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1-6,きさらぎ駅

中学生が書いた文章なので、至らないところも多くありますが、私の書ける限り最も面白い作品に仕上げたつもりです!

是非この話だけでも読んでください!

 探偵事務所へと向かう電車の中、スカートのポケットに入れていた私のスマートフォンがプルプルと振動した。慌てて取り出してその画面を見ると、それは白魅さんからの電話だった。急いで車両の連結部分に移動すると、通話ボタンを押した。


「白魅さん、どうしたんですか?」

「急にごめんね〜。急遽緊急の依頼が入っちゃってね〜。悪いけど、今日は来なくていいよ〜。今回の依頼は私だけでやるから〜」

「えっ?でも、私達は毎日来るようにって昨日..」


 電話先からはガタンゴトンと音がしている。どうやら白魅さんも電車に乗っているようだ。私があたふたしていると、横に立っていた零空ちゃんが私のスマートフォンを覗き込んできた。


「それ、どんな依頼なの?私が足手纏いになるほどなんでしょ。」


 たしかに、昨日の依頼は白魅さん一人でもこなせたはずだけど、私達に経験を積ませるために、足手まといになる私達を依頼に連れて行ってくれた。なのに今日は来ないでいいというのだから、今回の依頼はそれだけ難しいということなのだろうか。


「え〜とね、きさらぎ駅って知ってる?」

「知ってる、知ってます!」


 都市伝説にあまり詳しくない私でも知っている、有名な異界駅だ。電車の中で寝ていたら、その電車がきさらぎ駅という存在しないはずの駅について、帰れなくなる...みたいな話だったと思う。たぶん。


「知ってるなら話は早いね〜。そのきさらぎ駅が発生してるであろう路線で、ここ1週間だけでもう100人近くの人が消えてるの。1週間だけでそれだから、実際に取り込んだ人数はもっと多いかもね〜」


 昨日のあんなに強かった貞子さんは、20人を取り込んだ怪異だった。単純計算でそれの5倍以上の強さ。たしかに、私がいてもなにかできるとは思えない。


「しかも、きさらぎ駅みたいな場所系の怪異は、誰かを守るっていうのが難しいの。急に君たちだけがワープさせられるとか、そういうのがあり得るからね〜」


 その説明が気に入らないのか、零空は声を大きくして反論する。


「そんな理由?私は自分の身も守れないほど弱くない。だから───」

「じゃ、そういうことだから〜。今日は来ないでね〜」


 まだなにか言いたそうな零空ちゃんを無視して、白魅さんは電話を切ってしまった。


「あ〜、ムカつく。メルナ、行くよ。」

「行くって..どこに?」

「決まってるでしょ、きさらぎ駅。この近くで失踪事故が多発してる路線なんて、これしかないでしょ。」


 そう言いながら、零空ちゃんはそれらしき事件のネットニュースを表示したスマートフォンを私に見せた。




***

「まもなく────駅に到着します。」


 その異様なまでに簡潔なアナウンスを合図に、白魅は目を覚ました。駅名だけは何故か聞き取れないところも、この怪異の特徴なのだろうか。


 真っ暗闇を進む電車の中には白魅の他に5人ほど乗客がいたが、白魅以外は全員深く眠りについていた。強めに肩を揺さぶってみたが、起きる気配はない。この人達が一般市民なのか怪異の一部なのかすら、知る術はなかった。


 そこから1分も経たずに、電車は駅に停車した。

 少し警戒しながら駅のホームに出ると、そこは田舎の無人駅のようだった。夕方に電車に乗ってからそこまで時間は経っていないはずなのだが、もう辺りは深夜のように真っ暗だ。


 駅名が書いてある看板を確認すると、そこにはかすれた文字で「きさらぎ」と書いていた。

 寝ている間にきさらぎ駅にたどり着きやすいように能力で誘導していたからか、あっけないほど簡単に入り込むことができた。あとは、この怪異、きさらぎ駅を退治するだけだ。


 場所系の怪異にも、大抵は核となるようなものが存在する。それを破壊すればこの空間ごと消滅し、退治完了だ。核の付近は大抵魔力が濃くなるから、よほど巧妙なカモフラージュがなければ、見つけるのにそこまで手こずることはない。しかし、核に近づくほどその怪異の影響力は強くなり、当然危険度は増していく。


 冷たい夜風が白魅の髪を揺らす。駅のホームにはベンチが一つあるだけで、時刻表すら見当たらない。駅の外には人の痕跡のない山々が広がっていて、獣道さえないように見えた。


スマートフォンを開くと、意外なことに電波は通っていた。しかし適当な誰かに電話をかけてみると、その相手は電話中だと表示され、繋がることはなかった。やはり名ばかりの電波だ。他の連絡方法を試みても、同じような結果になるだけだろう。


 何のアナウンスもなく唐突に電車のドアが閉まり、電車は動き始めた。そして、トンネルの中へと消えてしまった。

そのトンネルの向こうからは、微かだが他より強い魔力が感じられた。きさらぎ駅の心臓は、きっとその先にあるのだろう。


(ホームから出て駅の周りを探索しても、何かあるのは期待できないかな〜。なら、トンネルまで最短で行こう。)


