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組長の土下座

両親は知らないだろうが、まさか5歳で本物の組長、若頭…など組員が黒服黒ネクタイでおっちゃんに土下座するのを見せられるとは…

映画を後年見て、あ〜コレだったと知る。

黒ベンツが次々と長屋に集まってきた。

何事かと近所の人達も遠巻きに見守っている。

志保はおっちゃんの膝から降りて帰ろうとしたが、

なぜかおっちゃんは引き戻す。

舎弟と奥さんが必死で帰そうとするのに、おっちゃんはガン無視してた。

襖を開けて12畳ほどに広がった部屋でおっちゃんが上座に座ってる前に組長を先頭に皆が並ぶ。

おっちゃんは特にいつもの格好で面倒臭そうだ。

あぐらの上の志保をなでなでしながら座っている。

「………お願いしたい。どうか…」と言いながら組長はあぐらから正座に座り直す。後ろで号令がかかると組員が組長と一緒に一斉に「お願いします!」とおっちゃんに頭を下げた。

志保は訳が分からずおっちゃんと組長を交互に見る。

「ワシなあ〜この子が可愛いねん。大事やねん。

仕事したら、この子に会えんようなる。イヤやねん。」

おっちゃんは鼻でもほじりそうなくらいやる気が無い。

組長が脇に控えてる舎弟と奥さんの方を一瞥した。

多分すごい顔でにらまれたんだろう。2人の顔が真っ青だ。

後年、これが「組織犯罪」だと認識した。

会社と同じなのだ。

ヤクザは悪の会社組織なのだ。

映像だけは頭にキッチリ入っていた。

今だに部屋の様子を描けと言われたら描けるくらい覚えてる。

結局しぶしぶおっちゃんは仕事を引き受けた。

だが、組長は志保が気になるらしく「お父さんとお母さんはどの人?」と聞いてきた。

志保は何も考えずに遠くで関係ないと言う顔で見てる母を指さした。

父は…その場すら居なかった。家で仕事してるはずだが。


それっきりおっちゃんは消えた。

長屋に居る気配がない。

ヒットマンの仕事は全然分からないが、おっちゃんが消えてから仕事したという連絡まで10日間くらいラグがあった気がする。

そして、ご近所さんの噂話からおっちゃんがしくじったと聞いた。殺しをしくじったこと無いヒットマンだったらしいが、今回は殺せなかったらしい。

そのせいで半年すると戻って来れると話しを聞いた。

優秀な弁護士を雇ってるとか組長が仕事頼む時に言ってた。

彼等が働いているのだろう。

半年が長いのか短いのか分からない志保は毎日のようにおっちゃんの家に聞きに行く。

その時だ!

舎弟のお兄さんが聞いたこと無いようなドスの効いた声で志保に「2度と来んな!殺すぞ!」と言った。

おっちゃんとは違う。

これが組織のヤクザなんだと理解した。

志保は、漠然と「私が闘う相手」だと認識した。

そこから、なぜか志保が荒れだした。

西成の子供は荒い。志保は負けっぱなしだった。

なのに、急に無敵になった。

「助けて!やめて!」と相手に悲鳴上げさすのが快感になっていった。

年長のイケズなお姉ちゃんを押し倒した瞬間、腕が溝にハマった。

志保の意識は、もうその腕を逆に折るため体重をどんどんお姉ちゃんに馬乗りになってバウンドする。

ボキッ!と鈍い音がした。

母が頭を下げていた。

さすがにもう子供のケンカではないと地域の人も思い出したようだ。

志保はおっちゃんが帰ってくるまで、自分がおっちゃんの代わりに成りたかった。

突然、引っ越すことになった。

父は大手電機メーカーに再就職し、東京に引越すことになった。目白、学習院の近くに一軒家まで買って。

妹も生まれて普通の家庭に変化していった。

まるで昔からハイソの家です。

みたいに父母は変身した。制服の幼稚園に入れられ字を習いご挨拶も学ぶ。

教育熱心な地域で志保も自然と変化していった。

でもなぜかおっちゃんが亡くなった話だけは入ってきた。

誰が言ってたのか思い出せないが…

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