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第一章「灯火」プロローグ おぼろげな夢
俺は時々、こんな夢をみる。それは赤色で、
どこか切なくて、何かを求めている淡い光。
それに呼応するように、勝手に自分の手が
伸びる。
でもいつも触れる瞬間に目が覚めてしまう。
そんなもどかしい夢、いや幻?なのか。
熱い。そろそろ起きなければ。
…なぜ? なぜ起きなければならない?
もう、疲れたんだろう?ならその体さー
僕に、頂戴?
バッ
「…びっっくりしたぁ…。」
…自分の部屋、いつもの光景だ。安心する。
?なぜ安心したのだろう?
「そんなことよりも…よしっ、目覚ましよりも早く起きれたな。今日は良い一日になりそうだ。」
目覚ましという自分が自分に課した
「この時間に起きなければならない」
という縛りを上回ることは、どうしてこんなに清々しいのだろう。
気分的には、以前の50m走のタイムを更新したときに似ている。
だがそんな清々しい時間も束の間。
「あっちい…」
暑い、ただひたすらに暑い
せっかくの爽快感がぶっ壊された。
「太陽さんちょっと頑張りすぎじゃないすかねえ」
と届くはずもない文句を垂れ流しなら、俺は家族の待つリビングへと歩き出した。