 今さら線路の上を歩くことに対する抵抗なんてない。大胆に線路の上に飛び降りると、トンネルの方向へと歩みを進めた。



 歩き始めて5分くらい経っただろうか。トンネルの目の前にたどり着いたとき、不意に白魅の背後から老いた男性のような声が聞こえてきた。


「危ないから…線路の上を歩いてはいけないよ…」


 その老人には、片足がなかった。

 彼は人間ではない。数年の怪異狩りの経験による直感が、そう告げている。


 白魅はすぐに振り向き、咄嗟に作り出した銃をその老人に向けて発砲した。その弾丸は老人に直撃───したように見えたが、実際には弾丸は老人の体をすり抜けた。


 白魅は素早く後方へと下がるが、老人はそれ以上何をするでもなく、空気に溶けるように消えていった。


(今のは…)


 その時、トンネルの奥の方に気配を感じた。人のようなシルエットの集団が、こちらに向けて迫って来ていたのだ。

 よく見ると、それが人でないこと───少なくとも、生きた人でないことは明らかだった。

 その全員が全員、体の一部が欠損していて、目は虚ろだった。その見た目だけで例えるならば、ゾンビに近いだろうか。


 白魅はその化物達に銃口を向けると、躊躇わず引き金を引いた。弾丸は化物達に着弾する直前で轟音と共に激しい炎を放ち、化物達を燃やし尽くした。


(100人以上人を食った怪異にしては、あまりにも弱すぎだよね〜。ここ、そんなに核から遠いのかな〜)


 この調子なら、あと数十キロは歩かないといけないかもしれない。いつ何に襲われるかわからない緊張状態で長時間歩き続けるのは、正直かなり堪える。

 歩くのが少なく済みますようにと願いながら、白魅はトンネルの中へと入っていった。


 トンネルに取り付けられた蛍光灯が不気味な低音を響かせて点滅している。その音はそこまで大きいわけでは無いが耳障りで、小さなトンネルの中を反響している。長袖を着ているというのに、少し肌寒い。


 何度かゾンビのような化け物に襲われながらも歩き続けていると、トンネルの奥に出口のようなものが見えた。白魅はまだ5kmくらいしか歩いていないはずだ。魔力は駅の時と比べれば強くなったが、まだ核付近という気はしない。


 トンネルの外に出ると、その目と鼻の先に一つの駅があった。最初に来たきさらぎ駅と同じ様な雰囲気の無人駅だが、戻ってきたというわけではなさそうだ。その証拠に、駅名を示す看板には「かたす」と書いてあった。


 白魅は違和感に気がついた。この辺りでこの駅よりも魔力が濃い場所がない。だが、ここも心臓部だと言うには魔力が薄すぎる。とりあえず白魅は、この駅の中で最も魔力が濃い場所を探し始めた。


 そして行き着いたのは、駅の入口の前にある公衆電話だった。見たところ特別な魔具といった感じではない。

 核が分かりづらい物の形に擬態していることはあるが、これは絶対に核ではないと断言できた。核にしては魔力が薄すぎるというのが3割、直感が7割なのだが。


 公衆電話を詳しく調べようと顔を近づけた途端に、遠くから太鼓と風鈴のような音が聞こえてきた。

 

 顔を上げ周囲を見渡すと、無数の化物が駅を取り囲んでいた。100や200なんて数じゃない、全員集まれば小さな国でも作れてしまいそうなほどの数だ。足がなく腕一本で這いずる男、首がない女、いつ見ても不気味だ。一体一体がトンネルで戦ったものよりも数段強いだろうと肌で感じる。


(あ〜、なるほどね。見事に誘われちゃったってわけだ。)


 白魅は小さく舌打ちした。化物達は少しずつ白魅へと近づいてくる。その包囲が狭まるのを待たずに、白魅は群れへと突っ込んだ。


 誰が反応するより早く、一体の化物の脳天を撃ち抜く。その横の化物が腕を振り下ろしてくるが、左手でそれを受け止め、腹を蹴り飛ばす。


 ぞろぞろと集まってくる化物達の頭上へと飛び上がると、白魅は手を空に向けた。


 すると、一瞬にして空模様が変わった。白魅の手を中央とするように暗雲が立ち込め、稲妻が走った。数百の雷が数多の化物の体を貫き、消滅させていく。


 しかし化物達の数はあまりにも多く、まるで減っているように感じない。


(ちょっと数が多いね〜。私の魔力が尽きる前に倒しきれるか、怪しいかな〜。)


 魔力のない白魅なんて、この怪異にとっては一般人同然だろう。もしこの化物たちを倒し切る前に魔力が尽きればどうなるか、想像するのは難しくない。


 化物の内何体かが、こちらに向けて粘液のようなものを飛ばしてきた。そこまでの威力も速度もなく、一発防ぐだけなら大したことはないが、数万体の化物全員を倒し切るまでこれが続くのならば、すべてを防ぎ切るのは難しいかもしれない。


 白魅の額から冷や汗が垂れる。


 その時、目の前の公衆電話が、ピロピロと音を立てて震え始めた。

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