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1‐4,湯煙の中へ

中学生の書いた小説ですので、少し変な部分などあるかもしれません。ですが、精一杯の想像力と文章力を使って、私のできる限り最も面白い小説を書いたつもりです。ぜひこの一話だけでも読んでいただけると幸いです。

 ガタンゴトンと電車の中で数十分揺られ、たどり着いたのは見たこともないような無人駅だった。少し暗くなってきたからかとても不気味に感じて、この駅自体がどこかの異界駅かのようにも感じられた。


「…意外と駅から近いね、怪異。」


 ここに来るまで一言も発さなかった零空ちゃんがそう呟いた。今日の学校での言動から察するに、零空ちゃんは少なくとも数回怪異を狩ったことがあるようだ。私には不気味で少し空気が重いくらいにしか感じないのだが、零空ちゃんは怪異の気配を感じているのだろう。


 ホームの出口に置かれたアナログの切符入れに切符を入れると、私達は駅の外に出た。そこには一応舗装された道路が通っていたが、当然人影はない。


 3つの足音を響かせながらしばらく歩いていると、突然白魅さんが「おっ」と声を出した。


「見えたね〜、廃村」


 進行方向の先の方に目をやると、遠方に何か煙のようなものといくつかの古い家々が見えた。これが今回の目的地の廃村だろう。


 電車に乗っている間に軽く調べてみたところ、この廃村は「明凪村」という名前で、15年ほど前に廃村になってしまったらしい。全盛期には1000人近い村民が暮らしていたそうだが、大規模な噴火による火山ガスによって土壌が悪化してしまい、そこから人口は減少の一途を辿ったという。


──その瞬間、強烈な寒気を感じた。私がのっぺらぼうに襲われた時に感じたものと同じ寒気。でも、その時よりもずっと強い。


「助手1号くん、大丈夫?足震えてるよ〜?」

「は、はい…。大丈夫ですけど、すごく怖いです…。ものすごい寒気が……」

「まあ、あの時ののっぺらぼうとは比べ物にならない強さだからね〜。20人食った怪異なんて、そうそうお目にかかれるものじゃないし〜」


 そう言いながらも、白魅さんは余裕そうだった。それとは対照的に、零空ちゃんはずっと真剣な顔をしている。


「そういえば、怪異って食べた人数が多いほど強いんですか?」


 私はふと浮かんだ疑問を白魅さんに投げかける。


「あたりまえ。食うってことは、魂を取り込んでるんだから。」


「う〜ん、例えば、世界中のみんなが急にトイレの花子さんの事を忘れたり、怖いと思わなくなったりしたら、トイレの花子さんの怪異は消えちゃうんだよね〜。」


 「そんな極端な例はありえないけど〜」と付け加えながら、白魅さんは話を続ける。


「急に消えるってことはなくても、不安定であることは確かだからね〜。世界中の人間の様子によって強さが変わってたら、まともに戦えないし」 


「な、なるほど……」


「だから怪異は不変の"死人の魂"を取り込むの。ある怪異に殺された魂はもちろんその怪異に恐怖して死んでいくから、その魂を取り込めば安定して自分を強くすることができるよね〜」


「だから私を襲ったのっぺらぼうも、すぐに私を殺さずに顔を見せたり長い間追いかけたりしてたんですか…?」


「大当たり〜!怪異は自分に対して恐怖した魂を取り込まないといけないから、人をすぐに殺さずに、姿を見せたりして恐怖を煽ってから殺すことが多いんだ〜。そのおかげで怪異狩りは楽なんだけどね〜」


「…着いた。もう無駄話は辞めたら?」


 零空ちゃんの言葉でふと前を見ると、そこには古びた門のようなものがあった。

 「明凪村へようこそ!」と書いてある看板は酷くかすれていて、事前に村の名前を知っていなければ読めなかっただろう。


 その不気味な雰囲気に私が入るのを躊躇っている間に、2人はもう門をくぐっていた。零空ちゃんは私の事を気にも留めず、ズカズカと歩みを進める。


 こんな場所に一人で置いていかれたら、この廃村に入るのよりもずっと怖い。私は目を閉じて耳を塞ぎながら、恐る恐る門をくぐった。


 その先に待ち構えていたのは、かつてこの町の観光客を一点に集めていたであろう温泉街の跡地だった。


 一目で温泉街だと分かったのは、この辺り一帯から湯気が噴き出していたからだ。

 乱暴に掘り出されたように思える温泉には数十年間人の手は行き届いておらず、無作為に溢れ出る湯気は霧のように辺りを覆っている。


 その光景を呆然と眺めていると、突然零空ちゃんが前方へと走り出した。零空ちゃんの足はあまりにも早く、湯気の向こうへと消えていく。


「れ、零空ちゃん!?」


「やっぱりあの子も出来るんだね〜、魔力探知。さ、助手1号くんも早く行くよ〜」


 私が驚いていると、白魅さんが私の手を引いて零空ちゃんが走って行った方へと走り始めた。


 霧で視界が悪い中、驚異的な速度で白魅さんは走り続ける。どんどん前に引っ張られる手に翻弄されながら、私は必死に両足を動かす。


 その時、白い湯気の奥の方にいくつかの黒い何かが見えた。それはまるで形のない影だけの存在のようだった。そして、その中に突っ込んでいく零空ちゃんの姿が。零空ちゃんはどこからか取り出したであろう刀を持っていた。


