避けられる
噂を聞いて黒田さんに話を聞きたいが、明らか避けられるようになった。
あんなに親しみやすくて楽しい人だったのに…
課長や係長とは話すが、志保は避けられる。
他の人と話してるのを聞くと、結婚式は取りやめになり、出していた招待客にまたお断りの詫び状を書いてるらしい。
皆「女は彼女1人じゃないさ!良い女、見つけようぜ!」とか気休めを言う。
適当に合わせて笑ってるが、明らか元気は無い。
日に日に目が虚ろになっていった。
嫌な予感がする。
黒田さんの性格から切替えは絶対難しい気がする。
刑事課は理屈とか人間以外には突き詰めるタイプ多いが、
意外に人間にはあまり拘らない人が多い。
人は人、自分は自分ってタイプ。
他の部署より結束力よりスタンドプレーが際立つ。
が、黒田さんは違う気がする…
西成から別世界な目白でかなり立派な家を父は買った。家族で家探しに上京した記憶はない。
ある日、突然引っ越すと言われトラックと車が来たのだ。
スゴく遠くてビックリしたのは覚えてる。
綺麗なお家で志保の部屋まで用意されてた。
西成では幼稚園に行ってなかったが、目白では年長さんで突然幼稚園生活が始まった。
品の良い同級生ばかりで、まず言葉がテレビの人と皆同じで驚いた。
ガラの悪い人なんか誰もいない。怒鳴るおじさんも
おばさんもいない。
志保の言葉を聞くと皆一様に驚く。萎縮して話さなくなってしまった。
次、話しだした時には標準語の子供に変身していた。
父母も早かったが、志保も早かった。
そして生まれた妹は、きっとそんな過去は何一つ知らないんだろう、今も。
断片的にしか覚えてないが、おっちゃんは早めに戻ってきたらしい。
結局お姉さんはおっちゃんの子を産んだらしい。
が、それからすぐにおっちゃんは返り討ちに遭い亡くなったと。
しかし、その話を誰から聞いたのか?
全く分からないのだ。
ただ、もう会う事を諦めるしかなかった。
だから、原宿でおっちゃんソックリな夫に会えた時
それも店員さんのミスで話すキッカケが出来た時、嬉しかった。
それも夫は関西人だった。河内の出身だった。
普段は優しい大人しい人だが、ファミレスなどでヤンキーが店員さんを困らせたりしてたら、わざと関西弁で「うるさいなあ〜飯がまずなるわ!」とか言うだけで
関東のヤンキーは黙る。
煽り運転が前に割り込んできて「降りてこい!」とか怒鳴りながらコッチへ来ても、夫が「なんやあ?」と
窓を開けたら、「何でも無いです。」とスゴスゴ帰る。
おっちゃん似の顔は、やはり無敵である。