって、土佐弁って、ほんとに難しいんです(私が言うのもなんですが……)。

 まず、県中部、東部と、県西部では、「これが同じ土佐弁か?」って言うぐらいにアクセント等が違っているんです。県内の地域によっても、ちょっとずつ言葉のニュアンスとか言い回しとかが違っていますし、それぞれの地域で特有の方言がたくさんあるんです。

 私は県東部の出身で、坂本龍馬とともに暗殺されてしまった中岡慎太郎が生まれた村で育ったのですが、ジョン万次郎の生まれた土佐清水市(旧中濱村)の方言は、細かく習わなければ上手く喋れません。

 具体的に言いますと、県中部の土佐弁だと、「~やっているから」という意味の言葉は「~しちゅうきに」とか「しちゅうちや」になるのですが、県西部だと「~しちゅうけん」「~しようけん」などとなります。「しているの?」という意味の「~しゆうが?」「しちゅうが?」は、県西部だと「~しよろうが?」「~しようが?」などとなります。他にも、アクセントなどはたくさん違いがあって、文章では説明できないのですが、まったく別の方言だと言ってもいいくらいです。私は永らく高知に暮らしておりますから、さすがに、多少なら県西部の方言(私たち東部の者は、西部の方言を「幡多弁」と言います)を真似するくらいはできるようになりました。しかし、真似は真似。あくまでも自己流。県西部の微妙な言い回しは、やはり西部の方にちゃんと習わなければ喋れないんです。

 ですから、高知が舞台の映画やドラマを見ていると、よけいに思うんですよ。

 これは土佐弁と違う……って。

 もちろん、俳優さんのアクセントの上手い下手もあります。しかし、それだけではありません。

 たとえば、ジョン万次郎と、坂本龍馬が同じアクセントで、同じ方言で喋っているのはおかしいんです。

 宿毛や幡多や、土佐清水が舞台なのに、登場人物が県中部のアクセントと言い回しで喋っているのはおかしいんです。

 なので、私は声を大にして言いたい!

 ドラマや映画に出てくる土佐弁を、本当の土佐弁だと思わないでほしい……と。

 主役の顔に惑わされないで! ……と。

 

  

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