「白魅さん、あの影みたいなのは…?」

「人を一人も食ってない怪異、って言えばいいかな〜。まだ個体としての像が定まってなくて、黒い影とかぐちゃぐちゃした塊みたいに見えるんだよね〜。弱い怪異は強い怪異の元に集まるものだから、ここにいるみたいだね〜」


 白魅さんの解説の中、零空ちゃんは黒い影に向かって刀を振り回していた。私は剣術については何もわからないが、それでもその剣技が研ぎ澄まされていることはわかった。

 黒い影の攻撃を刀で軽く受け止め、身を引きながら深く斬りつける。怪異にも痛覚はあるのか、微かに怯んだ黒い影に急速接近し、その体を貫いた。


 その動きに魅了されている内に、戦いは終わってしまった。10体近くいたはずの黒い影は、20秒もしないうちに全滅したのだ。


「何ぼーっと突っ立ってんの?私は先行くから。」


 そう言うと、零空ちゃんは刀の刃をむき出しにしたまま、湯気の奥へと進んでいった。

まるで、自分がどこに行くべきかわかっているかのように。


 ふと、白魅さんの「やっぱりあの子も出来るんだね〜、魔力探知。」という言葉を思い出す。


「白魅さん、魔力探知ってなんですか?」


「え〜とね、魔力の濃い場所とか物・人とかの位置が遠隔でわかる技術のことだね〜。」


「それを使えば、怪異の場所が簡単にわかる…ってことですか?」


「ん〜、おおまかな場所であればそうだね〜。でも、魔力の強い怪異がずっと同じ場所にとどまっていると、その辺り一帯に魔力の残影が残って逆に見つけづらくなるんだよね〜。それでも、あの廃旅館に目的の怪異がいるってことくらいはわかるけどね〜」


 そう言って白魅さんが指さしたのは、いつの間にか目の前にあった大きな廃旅館だった。それは辺りの古びた建物の中でも特別古びていて、今にも崩れてしまいそうだった。

 そして、その廃旅館の中に入っていく零空ちゃんの姿が見えた。


「あそこに20人を取り込んだ怪異が…?」


 たしかに、今私は街の入口にいたときよりも強い寒気を感じている。それは、怪異の住まう廃旅館に近づいているからなのだろうか。


「さ、助手1号くんも早く入って〜」


 そう言うと白魅さんは私の手を離して私の後ろに下がると、廃旅館の入口を指さした。


「あれ?一緒に行くわけじゃないんですか?」


「ごめんね〜、私はちょっと調べたいことがあって。」


「な、なんで私と零空ちゃんだけでこの怪異を…?って、そもそもこれは白魅さんに来た依頼じゃないですか!」


「まあまあ、自分で怪異と戦う力をつける良い機会だと思って〜」


「そもそも私、怪異と戦うつもりじゃなかったんですけど!?」


「怪異討伐を生業としている探偵の助手になったんだから、そのくらいは覚悟しておいてほしかったな〜。ほら、武器でもあげるからさ〜」


 そう言うと白魅さんは肩にかけていたバッグからナイフを取り出した。それは普通の包丁とほぼ同じくらいのサイズで、研いだばかりのように銀色に輝いていた。


「それ、なんですか?」


「いまから君が持つ武器だよ〜。銀のナイフは魔祓いの効果があるとか、聞いたことない〜?これはちょっと特殊な魔具で、常に研ぎ澄まされた状態になってるんだよね〜」


 そう言うと、白魅さんは銀のナイフを私に渡した。


「切れ味も普通のナイフより遥かにいいから、ある程度は怪異とも戦えると思うよ〜」


「ちょ、ちょっと待ってください!そもそも私、怪異と戦えるほど強くないですし…」


「そんなことはないよ。助手一号くんは、さっきの黒い影程度なら簡単に倒せるくらいには強いと思うよ。」


 白魅さんの口調がやや真剣なものへと変わる。嘘をついているわけではなさそうだった。急な雰囲気の変わりように私が言葉を返せずにいると、白魅さんが急に背を向けて歩き出した。


「じゃ、そういうことで〜。あとは頑張ってね〜」


「ま、待ってください!せめて中までついてきて──」


 気がつくと、白魅さんは目の前から消えていた。高速で湯気の中へと走っていったのか、何かの力で瞬間移動したのかもわからない。


 一人ぼっち。ここに来たときに一番恐れていたことが起きてしまった。こんなところに一人ぼっちなんて、あまりにも怖すぎる。


 零空ちゃんと合流するには、あの廃旅館の中に自分から飛び込んでいくしかない。零空ちゃんがまだあまり奥に進んでいないことを祈って。


 私は白魅さんがくれた銀のナイフを握りしめる。そして、廃旅館の中へと足を踏み入れた。


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