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ゲームは下手だけど、世界一のチームを作りたい!!  作者: 龍崎
第1章 世界一のチームを作ろう

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第1話 人生を変えた夜

運営について全然です!

独自の考えで作り上げていくのでご都合主義などあると思いますが楽しい作品を作りますのでよろしくお願いします!

「社長、本日の予定は以上です」


朝比奈美月がタブレットを閉じると、静かになったオフィスに空調の音だけが残った。


午後七時。


SEIZE NEXT本社最上階の執務室からは、無数の光が広がる東京の夜景が見渡せる。創業から十年。社員三百人超、上場企業、安定した業績。世間から見れば、佐藤誠司は誰もが羨む成功者だった。


だが当の本人は、椅子にもたれながら小さく息を吐いた。


「ようやく終わったか」


「今日だけで会議八件でしたからね」


「昔じゃ考えられないな」


「会社が成長した証拠ですよ」


美月は自然な笑みを浮かべたが、誠司は苦笑するだけだった。


事業は順調だ。


新規案件も増えている。

投資先も利益を出している。

何一つ不満があるわけではない。


それでも最近は、どこか心が動かない。創業当時のように寝る間も惜しんで未来を語り、成功するかどうかも分からない挑戦に胸を躍らせていた頃と比べると、今の毎日はあまりにも安定しすぎていた。


「社長」


「ん?」


「またその顔してますよ」


誠司は眉をひそめる。


「どんな顔だ」


「退屈そうな顔です」


「失礼だな」


「事実ですから」


即答だった。


昔から美月には隠し事が通じない。


会社では秘書として誠司を支え、誰にも知られていないプライベートでは恋人でもある。創業前から十年以上一緒にいるのだから、少し表情を見れば考えていることくらい分かってしまう。


「そんなに分かりやすいか?」


「かなり分かりやすいです」


「経営者失格だな」


「私にだけですよ」


そう言って美月はスマートフォンを取り出した。そして何かを確認すると、思い出したように顔を上げる。


「そういえば、この後は予定ありますか?」


「特にないな」


「じゃあ付き合ってください」


「デートか?」


「半分正解です」


その答えに誠司が首を傾げると、美月は少し楽しそうな表情を浮かべた。


「eスポーツの世界大会があります」


「eスポーツ?」


「ゲームのプロ大会です」


誠司は聞いたことくらいはあったが、詳しくは知らない。学生時代にゲームで遊んだ経験はあるものの、それ以降は仕事一筋だったため、今のゲーム業界がどれほど大きなものになっているのか理解していなかった。


「ゲームの大会で世界大会なんて成立するのか?」


「その反応、みんな最初はするんですよ」


「そんなに凄いのか」


「実際に見れば分かります」


そこまで言われると少し興味が湧いた。


何より、美月が珍しくここまで勧めてくる。


「分かった。行ってみるか」


「ありがとうございます」


その笑顔は、どこか子供が好きなものを紹介する時のように楽しそうだった。


          ◇


二時間後。


会場へ到着した誠司は思わず足を止めた。


想像していた光景とあまりにも違ったからだ。


会場周辺には数え切れないほどの人が集まり、入場ゲートには長蛇の列ができている。若者だけではない。スーツ姿の会社員もいれば、親子連れや女性ファンの姿もある。海外から来たと思われる観客まで見え、周囲ではさまざまな言語が飛び交っていた。


巨大スクリーンには選手紹介映像が流れ、応援グッズを身につけたファンたちが歓声を上げている。


誠司はしばらく言葉を失った。


「正直、ここまでとは思わなかった」


「驚きました?」


「ああ。ゲーム大会ってもっと小さいものだと思ってた」


「私も最初は同じ反応でした」


二人が席へ着くと、会場の照明がゆっくり落ち始める。


それまで賑やかだった空間が一瞬だけ静まり返った。


そして次の瞬間。


選手入場。

派手な演出。

実況のコール。

観客の大歓声。


会場全体を揺らすような熱狂が一気に押し寄せた。


ステージへ現れた選手たちは、まるでプロ野球やサッカーのスター選手のような歓声を浴びている。その光景だけでも十分に圧倒されるものがあった。


試合が始まってからも誠司の驚きは続いた。


ルールはよく分からない。

専門用語も理解できない。

画面の展開は速すぎて追い切れない。

それでも気付けば前のめりになっていた。

選手同士の連携。


一瞬で変化する戦況。


勝負を決める判断力。


そして何より、画面の向こうにいる選手たち全員が本気だった。


遊びではない。

趣味でもない。

人生を懸けて戦っている。


その真剣さだけは、ゲームを知らない誠司にも痛いほど伝わってきた。


決勝戦が始まる頃には、誠司も完全に試合へ引き込まれていた。


日本代表は世界王者相手に互角以上の戦いを見せる。


何度も会場が沸く。

何度も逆転する。

何度も希望を見せる。

だが最後の最後で力尽きた。


勝利した海外チームが歓喜し、日本代表はうつむく。


会場からは大きな拍手が送られていたが、モニターに映る選手たちの表情からは悔しさが隠し切れていなかった。


あと少しだった。

だからこそ悔しい。

その感情が会場全体へ静かに広がっていく。


試合終了後、実況者がマイクを握った。


「今年も日本は世界の頂点へ届きませんでした」


歓声に包まれていた会場が静まり返る。


誰もがその結果を受け止めていた。


「ですが、日本に才能がないわけではありません」


大型モニターには敗れた選手たちの姿が映し出される。


「足りないのは環境です」


その言葉に誠司は思わず顔を上げた。


実況は続ける。

海外には育成施設がある。

分析チームがある。

専門コーチがいる。

選手を支えるスタッフがいる。


世界で戦うための仕組みがある。


「日本にも才能はいます」


「環境さえ整えば世界と戦えるはずです」


その言葉は不思議なほど強く誠司の胸に残った。


才能はいる。

環境がない。

たったそれだけの話なのに、なぜか頭から離れなかった。


          ◇


帰り道。


夜風を受けながら歩いていた誠司は、しばらく考え込んだ後で静かに口を開いた。


「美月」


「はい」


「世界一のチームを作るにはいくら必要なんだ?」


美月は思わず足を止めた。


「……はい?」


「施設、人材、選手、コーチ、運営。全部込みだ」


数秒の沈黙が流れる。

そして美月はゆっくり額を押さえた。

嫌な予感しかしなかった。


なぜなら誠司がこういう顔をしている時は、いつも人生を変える決断をする時だからだ。


創業の時もそうだった。


事業拡大の時もそうだった。

上場を決めた時もそうだった。

誠司は夜空を見上げながら静かに言う。


「才能がいるなら集めればいい」


その声には迷いがなかった。


「環境がないなら作ればいい」


胸の奥が熱くなっていた。


会社を立ち上げた時以来かもしれない。

無理だと言われる挑戦。

誰も成功していない目標。

そういう話を聞くだけで心が動いてしまう。


誠司は真っ直ぐ前を見据えた。


「俺が世界一のチームを作る」


その宣言を聞いた美月は大きくため息を吐いた。


だが呆れているわけではない。

むしろ少しだけ笑っていた。

結局、自分もそんな誠司が好きなのだ。

誰もやらないことへ挑戦し、無謀だと言われるほど燃える姿が。


「分かりました」


「ん?」


「その計画、私も付き合います」


誠司は笑った。


十年前、何もなかった頃と同じように。

未来だけを見ていた頃と同じように。

こうして、日本のeスポーツ界を大きく変える挑戦が始まる。

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